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Placy - 空きスペースのマッチングプラットフォーム

いきなり何の写真やねんって思うかもだけど説明するので許してください。これはJean-François Batellierという漫画家が1971年に描いたもので、コンバインがパリの古い地域を粉々にして、その代わりに高層ビルやマンションが建てられていく様子が描かれています。 David Harvey先生が最近よく引用するので知ってる方も多いかもしれないす。

Batellierはこの絵を通して、効率化や合理化、経済成長というわかりやすい尺度で開発することの代償に活気に満ちた地域生活が失われているんじゃないかということを訴え、高速道路や高層ビルの建設に躍起になる当時のパリの都市開発の有様に疑問を投げかけました。現代の日本の都市開発の様子を見ていても、考えさせられるものがあるのではないかと思いこの絵をnoteの最初に選びました。

とはいう自分も、そんなことを考えずに都市についてアプローチしている人間でした。自分は大学院で都市解析又は都市モデリングという分野の研究をしていました。世の中に溢れるデータを使って都市を解析、モデリングするという分野で、いくつか例をあげるとすると、

都市の交差点をノード、ストリートをコネクションとするとみんな大好きネットワーク理論を使って都市をモデリングできるよねーってことであったり、

違うアプローチとして有名なのはAgent Based Modelとか。都市にいる人を一つのエージェントとしてモデリングして、そのエージェントとして表される人のパラメーターをイジイジホジホジしてやることで創発というか発現されてくる都市の形状を見てやるといったことができたりします。

こういったものに自分はすごく興味を持っていて、都市ってこんな風にモデリングできるんだ〜。明日、一週間後、もしかしたら一年後の都市の形状を予測できたりするのってすごく面白いなとかと思って、都市のモデリングを専門に扱うイギリスの大学院に進学しました。だけど、大学院に進んだ後、だんだんそのアプローチの危険性というか僕の思考の軽々しさに気づき始めました。

これは僕の大学院の時のコースメート。コースメートというか親友なんですが、毎日週末や授業が終わった後に公園に集まって議論(ビール片手にくっちゃべるだけ)します。何でも話のできる気の合う友人なんですが、彼らはそこまで僕が作っていた"ファンシー"な都市モデリングに興味を持ってくれませんでした。

最初は自分が作るかっこいいモデリングに嫉妬しているんだろうと思ったんですが、議論を交わすうちに嫉妬ではなくて僕がしていた都市モデリング、というか、都市モデリングについて勉強するこのコース自体に一つ決定的なものが欠けていることを彼らが見ていることに気が付いてきました。

それは、「この都市モデリングを何に使うのか。モデリングを使ってどんな都市を作るべきなのか/作りたいのか」という議論や思考が圧倒的に欠けていることでした。誤解を恐れずに言えば、結局この自分が作ってる都市モデリングってやつは、力のあるもの、例えば政府であったりプランナーであったりをさらにエンパワーして都市を思うがままに組み立てるためのツールになってしまうんじゃないかと、そう感じ始めました。

そこから自分は、もう一度振り出しに戻って、「じゃあどんな都市を作りたいんだろう」と考え始めて、今までに訪れて好きだった都市や場所の写真を見返して見ました。

学生時代バカみたいに時間があったので、ヨーロッパやアジア、北南米など、まあたくさんの場所にいっていたわけですが(旅行する度にインスタに国旗絵文字貼る太郎じゃないので何カ国行ったのか覚えてないのが悔やまれる)、この写真を見ながら自分が思ったのは、それぞれ違いすぎるんですよね、当たり前だけど。そして、その違いがそれぞれの場所をよくしている。

例えば、写真の真ん中らへんにあるボストンの小道とか、右下端にあるペルーのリマの小道とか、それぞれ「なんとなく」いいんですよね。自分はこの「なんとなく」というのがすごく重要な気がして、都市開発だ、都市モデリングだって、外からの人間にはまぁわからない、地元の人だけが知ってる、この「なんとなく」良いっていうエッセンスが滲み出てるからこそ、そこに訪れた時、あぁ素敵だなって思うんだと思うんです。

この「なんとなく」っていうパラメーターは合理化、効率化、GDP、都市ランキングっていくつメジャーメントを並べても汲み取れない、もっともっと次元数の高いものだと思うんです。「良い」都市っていうのは、プランナーやアカデミアが決めた「一定のクライテリアを超えているところ」ではなくて、そこに住む、それぞの人が持つ「良い」という基準が入り混じって発現している状態だと思うんです。

そういう意味を込めて僕らは自分達のグループのことをcity blenderと呼ぶことにしました(中二病ぽいけど)。単純なパラメータで都市を測るのではなくて、それぞれの人が持つ基準がブレンドされた状態を作ろうよ、って思いを込めてます。(自己紹介で、綜真くんの仕事ってなんなのって聞かれてcity blenderですっていうと、「は?」って顔をされるんですが押し通していこうと思ってます)。

