Apple Watchの打倒のしかた(中)

思考実験シリーズの第3回。架空の団体「140 Computer」が、Apple Watchを打倒するまでの努力と成長のストーリーを描きます。努力はしているのですが、成長となるとなかなか……。

時代背景や製品を構成している「考え」を分解する

さて、前回はApple Watch打倒の最前線にいると思われる腕時計メーカーのApple Watch打倒の先行例として、各社のスマートウォッチ風腕時計の製品化の取り組みについてうわっつらをなめた程度のかるーい分析を行なってみました(詳細な分析はしたのですが、詳細すぎて出せない、、、)。

ただ、正直なところApple Watchを打倒するために腕時計を作るのは、いまひとつ感心しません。

ひとつには、(くりかえしになりますが)おおよそ腕時計という製品カテゴリが社会的な使命を終えた製品だということ(個人の見解です)。

そして、腕時計というハードウェアを作ろうとすると要求される製造技術水準が上がりすぎるためです。大変すぎるのです。

もう少し「楽」をしてApple Watchを倒したい(切実な気持ち)ところです。

画面がカラーである必要はそれほどないでしょう?
画面が小さいと見にくいですよね?
タッチ操作は本来は必要ないですよね? カッコつけだけですよね?
充電池か太陽電池で動く、液晶画面のデバイスぐらいでいいんじゃないでしょうか?

コレ、Bluetoothで(たまに)スマホやパソコンと通信を行って、画面に表示を行うぐらいでいいんじゃないでしょうか? そもそも、腕時計である必要ってあるんでしょうかね?

よくよく検討してみると、スマホやパソコンの情報を無線で表示するデバイスが必要なのであって、腕時計を作る必要があるという話ではありません。

腕時計メーカー各社のみなさまの取り組みを見ていると、スマートウォッチに対抗して「スマートウォッチ風」腕時計を出して様子を見てみた、という印象を受けます。

これでは、「犬より速く移動するのに馬を連れてきた」ような話です。車やバイク、あるいは飛行機やロケットを持ってくればよいのです。

Apple Watchは保守的なウェアラブル端末

ここで、Apple Watchが登場してきた時代的な背景をおさらいしましょう。

Apple Watchの前に世間の注目を集めていたデバイスがあります。Google Glassです。

Apple Watchは明らかにGoogle GlassのApple版です。「ウェアラブル端末」のメガネ版がGoogle Glassであり、腕時計版がApple Watchです。

Google Glassは高価な点以外はとくに悪くはなかったのですが、カメラがついていて行き交う人々をスキャンしては顔認識して、他人のプライバシーを丸裸にするのではないかという「嫌悪感」を与えてしまいました。

「iPhoneおことわり」という貼り紙が出ている店は見たことがありませんが、当時「Google Glassお断り」という店は、バーやカジノをはじめとして、飲食店にも見られたと伝えられています。自動車の運転中にGoogle Glassをかけることも公に禁止されかけました。

また、個人的には目に向かって(正確には、メガネに向かって)プロジェクションのための強い光を当てるという仕組みそのものに「目が悪くなりそう」といった印象もありました。「電脳化」「Brain Machine Interface」のために、うなじのところにUSB端子を増設する必要がある、と言われたときに「痛いからやだ」と感じる印象に近いものがあります。

……脱線しました。この、Google Glassが社会から拒絶されたという経験がAppleに(保守的なウェアラブル端末である)Apple Watchを作らせたと思っています。

どうせApple社内でも同様の「Apple Glass」的な製品は試作していたはずで、こちらはプライバシーにも配慮した製品だったと推測していますが、Google Glassのおかげで市場投入のメドが立たなくなったのでしょう。

この一件は、人間社会に溶け込む製品であるために、「ユーザーのプライバシーを侵害しない」というAppleの信念を強く刺激した出来事だったと思うのです。

そのために、Apple Glassをボツにしたあとで「腕時計」というきわめて保守的な製品のフリをして、そこそこの大きさの画面表示デバイスをでっち上げたのがApple Watch。

そのせいで、一見して、必要以上に保守的な製品として仕立て上げられ「すぎている」印象を受けます。その不必要に保守的な見た目に日本国内の保守的で堅気な時計メーカーが過剰反応して、きっちりしたスマート「腕時計」製品を市場投入したのでしょう。

Apple Watchを物理的に分解して構成部品を調べるだけでは見えてこないことが、時代背景やApple内部の人間のモノの考え方をなぞることで見えてきます。そして、後から考え方をなぞるだけなら、そのApple社内の人間より優秀である必要もないのです。

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