小説「京都リ・バース」1 ドクター・クラン 東の都編
この国の大気は、湿り気を帯びていて、女の肌を思い出させた。
彼が、自分のものにするつもりだった女。
なめらかな皮膚。手の内に包んだ乳白色の乳房の感触。
『……でも彼女は、あなたのものにはならなかった』
「過ぎたことを」
『十二年です。あれから』
暖かい微笑みの客室乗務員に送られ、他の搭乗客と共にボーディング・ブリッジを歩く。
大きく開けた窓に、空港の景色が広がる。
整然と居並ぶ旅客機の群。とどまることなく機能し続け、旅客機を送り出し受け入れる。
成田国際空港。