アザミ

彩と尖り。

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したいことしかできない

私たち夫婦の仕事は年末みんなよりも遅く仕事納めをして、年始はみんなよりも早く仕事を始める。 お正月の喧騒が終わり落ち着くには寂しいほど静かな平日を迎えた。 この仕事はとにかく人がいないことには始まらない。 外は冷たい雨が一日中しとしと降っていて、歩く人の影すら見えなかった。 こんな日にはずっと逃げていた事務作業をするのがぴったりで、 適当に広げた資料に目を通しながら、事務作業なんかしていられなくなるぐらい急に忙しくなればいいのにと、私は心の中でずっと思っていた。 机に

    • 朝陽がたくさん入る、少し埃っぽい部屋

      もう会いたくないほどわずらわしかった彼女を思う時、私の胸が少し痛む。 でもそれも、少しだけ。 だって、 私はひどい人間だから。 私はずるい人間だから。 彼女との出会いは20年前にさかのぼる。 中学の同級生だった私たちは出会ってすぐに仲良くなったわけじゃなくて、何年かかけて少しずつ近づき、多感な時期をお互いに支え合うように寄り添うようになっていった。 私たちはとにかくなんでも話し合った。 何気ない世間話はもちろん、身体の変化のこと、初恋、失恋、親には言えないようなこと

      • 坊主にしたい話

        ある日、受験生だった次兄が散髪に行って、丸坊主になって帰ってきた。 それを見るなり母は激怒した。 私が記憶する限り、それまで次兄が丸坊主にしたことはなく、当時小学生だった私は、その時の次兄の行動や母の怒りの理由がまったくわからなかった。 次兄を怒鳴りつけていた母の声がただただ煩く、心の中で耳を塞いでいたことを覚えている。(当時怒る母の前で耳を塞ぐ勇気はなかった) それから数年後、今度は既に成人していた長兄が、これまた丸坊主になって帰って来た。長兄もまた、丸坊主にしたこと

        • 私は本を読まない

          "読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?" たぶん本は読んだほうがいい。昔からそう言われてきたし、今でもみんなそう言う。その方が賢い人になれるはずだし、視野が広がるらしい。 私がこの人賢いな〜と憧れるような人の多くはよく本を読んでいて、当然だけど語彙力がある。そういう人の書く文章ってSNSとかで見ていてもなんとなく本が好きな人らしい匂いがするというか、言葉の使い方にそれが表現されて見える気がする。("まるで翻訳したみたいな文章"は好きになれないけれど) 思い返せば

        したいことしかできない