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松下幸之助と『経営の技法』#44

3/30の金言
 予期できずにぶつかる多くの障害の中でも、自分の道を求め、自分の仕事を進めていく。

3/30の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 天候の変化が規則的だと、一面都合がよいが、かえって困ることがあり、生活の味わいや面白さが減少する。
 人生も、予期できない多くの障害があり、その中でも、自分の道を求め、自分の仕事を進めてゆかなければならない。人生の成功の姿は、予期できない障害を乗り越え、一定の自己コースを歩んでゆくことである。

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 この場合、松下幸之助氏の言葉は、経営者個人の生きざまの問題というよりは、会社経営上の問題であり、会社組織の在り方に関わる問題、と考えられます。会社組織は、経営者の意識などを実現するものだからです。
 すると、ここでは「予測不可能」な中で、自分の道を貫くこと、すなわち、予測がつかない状況でも、足踏みをしてリスクを避けるのではなく、リスクを取ってチャレンジすべきこと、が示されています。
 これは、「儲ける」ために存在する会社にとって、むしろ当然のことです。リスクを取ってチャレンジしなければ、利益を上げることができないからです。しかも、ビジネスは博打ではありません。思い切りの良さも必要ですが、それ以前に、リスクコントロールを適切に行うことが必要です。
 すなわち、氏の言葉を会社として実践し、予測がつかない状況でもリスクを取ってチャレンジするには、リスクコントロールが不可欠であり、そのために十分な体制やプロセスを整え、実践することが必要なのです。
 さらに言えば、決めた方向で組織をまとめ上げ、一致団結して動かなければなりません。そのためには、経営者(又は、当該プロジェクトに関して権限と責任が与えられた者)による、執行上の命令が絶対のものとして、組織全体が動かなければなりません。ある意味、独裁的な権限が与えられるべきなのです。
 このリスクコントロールの部分を「衆議」、後者の執行権限の部分を「独裁」として表し、両者を合体させると、「衆議独裁」という言葉になります。内部統制の基本であり、多くの経営者が会社の社訓として採用している重要な考え方です。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 株主と経営者の関係で見た場合、予測が立たない中で方向性を定め、会社組織を束ね、迷わずに進んでいく力量が必要なことは、特に指摘するまでもないでしょう。このことは、経営者の資質の最も重要な部分です。それも、「衆議独裁」を実現できる人物、すなわち、多くの意見をまとめ上げて方向性を示し、そこに向かって組織を一致団結させてリードできる人物が、リーダーとなるのです。
 そして、このような理想のリーダーが経営者であれば、株主や、その代理人であるはずの社外取締役も、経営者を指導する必要はなくなり、経営者の判断内容や判断過程のチェックに専念することが可能になるのです。

3.おわりに
 個人の問題として見ても、先が読めない中で自分の信念を貫くのは難しいことです。それを、組織として行うことになれば、より一層難しく感じられます。
 けれども、一人で背負うと大変なことになりますが、全員が状況を正しく認識し、ベクトルを合わせ、同じ目標に向かって団結できれば、かえって頼もしく感じ、一人で孤独と戦わない分、楽になる面もあるはずです。この、良い意味での仲間意識は、問題を乗り越えるたびに強くなり、組織が一層強くなります。このような、良い循環をつくり出すことも、良いリーダーの条件であり、一人ではできないビジネスなのです。
 どう思いますか?

※ 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。


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