無題

『Make Us Dream』:プロサッカー選手という「職業」と「生き方」

 前回の記事では、Netflixのオリジナル作品『サンダーランドこそ我が人生』について取り上げたが、今回はAmazon Prime(アマプラ)のオリジナル作品『Make Us Dream』を紹介したいと思う。

 アマプラと言えば、グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティを追いかけたドキュメンタリー番組『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』も良くできた作品だ。本作は、こうしたシリーズ作品とは異なる長編作品として作られており、非常に見応えのある作品だ。

〇 歓喜と悲劇を経験した街で育つ

 本作では、リヴァプールFCのレジェンドであるスティーブン・ジェラードが自身のキャリアを振り返るドキュメンタリーとなっている。

  ジェラードは、8歳の頃から地元・リバプールFCのアカデミーに所属。彼の幼少期、リヴァプールFCは国内外タイトルを獲得し続けた絶頂期、「ヒルズボロの悲劇」を経験する。街全体が大きな悲しみに包まれた後者の出来事はスタジアムにおける追悼行事など、本作でも度々取り上げられる。

 ジェラードは、アカデミーからトップチームに昇格し、中心選手としての重責を担うことになる。一方、国内リーグがプレミアリーグに移行後、リヴァプールFCはビッグタイトルから遠ざかってしまう。

   本作における1つのポイントは、ビッグタイトルへの渇望、プレミアに新風を巻き起こしたモウリーニョ監督からの高い評価から、他クラブへの移籍を真剣に考えていた経緯を語っていることだ。

 「イスタンブールの奇跡」として語り継がれるUEFAチャンピオンズリーグ04-05決勝を制して欧州王者に返り咲いた後、決断が迫られる。    この時、父親は悩む息子とに対して「リヴァプール人である」「お前の心にはリヴァプールがある」と述べたという。そして、彼はクラブと故郷への愛着を示し、残留することを決意する。

〇 ファンの夢をかなえるために

    リヴァプールでプレーすることを選んだ彼はキャプテンとしての図りしえないプレッシャーの中で、プレミアリーグ制覇のために尽力する。ビッグクラブに巨額のマネーが投じられ、ハイレベルな競争が繰り広げられる中、応援する多くの人々たちの夢を叶えるため、チームをまとめ、心身に大きな負荷をかけながらもプレーを続けた。 

   それだけに、本作のハイライトとなる、13-14シーズンの快進撃と結末の残酷さを感じた。自分も、この時のリヴァプール、そしてジェラードの決意が伝わるプレーを見て心を揺れ動かされた。優勝争いのライバル・シティとの大一番に勝利した後、円陣を組んでイレブンに熱く語っていたのが印象に残っている。

 そうした姿を改めて見た後、彼がリヴァプールを離れ、ロサンゼルスに移った意味を理解した気がする。試合前のロッカールームに座るジェラードの姿は真剣な表情ではあるが、どこかリラックスした雰囲気がある。彼自身が述べるとおり、長年背負ってきた重圧から解き放たれたのだと。

〇 「職業」と「生き方」

 自身のサッカー人生を積み上げてきたクラブだからこそ、誰よりも愛着も強く、人一倍にプレッシャーを感じていたジェラード。そうした強い思いは、年単位の契約関係で成立し、自営業者な側面も強いプロサッカー選手という職業と相いれない部分があるかもしれない。

 特に、移籍市場のグローバル化も進み、様々な選択肢が生まれるようになったサッカー界では、1つのクラブでキャリアを終える「ワンクラブマン」という生き方は難しく、稀有な存在であることを改めて考えさせられる。

 ジェラードは「ワンクラブマン」という選択はしなかったが、リヴァプール人であることは変わらない。実際、彼は引退してすぐにクラブにコーチとして戻ってきた(現在、スコットランドのレンジャーズFC監督を務める)。それは、彼の心の中にリヴァプールがあり続けたからだと思う。

 彼が望んだ夢をかなえることはできなかったかもしれないが、ファンに与えてきた多くの夢は色あせることなく、そして絆はいつまでも続くからだ。その意味では、クラブと選手の理想的な関係性かもしれない。

 サッカーに限らず、応援する対象がいる人には刺さる作品だと思う。そして、クラブのエンブレムを胸に戦う選手たちを一生懸命応援していきましょう。同じ夢を一緒に見る仲間として。。

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