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有料ライブ配信、今度は演劇 vol.2


前回に続き、演劇のライブ配信についてです。

それぞれ、観せ方からして対照的なアプローチで、
同じ日に観ることができたのは、とても貴重でした。


今回の1本がこちら。
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シアターコクーン・ライブ配信『プレイタイム』

原作:岸田國士「恋愛恐怖病」ほか
構成・演出:梅田哲也
演出・美術:杉原邦生

出演:森山未來、黒木華、北尾亘
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冒頭、セット裏の設備やライトや奈落、楽屋フロアなど、
普段見ることのできない舞台裏の様子が映し出され、
その後は舞台上の、たち働くスタッフや、
最終調整中(?)に見える役者たちを捉えます。

ドキュメンタリー映像なら「開演前」となりますが、
そこは配信、すでに作品として始まっています。

やがて開場する際には、オーケストラピットの音も相まって、
あぁ〜劇場再開か〜と、気持ちが高まりますが、
距離を保って座る、客席の疎らさから、
コロナ禍という現状を突き付けられます。

そして幕が開き、お芝居自体が始まりました。
岸田國士の戯曲「恋愛恐怖病」。

友人関係の男女が、それ以上の関係に踏み出すか…?
そんな心理の駆け引き、言葉の応酬が続きます。

言ってしまえば、めんどくさい人たちだな〜
付き合っちゃえば?勢いも大事だよ??
というのが、まずは最初の感想です。
恋愛というのは、頭でするものでないよ〜的な。

でも、彼らの細かい理屈や分析や検証の中に、
もっともな側面もあるにはあって、
恋愛時の自分と向き合う時、知っててもいいよな、とも。

なぜなら、時として、それが本当に愛なのか、
例えば欲望なのか、見栄なのか、依存なのか、勘違いなのか、
自分でも判然としないまま、突き進んだり流されたりして、
ひどい経験をした、という事態もあるわけなので。
(それも含めて、恋愛なのかもですが)

まぁ恋愛は、頭使いすぎても、勢いに走りすぎても厄介。
自分の深い所で、自然に沸き起こる感情に正直になって、
成就するに越したことはない、と思います…

あとは、個人的に感じたカメラワークについて。

この作品では、カメラが常に移動していましたが、
それ自体が悪いとは思いません。
意図がハマれば、むしろ面白くなるでしょう。
ただ今回は、なぜこの構図?と疑問が湧く画がありました。

私は演劇を観る際、できる限り全体的に観察したり、
些細な事でも楽しみたいタイプです。
役者が捌けたり登場する時の気配も、感じたいです。

そんな、舞台上の最低限の情報を、
オンライン視聴者が、まずはしっかり観られるような、
カメラワークをお願いしたかったのですが、

表情が見にくい構図や、画が不安定に揺れたり、
また、セリフの応酬が盛り上がっている場面で、
なぜか視点が、役者以外にフワッと移動したり。
それで集中が途切れることもありました。


そして、お芝居のラストシーン。
舞台上に森山未來、高い位置の足場上に黒木華がいて、
その間の空間を、白い砂が一筋に落下するのをライトが照らし、
背景の扉が開いて、外の現実の風景が見えてきた場面。

役者の演技力と演出で、十分に見応えあったでしょうに、
カメラが舞台後方を動いている間に、
オンライン視聴者は、その瞬間に発生している、
息遣い、波動、世界、その大半を逃しました。

もしかしたら、舞台作品自体の外側である、
カメラの存在に気が散ってしまったことが、
多少関わるかもしれないのですが、

この構成であれば、ライブ配信である必要ってあるのかな?
ドキュメンタリー映像でもよかったのでは、
という疑問が残りました。

演技やお芝居自体は、本当に素晴らしかったので、
いつの日かナマの舞台で観ることを、心から願いました。

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