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吉岡徳仁さんデザイン「Easy-to-make FACE SHIELD」試作レビュー

デザイナーの吉岡徳仁さんが、医療従事者へ向けてフェイスシールドを簡単に制作できるテンプレートデータを公開されている。

素敵なアイデアだと思って作ってみたくなった。このフェイスシールドは、テンプレートを下敷きに手作業でのカットを想定されているけれど、職場のレーザー加工機を用いるとどの程度のスピード、コスト、クオリティで作れるものなのかも検証することにした。制作過程をまとめた上で、試作したものをレビューしてみる。

■ 使用した素材

素材は、塩ビ、またはPETで0.2mm厚の透明シートを推奨とのこと。今回は、それに近しい素材を100円ショップで探した。(ダイソー、Cando、ワッツなどのチェーン店は、緊急事態宣言後も営業しているよう。)

代用できる可能性を感じた商品は、以下の3つだった。
・クリアファイル(ポリプロピレン / 0.2mm厚)
・カードケース(ポリプロピレン / 0.3mm厚くらい)
・プラ板(ポリスチレン / 0.4mm厚)

*塩ビは燃焼すると人体に有害な塩化水素が発生するため素材として今回はNG。
*以下、ポリプロピレンはPP 、ポリスチレンはPSと表記。

■ レーザー加工機の設定と加工時間

□ 制作に用いたレーザー加工機

□ 設定と1枚あたりの加工時間

*timeは大きいサイズのフェイスシールドを作った場合の時間。
*PPもPSも熱で溶けやすく縁の精度が甘くなりやすいため、スピードをあげつつパワーは落として、カット回数を多めにして加工。

■ それぞれの素材の特徴

□ クリアファイル(PP / 0.2mm厚)
10枚100円という安さと加工のしやすさが魅力。ただ、素材が柔らかすぎてクルッと丸まって地面に置いとときに立たせにくい。それと、どこの100円ショップも売っていたのは半透明のクリアファイルのみだった。手元や近くの文字などは読めるのの、実際の使用は難しそう。今の状況だとネットで高透明の商品を探すのが早いかもしれない。(写真左)

□ カードケース(PP / 0.3mm厚)
推奨の厚みより少し分厚い。カチッとした作りで安定感もあって、個人的にはいちばんつけ心地が良いように感じた。手作業で切る場合でも問題ない厚みだと思う。透明度も高く視界もクリア。(写真右)

□ プラ板(PS / 0.4mm厚)
曲線を作るにはしなやかさに欠けていて、このプロダクトには不向きだった。プラ板に限らず、他の種類の樹脂であっても0.4〜0.5mm辺りの厚みを超えると同じ理由で素材として適さないと思う。

*カードケースやクリアファイルは、2枚のシートが重なっているため、1回で2枚のフェイスシールドを切り出せないかと考えたけれど、PP素材ということもあり熱で縁が溶け出してくっついてしまったためNGだった。

■ 試作品のレビュー

1. 着用感

Web上でシェアされているDIYのアイデアは、面のパーツとそれ以外のパーツを分けて制作するものが多い。一方で、このデザインはメガネをシートに通すのみ。less is moreを体現したようなデザインである反面、つけ心地はどうだろうと思っていたけれど、実際作ってみるとその点は問題なかった。

シートの内側へ通すメガネのフレームが、しなやかに曲がるPP素材をガイドして綺麗な曲線を作る役割を担っていて、安定性が高いように感じた。

2. メガネとの組み合わせ

人口の7割以上の人がコンタクトまたはメガネを使用しているといわれる日本でメガネと組み合わせるこの方法は、アイデアの普及のしやすさに寄与すると思う。普段メガネをかけない人でも、安い伊達メガネを購入しさえすれば使用できる。着眼点がすばらしいと感じた。(メガネの種類によって多少使い心地は違うかもしれない。)

3. サイズとフォルム

A3サイズから切り出すこのサイズは、顔から首のあたりまで覆えるため、飛沫からしっかりと顔を守れそう。(サイズは大小2種類ある)装着時の形状もきれいだと思う。「緊急時に見た目がどうこう言ってられない」という状況は勿論あるだろうけれど、そんな中でも少しでも美しく、且つ使いやすくしようと考えることや、直感的に使ってみたいと思えるプロダクトであるかどうかはとても大切だろうし、普及の仕方も変わってくると思う。

■ まとめ

作ってみて改めて、コストなども踏まえてとても素敵なアイデアだと思った。また、簡単なものであっても作ってみて分かることがたくさんあった。

デジタルファブリケーション機材の普及などもあって、テンプレートやデータをオープンにする取り組みが増えてきているけれど、この流れで制作されるものの多くは、「オリジナルのプロダクトの代用やコピー」になる。故に、制作プロセスに関するTipsが情報として少なかったり、「使用してみたけどもっとこうしたらよくなるかも」みたいな場合があると思う。

だから、こうして作ってみて言葉にすることは価値があるかもしれないし、誰かの役に立つこともあるかもしれない。僕は、ものを作ることが仕事ではないけれど、こうしてちょっとでもそこに関われることがあればうれしく思う。

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