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経営組織論と『経営の技法』#43

CHAPTER 2.2.4:分業のデメリット・序。
 分業は良いことばかりではありません。もちろん、そのメリットが大きいためにさまざまな形で社会や企業組織の中では分業が行われていますが、分業によるデメリットも存在します。分業のデメリットは、大きくは2つあります。1つは、分業を進めることによるモティベーションの低下、もう1つは、調整の難しさです。このうち、分業によってモティベーションが減退してしまう理由には3つあります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』34頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018.2.1)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村・久保利・芦原/中央経済社 2019.2.1)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 法律も、社会のトラブルをコントロールするツールですから、何かあったときは、Aという方法で処理する、という形であるべき姿を示しています。けれども、多くのルールには、原則ルールと例外ルールがあります。それは、多くの場面で、どちらかが絶対的に正しい、と言い切れないからです。
 経営組織論も、組織の好ましい姿を考えるツールですが、複数選択肢があるときに、そのいずれかが絶対的に正しい、ということは考えられません。絶対的な解答を探すのではなく、適切な組織を作り上げるために必要な判断材料や視野を身に付けるのが目的です。
 そうすると、分業制度が正しいか間違えているか、ではなく、どのような時に、どのように分業制度を使うのかを考えるために、必要な視点を身に付けることが大事であって、そのために、メリットとデメリットを検討するべきなのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 株主の立場から、投資対象である経営者を見た場合、一方で、一貫しない無責任な経営者では困りますが、他方で、ただ頑固なだけで柔軟性がない経営者も困ります。
 「ブレない」という言葉が一時期流行しましたが、「ブレない」というのはただ頑固なだけ、という意味ではなく、判断の軸がしっかり定まっているということであって、柔軟性も併せ持っていなければなりません。そのような判断軸をしっかりと持ち、譲らないところと柔軟に変化するところを上手に使いこなせるようになるためにも、物事の両面を見抜いて使い分けられる眼力と判断力が必要です。
 そのような判断力が、経営者の1つの資質と言えるでしょう。

3.おわりに
 メリットとデメリットがある、ということが大事なのではなく、具体的に何がメリットやデメリットなのか、その内容や影響、背景事情や根拠などを知り、使いこなせるようになることが大事です。
 その観点から、分業制度のデメリットを分析しましょう。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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