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経営組織論と『経営の技法』#226

CHAPTER 9.4:偶然を生かすキャリア ②5つのポイント
 計画された偶発性には、2つの考え方があります。1つは、探索が偶然の機会を生み出すということ、もう1つは能力が機会をものにするということです。つまり、良き偶然を手にするためには、機会を生むことと同時に、その機会を活かす能力が必要だということです。そのうえで、計画された偶発性の考え方では、5つのことを大事に考えます。それらは、好奇心、永続性、柔軟性、楽観性、そしてリスクテイクです。
 好奇心は、さまざまなことに関心を向けることです。特定の方向だけに関心を向けていれば、偶然は起こりにくくなります。仲の良いグループがいて、楽しいからといってその仲間とばかり会っていては、なかなか新しいことは起こりません。探索の方向は、自分がすでに関心を持っているものばかりではなく、さまざまなことに向けられる必要があります。
 また、 偶発性を生む探索を根気よく続けることが菫要です。良き偶然は1度や2度で起こるとは限りません。1度や2度の探索活動で諦めることなく、永続的に探索を行うことが良き偶然を生む可能性を高めてくれるのです。
 また、起こる機会を柔軟に、そして楽観的に捉えることも重要です。
 自分の価値観やこれまでの考え方にとらわれることなく機会を捉えなければ、なかなか良き偶然にはつながりません。また、その機会に対して良い方向につながると考えることも大事です。どちらも、目の前にある機会を活かすためには必要な考え方だといえます。
 最後に、リスクをとることが重要だと考えます。たとえその機会をものにできたり、良い方向に行く可能性が低くとも、そのリスクをとらなければ良き偶然はつかめません。レギュラー選手がケガをして巡ってきた機会に、「良い結果を出せなかったら、二軍に落とされてしまうからこの機会は諦める」というような態度では、いつまで経ってもキャリアは開けていかないでしょう。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』214~215頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 ここで示された5つは、経験上、非常に的を射ていると評価します。
 この中でも、好奇心が重要です。好奇心が、残り4つの要素の源にもなるからです。
 すなわち、興味があることだからこそ、長続きします(永続性)し、いろいろと情報が蓄積されて、理解も深まりますから、変化球にも強くなります(柔軟性)。また、理解が深まり、土地勘のある場所だと、そうでない場所よりも不安が小さくなります(楽観性)し、興味があるからこそ、やってみようという気持ちになります(リスクテイク)。
 自ら情報発信もし、好奇心のアンテナを立てていると、何もしていなければ気付かなかったり、切り捨てたりする情報も、感度よく拾えるようになり、さらに情報通になっていきます。
 そのようなアンテナが、チャンスを拾ってくれます。そして、そのアンテナの感度を高めるのが、好奇心なのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 人材を探す会社側にも、同様のことが言えます。つまり、人材探しに際し、どのような人材がいるのだろうか、どんな人に来てもらうと盛り上がるだろうか、ということに対して常に興味を持って情報を集めていると、そこから、求める人材が具体的に、しかも現実的になっていき、良い人材に巡り合える可能性が高まるのです。

3.おわりに
 経営者の人脈は、人材獲得だけでなく、仕事の領域や可能性を広げることにも有用です。これは、従業員の人脈でも同様です。そこでは、他人に対する(良い意味での)興味や好奇心がベースとなります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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