経済成長や効率化といった限られた数のパラメーターに向かって一気に突き進む時間も必要だったと思いますが、もうそれある程度できたし、もう「便利さ」はいいから、都市プランナーは基準を押し付けるのをやめようよってことです。

じゃあ、自分みたいな曲がりなりにも都市に携わっている人間は何もしちゃいけないのか、何もできないのかっていうとそんなことはなくて、自分たちは、都市に住む人が、自分の持っている都市空間の使い方を自由に選べたり、彼らの持つ基準でスペースを「デザイン」できるような手助けをするべきだと思うんです。

こんな思いを抱えて日本に帰ってきて、みんなが自分のスペースを現状どうやって使っているんだろうと思って見てみると、これなんですよね、自動販売機。

本当に多くの人が、自分の持つ空きスペースに自動販売機を置いています。
ちなみに全国で600万台あります。こんなにいらんやろってくらいヤケクソに置かれているを皆さんも見覚えがあると思います。あとはこれですね、

駐車場です。これは僕が住んでる西日暮里という駅から徒歩2分のところですが、夜はいっつもガラガラです。山手線沿い徒歩2分ですよ?高齢化が進んだり、若者の車ばなれが進んでいると言われている中で、まだまだ自分の持っているスペースを駐車場に転用する人が沢山います。

これはなんでかっていうと、別にみんな駐車場が大好きだったり、自動販売機のあの形が好きで、とかいうわけじゃないんですよね。みんなそのオプションしか知らないんです。自動販売機や駐車場の営業がきて、副収入や節税にもなるし維持も楽だからという訳で皆さん、こういうオプションを選ぶ訳です。

でもちょっと待てよと、この2019年都市への一極集中や観光客が爆発的に増えている中で、自販機置いてる場合じゃないだろうと、駐車場にしてる場合じゃないだろうと思う訳です。いわゆるシェアリングサービスみたいなものが台頭して、空いてる部屋があれば、イベント会場や宿泊所になるし、大高さんが作ってるPOPCorn を使えば映画館にだってなっちゃいます。軒先下のちょっとしたスペースもシェアリングの傘置き場にもなるしシェアサイクルのポートにもなるし、ポップアップストアにだってなります。駐車場だって、塩浦一彗らがやってるSampoのクールなモバイルハウスの基地にだってできるわけです。

問題なのはスペースのオーナーが、そういった数多ある使用方法を知らない、または知っていても従来ある自動販売機や駐車場として使用した場合との比較をきちんとできないということなんです。これはいかんだろうというわけで、僕はこの11月からPlacyという空きスペースのマッチングサービスをはじめました。

「Have some space? That’s place.」というのは、あなたは単なるスペースと思ってるかもしれないけど、そこは意味のある場所になるかもしれないんだよという意味を込めています。具体的に何してるかというと、ユーザーの持つ空きスペースを解析して、あなたの場所ならこのサービスが使えるよ。そして、このサービスを使えばいくらの収益になるし、こっちのサービスを使えばいくらの収益になるよといったプレディクションを出します。

出された収益予想も考慮に入れながら、後はユーザーさんの趣向に基づいて使用するサービスを決めてくれればいいと思っています。あー同じ収益だったら、自動販売機より、例えばシェア傘やシェアサイクルのポートとして使って欲しいなって、そのスペースを持つ人がしっかり比較検討できるようになれば良いと考えています。

ビジネスチックな話を少しはさむとすれば、このようなサービスモデルにしているのは、プラットフォーム型サービスに付きまとう、いわゆる「ニワトリタマゴ問題」を解消するためです。つまりUberを作るなら最初にドライバーかライダーを集めなきゃいけないし、Airbnbを作るなら最初にホストかゲストがいないとサービスとして成り立たないよねってことです。Placyは最初からスペースの使用者として既存サービスを紹介することで、スペースのオーナーに登録して頂くインセンティブを確保しています。サービスを考える上で色々な方に話を聞いていただきましたが、特にAnriの中路さんに親身に相談に乗っていただきました。

プラットフォーム型のサービスがコンテンツを自社開発することはAppleやNetflixなど、様々なサービスに共通しますが、Placyも一定数のスペースのオーナーを確保次第、Placy独自のスペース使用サービスをどんどん打っていきたいと考えています。

例えば、また日暮里の話になりますが、駅の周辺にアートのオブジェクトの展示がされています。あれは、区が持つスペースを使って、アートの展示をしている訳ですが、別にそれが民間の人の持つスペースだったって言い訳です。スペースのオーナーが場所を提供して、アーティストが展示料であったり保管料を払うみたいなこともできるよねって考えてます。

サービス自体は、今年に入ってからヒソヒソとコード書いて開発していますが、基本的なファンクションとなるスペースの登録であったり、スペース使用者の検索機能の実装など、だんだん形にはなってきました。興味がある方は見てやってください。https://placy.city/


最後にPlacyの企業理念というか自分の思い的なものを。興味ある方連絡してください。友達欲しいです。


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