「チリコンカン」は「横浜市民のソウルフード」なのか?
「ソウルフード」という言葉がある。元々は、米国南部に住むアフリカ系アメリカ人の間に伝わる料理のことだ。
1860年代の南北戦争の時代に、奴隷として米国に連れてこられたアフリカ人が、支給されたわずかな食材や白人の残飯などを利用して作った料理が本来の「ソウルフード」なのだそうだ。
そこから転じて、最近の日本では「郷土料理」や「特定のコミュニティで愛される料理」を指す言葉として用いられることが多い。
北海道の「ジンギスカン」、秋田の「きりたんぽ」、東京の「もんじゃ焼き」などがその代表的なものだろう。
私の地元である横浜の「ソウルフード」は、「崎陽軒のシウマイ」
「サンマー麺」
だと言われることが多い。
しかし、昨日(10月16日)の「THE TIME,(ザ・タイム)」(TBS系テレビ)では、
「横浜市民の『ソウルフード』は『チリコンカン』だ」
と紹介されていた。
・・・チリコンカンはメキシコ料理をルーツとし、米国南部のテキサス州が発祥だとされている。
それがなぜ「横浜市民の『ソウルフード』」なのかといえば、番組内でも紹介されていたように、横浜ではこれが学校給食の定番メニューになっているからなのだ。
本来のチリコンカンは、ひき肉やたまねぎを炒め、そこにいんげん豆、トマト、チリパウダーなどの香辛料を加えて煮込んだ料理である。
しかし、横浜の学校給食では大豆が豊富に使われ、味付けも辛さを控えめにした子ども向けのものになっている。
横浜で学校給食に登場したのは平成の時代になってからだが、ご飯にもパンにも合うので子どもたちにも人気のメニューとなっているのだ。
また、栄養価が高いことで知られる大豆だが、煮豆などにすると子どもには不人気で、食べても食べても減らないことから「地獄豆」と呼ばれたりもする。
しかし、チリコンカンだと子どもたちはよく食べてくれるので、給食のメニューでは「月イチ」ペースのヘビーローテーションになっているのである。
なぜ、横浜の学校給食のメニューにチリコンカンが加わったのかは定かでない。けれども、子どものころに「月イチ」で食べていれば、「ソウルフード」だという見方もできるだろう。
だが、音楽にソウルミュージックというジャンルがあるように、本来の「ソウル」という言葉には「アフリカ系アメリカ人の文化や魂」というニュアンスがある。
それは、文字通りに「ソウル(魂)」としての料理であり音楽であるはずなのだ。
・・・昨日の記事では、ハロウィンについて書いた。
元々のハロウィンは秋の収穫を祝い、悪霊を追い払うという宗教的な意味合いをもつ行事だったのに、近年の日本では「仮装をして騒ぐための日」になっている、という内容の記事だ。
今の日本の「ソウルフード」も、「ハロウィン」に近いのではないだろうか。
少なくとも、横浜のチリコンカンに「魂」が入っているとは思えないのである。