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今日会いに行きたい!気になる土偶#048千葉市埋蔵文化財調査センター

博物館で土偶を見ていると、思わずくすっと笑ったり、何々と身を乗り出して凝視したりと、いつも見れば見るほどその愛らしい姿から目が離せなくなってしまいます。
そしてどんな土偶も「カワイイ」と思うのです。

「カワイイ」は世界で通じる日本語の一つです。
キティちゃんなどのキャラクターがその始まりとも言われ、その後はアニメや漫画、ゲーム、音楽、ファッション…と次々世界へと発信され、今や国境や文化、人種、ジェンダーを超えて日本の〝かわいい文化〟はすっかり浸透していますね。

そこには人の数だけ〝かわいい〟が存在していています。
ちょっと不細工だけど可愛い「ブサカワ」、
ちょっと気持ち悪いけれど可愛い「キモカワ」などの言葉が生み出されたように、〝かわいい〟には一言で言い表せない大きな意味が込められているように思えます。

さて、今日の土偶
ケースの中からこちらを見ています。
「…………………。」
いつものように「カワイイ」が咄嗟には出てこない、
なんとも言えない違和感を持つ土偶です。

千葉県内野第1遺跡 / 千葉市埋蔵文化財調査センター

縄文時代後期末~晩期(今から約4000~2400年前)に作られた思われる土偶は、「みみずく土偶」が変化した形のようです。

「みみずく土偶」は、縄文時代の後期末~晩期にかけて関東一帯を中心に作らた土偶です。
頭部の突起が3つ、顔の輪郭はハート形、その中にある目や口、そして耳飾りと思われるものが〝同じ〇〟で作られているのが大きな特徴です。
「みみずく」とは鳥のミミズクのことで、明治時代の好事家たちによって名づけられました。

埼玉県真福寺遺跡 / 東京国立博物館

今日の土偶は代表的な「みみずく土偶」とは随分違った形になっています。
そこには時間の経過や伝わり方によって当初の形が少しづつ変化していき、時には他の地域の土偶の要素が加わったり、作り手が独自の創造性を加えたことなどがあるようです。

先ず目につくのは、頭の突起物が随分と小さくなっていることです。突起というよりもウエーブがかかった髪型のようにも見えますね。
代表的なミミズク土偶の特徴に〝3つの突起物〟とありますが、時代が進むにつれて徐々に〝2つの突起物〟へと変化していきました。この土偶はそれがさらに変化したのかもしれません。

顔の形は〝円形〟。
頭の突起と同様に、顔の形も時代が進むにつれて「ハート形」から「円形」「楕円形」へと変化していきます。

左の土偶は顔が割れてしまっていますが、
ミミズク土偶の特徴は忠実に保っているようです。

そして違和感の一番の原因は、
みみずく土偶の最大の特徴である目、口が〇でないこと!

あたかも人間を模したような
こちらに何かを訴えている様な目、
何かを言いたげな口元は、
コミカルなみみずく土偶とはまるで違います。

耳飾りは無くなってしまったのでしょうか?
体形もミミズク土偶とは大きく違うようです。
ここまでくるとミミズク土偶とは全く違う〝進化系〟の土偶と言ってもよいかもしれませんね。

ちょっと不気味にさえ思えた〝今日の土偶〟ですが、
よくよく見ると、私に微笑んでくれているように見えてきます。
やはり私には愛らしい〝かわいい〟土偶であることに変わりありませんでした。

国境や文化、人種、ジェンダーを超えて、土偶の「カワイイ」が広まってくれることを夢みています。

参考資料
縄文土偶ガイドブック 三上徹也 新泉社 

最後までお読みくださり有難うございました☆彡

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