ちょっとばかり小さなお尻
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ちょっとばかり小さなお尻

山田ルーナ

お尻が、重い。

必要以上に大きい気がする。

これは私がずっと抱えてきた悩みであり、しかし同時に諦めてしまったことでもあった。

この現実に向き合いはじめたのは、2020年の春。コロナウイルスによる最初の自粛期間のことである。

「意識高い系」などというくくりにしてしまうとちょっとアレだけれど、あの時期おうちヨガを始めたり、筋トレを始めたり、お菓子をつくったり料理に凝ったり、そういう人が増えたじゃない?

…そう、私も 例にもれず「意識高い系」だった。
その期間に、ランニングをはじめたのだ。

もともとスポーツは嫌いではなかったが、飽きっぽい私。ジムもヨガもトランポリンもボクシングも、ウェアを揃えるだけ揃えて辞めてしまったので(費用対効果は毎度マイナスである)、今回もそうなるだろうという一抹の不安を抱えながらも、私は走り出すことを決意した。

ランニングは、はじめるのにお金がかからないのもいい。ウェアだけはたくさんあるのでそれらを着て、私はすでに一丁前な気分だった。


しかし数日ランニングを続けて、私は冒頭の事実に気が付く。

お尻が、重い。

走るには、軽快に走り続けるには、私のお尻は重すぎるのだ。

早速調べてみると、やはり走るという行為にはお尻が重要らしい。お尻の筋肉を鍛えることで、骨盤が安定し、体幹がブレず、股関節の柔軟性が高まるということだった。

つまり、おそらくランニングを続けるには、尻トレが必須ということだ。走るのはとても気持ちがいいから、できれば長くこのスポーツを続けたい。

すると私は、早いところ、このお尻をどうにかしなければならない。


この出来事に前後して、私はあるエッセイマンガに出会った。

つづ井さんという作家のマンガだ。オタクの毎日万歳⭐︎な内容が面白く、またとても共感できるので、私は どハマりしたのだが、その中でお尻にまつわるエピソードがあった。

何かを愛でたいのに、多肉植物などすぐに枯らしてしまうつづ井さんは、それならば自分のお尻を愛で育てればいいのだと、ある日 気が付く。揉み、オイルを塗ると、つるんぷるんと、すぐに反応を返してくれるお尻。美しくもなれて 一石二鳥だし、どんな植物よりも親近感をもてるのでおすすめです、とのことだった。

私は、これだ、と思った。キツい筋トレはきっと続かないけど、これなら、あるいは。

そうして私は、お尻を育てることにしたのだ。


毎晩、お風呂上がりに揉み、このためだけに購入した、良い香りのジェルなどを塗る。

お尻って意外とこっている。数日続けただけで、それはみるみる柔らかくなり、一週間ほどで、ひとまわり小さくなった。

どんどん小さくなるのが面白いし、やはりお尻が軽くなると、動きやすい。減ったお尻で、快適に走り、そして走ることがまた、ヒップアップにも繋がっていた。

次第に私は、走るためのお尻なのか、お尻のために走っているのか、よく分からなくなった。


やがて暑い夏と、束の間の秋が過ぎ、冬がやってきた頃。私の中には走ることよりむしろ、お尻を愛でる習慣の方が、すっかり染み付いていた。

そして雪がちらつく ある日。私はついに、ランニングウェアに着替えるのをやめ、走らなくなってしまった。

しかし当初の目的は失っても 私はお尻を愛でつづけた。


2021年春、現在。あれからおよそ1年。

私は何故だか、ちょっとばかり小さなお尻を手に入れていた。トレーニングをしているわけではなく、ただ毎日愛でているだけなので、「ちょっとばかり」だけれど。

スポーツをきっかけに(?)手に入れた、ちょっとばかり小さなお尻。

きっとこのお尻が、私のスポーツを、再びアシストしてくれるだろう。

美しい5月、外は爽やかな良い気候で、もう走らない言い訳はどこにもない。

さあ、準備は整った。いまこそ もう一度走り出すときだ。

(よーい、どん!) ああ、私は今なら、身体も、心さえも軽やかに、のびのびと、どこまでも走ってゆける。今のこのお尻なら、きっと・・・

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山田ルーナ

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山田ルーナ
フリーランスのライター / ピアノ講師 です。画家の夫と猫と暮らしています。わたくしごとを載せていきます。