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45歳・教員の「越境学習」 ~日本財団での1年間~(24)

かち歩き大会②

 いっしょに歩いていたY君がしきりに生あくびをする様子を見て、私とS君は彼を道端の縁石に座らせ、しばらく休憩をとることにした。
 こうなった原因は、いくつか考えられる。
 一つ目は、千人以上の集団に混じって歩くことにより、知らず知らずのうちにオーバーペースになっていたことだろう。Y君の体に急な負荷がかかってしまい、脳内の酸素が不足してしまったことが生あくびの原因だと思われた。
 二つ目としては、新社会人になってからの半年間、学生時代とは異なる忙しさのなかで、あまり運動をする機会がなかったことが挙げられよう。Y君自身の話によれば、このところは寝不足も重なっていたらしい。
 三つ目は、自戒も込めてということになってしまうが、「走るのならばともかく、歩くのだったら大丈夫だろう」と楽観的に考えていたことだろう。これが、たとえば市民マラソンに参加をするのだったら、さすがに何日か前からトレーニングをして本番に臨んでいたと思う。しかし、私も含めて「歩くのだったら何とかなるだろう」と考え、ぶっつけ本番で今日を迎えていたのだ。

 ・・・幸い、5分ほど休憩をとるとY君の顔色もよくなってきたので、我々は再スタートをすることにした。そして、無計画のまま大会に臨んでしまったことを反省し、目標とする時間とペースを設定することにした。
 かち歩き大会では、ゴールの制限時間が10時間以内とされている。大人が普通に歩くペースは時速4kmだと聞くが、それだと43kmのコースを完歩するのに10時間を超えてしまう。これが1時間に5kmのペースであれば、9時間以内でゴールをすることが可能だ。そこで次のように目標を定めた。

【目標】3人で「8時間台」でのゴールを目指す。

 遅ればせながら目標を定めた我々は、再スタートの前に次のことも申し合わせた。

3人のうちの誰かが限界を超えたら、「勇気ある撤退」も辞さない。

左から順に、S君、Y君、立田

(つづく)

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