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松下幸之助と『経営の技法』#42

3/28の金言
 当たり前のことを当たり前に、ほどほどに行うのが、最も健全な姿である。

3/28の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 栄養失調も栄養過多もダメなように、ほどほどに、当たり前のことを当たり前に行うことが、自然の理にかなった、最も健全で健康な姿である。
 自然の理やほどほどは、一見曖昧だが、これを極めるのが、本当の学問、人間の生きた学問である。化学が進んで、かえって人間の不幸が増え、知識が進んで、かえって悪事が増えるのは、生きた学問への謙虚さが足りないからだ。
 会社の発展についても、自社の発展だけを考えて、周囲の赴くところを忘れたら、お互いの足元が崩れる。そこには、自然の理、中庸、ほどほど、など、謙虚にそして楽々と進む道がある。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでは、化学や知識がダイレクトに影響する商品やサービス自体の問題(言わば、「過ぎたるは及ばざるがごとし」)と、会社の発展に関わる経営の問題(言わば、「三方良し」)が含まれます。
 すなわち、商品やサービスの品質を高めようとすると何かが犠牲にされますが、その犠牲が大きすぎると、その品質の商品やサービスを提供し続けることができません。これは、対立する利益を的確に把握しなければならない、というもので、これによってリスク管理が適切に行われ、経営判断が合理的に行われることになります。
 また、自社だけの利益を追求して、取引先や顧客、さらに社会全体を害することがあれば、会社は社会の中で事業を継続できなくなり、長く利益を上げることができません。これは、会社経営におけるコンプライアンスの問題であり、会社が社会の一員として受け入れられなければならないというもので、これも、リスク管理や経営判断のための重要な要素となります。
 商品やサービスにしろ、経営にしろ、良いものは良いのですが、それが行き過ぎた場合の問題も、例えば「最悪シナリオ」を考えてみるなどの方法で適切に分析し、対策を考えておく必要があるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 会社と経営者の関係で見れば、株主が経営者に求めるものとして、商品やサービスにしろ、経営にしろ、過剰なことをしない、適切なバランス感覚を持った人を選ぶこと、または、現在の経営者に対してはバランス感覚の取れた経営をするように、株主総会や(株主の代理人であるはずの)社外取締役などを通して働きかけ、チェックすることが重要となります。
 さらに、株主の問題もあります。
 それは、例えば一時期のアメリカの株式会社において、株主が短期的な成果を過剰に要求した結果、アメリカ企業の成長が阻害された、と言われるように、一方的に過剰な利益追求をせず、社会と共存し、バランスの取れた成長を求める、という姿勢も重要になります。

3.おわりに
 「中庸」の一番難しいところは、従業員や会社組織全体のモチベーションを維持し、ベクトルを合わせることでしょう。商品やサービスの品質にしろ、会社事業の成果にしろ、一本鎗に頂点を目指す場合には、目標が明確になり、ベクトルも合わせやすくなるのです。
 これに対し、「中庸」を目指す場合には、もうこの程度で良いじゃないか、という否定的な意見の口実になりかねないなど、足並みの乱れの原因になり得ます。
 それでも、「中庸」に向けて会社組織の舵を切るのは、経営の腕の見せ所です。組織を束ねるためには、やはり共通の目標を定め、ベクトルを合わせることが重要です。したがって、過剰な場合の問題点を明確にしてそれを組織全体で共有することと、そこで目指すべき明確な目標を設定し、共有することが重要になってくるのです。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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