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労働判例を読む

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2020年4月の記事一覧

労働判例を読む#150(有料解説動画付)

「大島産業ほか(第2)事件」福岡高裁R1.6.27判決(労判1212.5) (2020.4.30初掲載)  この事案は、元長距離トラック運転手Xらが、運送会社Yに対して、賃金等の不払いを理由にその支払いなどを請求したところ、Yは、①実際の勤務時間はXら主張の勤務時間よりも短い、②就業規則と異なる賃金ルールが合意されていた、③深夜残業代が固定残業代として支払われていた、④退職積立金や損害賠償金などの様々な費目を賃金から控除した、⑤賃確法の適用がない、などと争った事案です。  

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労働判例を読む#5

「国際自動車(差戻審)事件」東京高裁平30.2.15判決(労判1173.34) (2018.8.3初掲載)  この裁判では、①基本給+諸手当部分と②歩合給部分の2本立ての給与を支払っているタクシー会社の給与体系が問題になりました。すなわち、②歩合給部分では、残業代などが控除される計算式になっているため、①②の給与を合算すると、残業しても手取りが変わらないことになるのです。最初、1審2審は、いずれもこの給与体系を違法と判断しましたが、最高裁は適法の余地があるとして差し戻し、差

労働判例を読む#149(有料解説動画付)

「国・中労委(学校法人文際学園[非常勤講師])事件」東京地裁H31.2.28判決(労判1211.165) (2020.4.24初掲載)  この事案は、学校法人Xの労働組合員らが、学園の前の道路で通学時間中に、学生に対してビラを配布していたところ、Xの従業員らがこれを妨害したとして、不当労働行為を認定(ビラ配布の妨害禁止命令)した労働委員会Yの決定について、裁判所が判断したものです。裁判所は、Yの決定を支持しました。

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労働判例を読む#4

「信州フーズ事件」佐賀地裁平27.9.11判決(労判1172.81) (2018.7.27初掲載)  この裁判例は、業務中に交通事故を起こした従業員が、事故の相手方に対して損害賠償を行った場合に、会社に対して、従業員が支払った賠償金の7割分の支払いを命じた事案です。実務上のポイントとして特に注目している点は3点あります。 1.賠償金の分担  条文(民法715条)は、賠償金を支払った使用者から、事故を起こした従業員に対して、賠償金を求償できる旨が規定されています。  け

労働判例を読む#3

「国・宮崎労基署長(宮交ショップアンドレストラン)事件」福岡高裁宮崎支部平29.8.36判決(労判1172.43) (2018.7.20初掲載) この裁判例は、心停止(心臓性突発死)につき、過重な業務負荷に業務起因性を認め、労災の対象と認定した事案です。実務上のポイントとして特に注目している点は3点あります。 1.労働時間  本件の直接の争点は、労災認定の要件である業務起因性であり、労働時間は、業務起因性を判断するうえでの間接的な事情の一つにすぎません。  けれども、

労働判例を読む#148

「太陽家具百貨店事件」広島高裁H31.3.7判決(労判1211.137) (2020.4.17初掲載)  この事案は、会社Yの支店長代理Kが、勤務中に急性大動脈解離により死亡した事案で、遺族らXがYに損害賠償を請求した事案です。1審2審いずれも、Xの請求を一部認めました。 1.判断枠組み(ルール)  この裁判例でも、厚労省の定める、いわゆる過労死認定基準のうち、特にその残業時間に関する判断枠組みを原則として採用しています。  ここで、いわゆる過労死認定基準は、正式に

労働判例を読む#2

「さいたま市(環境局職員)事件」東京高裁平29.10.26判決(労判1172.26) (2018.7.13初掲載)  この裁判例は、公務員が職場のパワハラによって自殺した、として公共団体の損害賠償責任を認めた事案です。実務上のポイントとして特に注目している点は2点あります。 1.公務員の労働関係  公務員の労働関係は、民間企業の労働関係と様相が異なります。  例えば、民間企業で従業員を解雇する場合には、解雇権濫用の法理が適用されます(労働契約法16条)。実際上、解雇

労働判例を読む#1

「A不動産事件」広島高裁平29.7.14判決(労判1170.5) (2018.7.5初掲載)  この裁判例は、第三者に告発文を送った社員に対する懲戒解雇に関し、解雇としては有効であるとして、解雇の効力が生ずるまでの間の賃金請求だけを認めた事案です。  実務上のポイントとして特に注目している点は1点あります。  一方で解雇は合理的である、というのは、会社代表者の息子である専務が、レンタルビデオ店で他人名義の不正な会員カードでDVDを借りて逮捕された、という事実を、同業者の

【労働判例を読む】スタート!

労働判例を、経営のツールとして、分析します。産労総研の『労働判例』掲載判例を、できるだけたくさん、取り上げます。 好評の、【労働判例を読む】@アメブロ、こちらでも連載します。昔のものも。 この連載は、書籍にもなっています!