みゆき

  僕は大恋愛を一度だけした事がある。
自分で言うのも何だがあれは紛れもなく、大恋愛をでした。

5度告白したが大敗し、

その恋は事実上、実ってはいない。だから今日も書くのだ。
地元にいる頃の話だ。

名は みゆき と言う。

初めての出会いは合コンだった。
行きつけのスナックの女に
「合コンやろうよー」と
と申し立てたのが始まりだったと思う。

その女の名は ふみか と言い

高校時代の友達三人を連れやってきた。
僕は自衛隊の同期三人を連れ、
合コンが始まった。


僕は みゆき にひとめぼれした。


可愛くて天然でどこか抜けている。
そんなどこか欠落している彼女に
僕はどんどんと惹かれていった。

その日僕らは散々盛り上がり
それ以降も同様の面々で
飲み会を度々開き仲を深めていった。

僕は当時、他の場では
盛りのついた猫のように
追っては突いてを繰り返していた。
(下ネタです。すいません)

が、その子の前では純粋無垢な
子供の頃のピュアな自分に戻ってしまう。
それがむずがゆく、腹立たしくも思ったが
新鮮だったような感覚も覚えている。

何度かそれを繰り返した後、 ふみか(スナックの女がいい感じになり)と
僕の同期がくっつき

度々、ふみか 同期 みゆき 僕の四人で
呑む様になった。

何度か呑み
動物的本能が勝る(突きたい)
僕の性的にも言いたいが先行し

告白した。

振られた。

その後もそんな僕を避ける事もなく
みゆきはいつも通り、変わらず接し僕と呑む。
(そんな所も魅力的だったのだと思う)

他の女性だとそうなれば決まって
「二人で呑もう」
と切り出す僕なのだが、
できない。純粋無垢に還ってしまうからだ。

僕は、
会う度に彼女の魅力に惹かれていったのだ。

2度告白し、振られた後だったと思う。
ふみか同期カップルに相談し
二人の力を借りて くっつけて貰う事にした。

今までで僕が恋愛相談をしたのは彼らが最初で最後だと思う。(そう願いたい)

そして、いつも通り半同棲してる同期カップルの家に行き呑む。

凄まじく怖い映画を仕入れたからとまずは呑み。
四人で鑑賞する。

先手でふみかが対した事もない所で驚き
同期にくっつくき赤ら様に怖いときは男にくっつくものです。
と、植え付ける。

開始30分で同期カップルは居なくなる段取りになっていた。

ホラー映画のお手本に習い、そのホラー映画も
30分、1時間、と
30分周期で山場を向かえる。

その度に みゆき は驚き、僕にくっついた。のだ。
「(よし、作戦通りだ)」と
思いながらも作品は進んでいく。

物語も佳境、最後の被害者が死に。落ち着いた頃、
こっそり手を忍ばせ みゆき が着いている手を握ってみる事にした。

純粋無垢に戻っている僕は緊張もした。
例の通り、こっそり持って行く。

成功。

彼女の手は冷たく柔らかいんだ。

と、思いながら幸福絶頂、嬉しさが勝り過ぎて
エンドロールまでの事は覚えていない。

エンドロールを終え、
みゆき が立ち上がる。

あれっ、手を握ってるのにこっちがホラー映画かなと
思いながら自分の手先を見る。

汗が吹き出る。

僕が握っていると思っていた手は
手ではなくカーペットの断片だったんだ。

何だったんだよ、この時間と思いながら
同期カップルが帰ってくる。

「だめだった」

と目配せし僕は みゆき を家まで送って行く。
送り届け、同期カップルの家に戻り帰路に立つ。

そんな日々が再三にも行われ打ち拉がれ

気づけば、僕もやりたい事が見つかり
上京する事になった。

上京するか否かは みゆき で悩んだ部分も大部分をしめていた。

そして、僕は上京した。

恋い焦がれる、女性を置いて
上京する際には何度も「一緒に行くか」と僕は言った。

彼女は空気を読んでか
「だとしても、後から行く」
と言った。

純粋に嬉しかった。

結果を出すまでは地元に帰らない。
と、僕は決めていた。

だから、  東京に後から来るはずの  

みゆき を 待つ事にした。

上京し、2年が経った頃
自衛隊時代、1番仲の良かった親友が結婚式を挙げる事になり
流石にと思い、地元に帰る事にした。

前乗りし、久々に同期カップルと みゆき と呑んだ。

思いの外、皆酔っ払い。その家で
川の字で寝る事になった。

純粋無垢に還る僕だが、その日は みゆき と寝た。
(寝たと言っても性行為の表現ではない)

同期カップルが同じ布団で寝
もう一つの布団で一緒に寝ただけだ。

同期カップルが寝息を立て僕は

腕を伸ばし、頭を腕でつつく
「(腕枕にしていいよ)」
と、暗黙の了解で彼女は頭を乗っける。

僕はその時ばかりは、ぐちゃぐちゃになる程に  みゆき  を抱きしめた。
酔っていた事もあり


気づくと朝になっていた。

そして、親友の結婚式。

相まって感慨深い。感極まる。

大泣きした。

僕も みゆき とこうなりたい! とも感じた。


その日の帰路、その子と一緒になるために夢を諦め
地元に還ろうとも思った。


みゆき は 同じ中学の一年下の後輩だった。
と、度々聞かされていた。

「実はけっこう会ってたのかもね〜」

とその話になる度に みゆき は嬉しそうに僕にそう言った。


その日は、福岡から(地元、長崎から福岡まではバス)新幹線で帰った。
僕が地元に還り、 みゆき と一緒になる未来をひたすらに夢想した。


名古屋を越えた頃、何故か急に中学時代の塾での事件が脳裏をよぎった。


その塾では、入口で靴から持参したスリッパやサンダルに履き替える。
と言う事が風習でもあった。

いつの日か、いつも通り行くと
僕のスリッパが無い!!

散々探したが無い。

塾の講師に告げると
他の学年の入塾したばかりの子が間違って履いてるのかも。ということで収まった。

講師と共にドアのガラス部分から覗く。

一年生の教室を見渡す。 無い。

二年生の教室を見渡す。 1人だけ見渡す講師と僕に気づく女子が居た。

そして、彼女の足元を見ると
そのスリッパは紛れもなく、イルカの模様が施された、
僕がハワイ旅行で安価なだけで買った、スリッパだったのだ。

それが 最初 の

みゆき との出会いだった。のだ。


東京、品川駅に着き、電車での夢想を踏まえつつ
これが運命だったとしても
今まで以上に努力し、結果を出し、地元に帰ってプロポーズをしようと決めていた。

しかし、中々結果は出せず。

ある日、 みゆき が

Facebookを始めた事を知った。
見てみる事にした。

その、最初の投稿は

結婚の報告であった。

また、僕はいつもの通り


その日は、打ち拉がれた。


くるりの 「東京」聴き

「(また、明日から東京の街で生きよう)」

心に決めたのだった。

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