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松下幸之助と『経営の技法』#292

12/3 自分だけの道がある

~自分だけしか歩めないこの道を、心を定め、懸命に歩んでいきたい。~

 自分には自分に与えられた道がある。天与の尊い道がある。どんな道かは知らないが、他の人には歩めない。自分だけしか歩めない、二度と歩めぬかけがえのないこの道。広いときもある。狭いときもある。のぼりもあればくだりもある。坦々とした時もあれば、かきわけかきわけ汗する時もある。
 この道がはたしてよいのか悪いのか、思案に余る時もあろう。慰めを求めたくなる時もあろう。しかし、しょせんはこの道しかないのではないか。
 諦めろというのではない。いま立っているこの道、いま歩んでいるこの道、ともかくもこの道を休まず歩むことである。自分だけしか歩めない大事な道ではないか。自分だけに与えられているかけがえのないこの道ではないか。
 他人の道に心を奪われ、思案にくれて立ちすくんでいても、道は少しもひらけない。道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。
 それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 会社経営の問題として見れば、経営として軸がブレないことの重要性を説いていることになるでしょう。特に、従業員がこのように会社の進む道に疑問を持ったり、立ちすくんだりすることがあるでしょうが、その場合こそ、経営が迷わず、ブレずに歩み続けなければなりません。
 経営者は、自分自身の迷いだけでなく、従業員の迷いに対しても方向性を示すために、ブレずに歩み続ける必要があります。経営者が、精神的にもタフでなければならない理由の1つです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、投資対象となる経営者の資質として、上記のようにブレない信念や自信が必要ということが理解できます。
 けれども、例えば数多くの長寿企業の経営を分析研究した「老舗学」では、創業100年を超える長寿企業に共通する経営の特徴として、異口同音に、コアを大事にすることと、時代に合わせた柔軟性が指摘されます。
 ブレない、という言葉は前者を連想してしまいますが、後者も含めた意味で「ブレない」ことが重要です。別の言い方をすると、突然「時代に合わせる」「柔軟になる」と言い出すこと自体が「ブレている」ことになりがちですが、そうではなく、普段から社会の変化にアンテナを張りつつ、自分たちの信念を実現するために着実に歩み続ける、その過程で少しずつ社会への適応も行われるために、中長期的には柔軟に変化もしている、ということが、ブレないことと柔軟性を両立させることなのでしょう。
 このような資質が、経営者を選び、投資する際の、1つの判断基準となるのです。

3.おわりに
 個人の場合も、会社経営の場合も、逆に、諦めが肝心な場合もありますが、ここでは安易に諦めることを窘めていますので、諦めるべき場合について言及がないのも止むを得ないところです。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。

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