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「母の日」のCM

 例年、「母の日」が近づくと、幼い子どもたちが母親のために特製のカレーライスを作ってあげる、というCMが流れる。
 一般的には好意的に受け止められているCMなのだろうが、離婚などで母親がいない家庭にとって、これはなかなか迷惑なものらしい。

 知人のA君は数年前に離婚し、現在は小学4年生の娘さんと2人で暮らしている。彼の家庭の場合も、食事中にこういうCMが流れると、急に2人とも無言になるらしい。
 A君だけではなく娘さんのほうも、CMとそこから派生する内容には触れないように気を遣っているようなのだ。

「でも」
と、A君は言う。
「今年、ああいうCMが流れたら、それをきっかけに娘と話をしようと思うんです。両親の離婚で、いろいろと寂しいことや嫌なこともあるだろうけれど、それを避けてばかりもいられないので」

 私もA君の考えに賛同する。カレーに甘口と辛口があるように、これから娘さんを待ち受けているのは甘口の人生ばかりではないだろう。早いうちに辛口の経験をすることが、将来にとってプラスになるかもしれない。
 少なくとも、こういうCMをとおして、「誰かを傷つけようとする意図がなくても、結果的にそうしてしまう場合がある」ということに気づけたことで、他人の痛みに敏感な人間になれるのではないか。そんな気もする。

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