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夢と経験と興味と想いが重なること

この国が嫌い。

そういったザンビア人の青年。
彼の言葉と希望を失ったような表情が喉の奥に刺さった小骨のように心に引っかかっている。

日本に連れて行ってくれ。
お金をくれ。ものをくれ。仕事をくれ。毎日のように言われるそんな言葉

クリニックにあふれるドナーのステッカーが貼られた医薬品や事務用品
ドナーから与えられたものを着服したり期限を切らして破棄したりする同僚たち

医療スタッフに高圧的な態度をとられうつむき小さく肩をすぼめる患者さん

私たち外国人がどんなにこの国の課題を解決したいと思い、お金や技術、人材を導入しても本質はなにも変わらない。この国の人々が自国を愛し、自国に誇りをもって、自国の人々のために変わろう、変えようと思うようにならないとこの国をよい方向に導くことはできないのかもしれない。ザンビアに来て4か月、そう思うことが多くなった。

日本に行くにはどうしたらいいの?
日本で仕事をしたいから日本語を教えて!
ボランティアなんていらない!援助もいらない!もう途上国じゃないんだ!

いつかこの国も、この国のひともそんな風に変わらないといけない。
この国がよくなるためには、そんな変化が必要なんだ。

日本で看護師をしていたころ、たくさんの留学生や技能実習生と関わった。
言葉、宗教、習慣、文化の違いから“トラブルメーカー”になることも多かった。
同室の患者さんからクレームが入ることもあった。
治療費や入院費の支払いでトラブルになることもあった。

イスラム教徒の患者さんはお祈りの前に足を洗う。
部屋にシャワーはないので大部屋の洗面台で洗っていた。
すると同室の患者さんからクレームが入った。

敬虔な仏教徒の患者さん。
お経を唱える声がうるさいとクレームが入った。

長期入院の患者さん
毎日母国の家族とテレビ電話をしながら廊下を散歩していた。
うるさい、とクレームが入った。

就労ビザが切れた患者さん
家族は仕送りを待っている、帰国する飛行機のチケットは買えない。
身を隠しながら働いた。
体調が悪くなったけれど不法滞在者なので病院にはいけない。
歩くのもやっとの状態で大使館に駆け込み、病院にやってきた。

一家で日本に移り住んだ患者さん
お父さんが病気になった。
入院中の治療は公費で賄えたが、仕事ができない。奥さんは日本語が話せず仕事に就けない。
家族の生活に加えて、退院したら病院に通う交通費、薬代、診療費が必要になる。病気と貧困の二重付加に苦しむことになった。

言葉も文化も習慣も宗教もなにもかも違う土地で病気になり、心も体も弱り、さらに生活も制限され、金銭的な問題にも直面する。他の文化や習慣への日本人の理解はまだまだ低い。可能な限り彼らの文化や習慣を尊重できるよう努力するが、マジョリティーの日本人に合わせた方法をとらざる場面も多々あった。
彼らのおかれた状況の過酷さと、病棟の一看護師としてできることの限界にいつも胸が痛んだ。
彼らのためになにかしたい、アフリカに来て自分が外国人になってさらにその思いは強くなった。

アフリカに来るまで、在日外国人支援と国際協力はどちらも“国際保健”と括られる分野ではあるが、互いに交わらないような感覚があった。

でも、日本で暮らす彼らを支援することで彼らの母国の発展に貢献することができるような気がしてきている。

母国を離れて日本にきている彼らは、母国で日本人に出会ったら「日本に連れて行って」というだけではなく「どうしたら日本に行けるか?」と尋ねたはず。その結果、日本に来ている人々なのではないだろうか。

彼らが日本で様々な知識や技術を得て、日本を好きになること
彼らが自分の文化や習慣に誇りをもって、日本で暮らすこと
日本で健康に暮らし、いつか母国に帰ること

その手助けがしたい。

全員が高い志をもって日本に来ているわけではないかもしれない
全員が母国に帰るわけではないかもしれない

でも彼らのなかに一人でも二人でも高い志で日本に来て、いつか自分の国で自分の国の人々のためになにかを変えたい、そう思っている人がいるならば、彼らの想いを共に叶えたい。

彼らが日本で病気になったり、文化を否定されたり、貧困で苦しんだりして志が途絶えてしまうなんてもったいない。

@saboy08さんのツイート: https://twitter.com/saboy08/status/1132588550149484544?s=09

こんなことが平然と起こってしまう日本。変えなきゃいけないこと、変えられることがたくさんある気がしている。

日本で看護師として在日外国人の患者さんと関わった経験
アフリカで外国人が支援すること限界を知った経験
アフリカで一人外国人として、マイノリティーとして暮らした経験

国際協力への想い
母国である日本社会への想い

医療人類学、文化人類学、社会学、宗教学への知的好奇心

経験と想いが合致するフィールドは“在日外国人への医療支援“なのかもしれない

まもなくザンビアに来て4か月が経つ。
24分の4が過ぎた。
みなが口をそろえて一番長かったという期間が終わろうとしている。
きっとあっという間に1年がたち、2年がたつ。
きっとあっという間に次の選択のときがくる。
この2年間アフリカで見たこと、感じたこと、学んだこと、それらをどう活かすか、どう活かせるか。

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