ミカンと物々交換

セブンルールという番組がある。

わたしが好きでよく観ている番組だ。

簡単に内容を説明すると、一人の一般女性にスポットを当て、その女性が自分の人生を生きる上で大切にしている7つのルールをVTRで紹介していくという番組だ。
一般女性というのは様々な方が居るのだが、“自分の生き方に誇りを持ち、楽しく働いている人”というのが大前提としてあるようだ。その職業は多岐に渡り、大会社の社長だったり、エキストラ俳優だったり、パン屋だったり、味噌を売る人なんかも居た気がする。まぁとにかく色々な仕事があるのだな、と知れるだけでも面白い。そしてこの番組を見終えた時には必ず、「わたしも好きな事を仕事にしたい!」などと思ってしまう。
番組の思惑通りの視聴者である。

先日放送された内容が、みかん農家で働く女性の話だった。非常に味のあるいいVTRで、じんわりと胸に響く良い内容だった。みかんの木を人生に置き換えて話してくれたところは特に良く、彼女曰く「人は頑張っている人とか、素晴らしい事をした人をスゴイと思いがちだけれど、実がならない枝にも役割はある。なんの役にも立たない人など一人も居ない」と。自然の中からその様な壮大な考え方を得、心豊かに暮らせているのだそうだ。
非常に心打たれる良い言葉だった。

そして、この番組のもう一つの面白いところはVTRを見終えたスタジオの面々の率直な感想が聞けるところだろう。現在の面々は、タレント、俳優、小説家、元アイドル、ミュージシャンと、これまた多岐にわたっている。多方面からの見方がまた面白かったりするし、肩書きを取るとただの女と男になるのでそれもまたいい。(正直に言うとこれは第二期のメンバーで、わたしは第一期のメンバーが非常に好きだったので現在のメンバーには物足りなさを感じている。余談ですが)

VTR中に、田舎の人たちは物々交換をする、というシーンがあった。みかんなどの農作物は豊作だと近所に配って廻り、そのお返しに木で掘った手作りのスプーンや、お手製のジャムなんかを貰ったりするのだそうだ。

それを受けてスタジオでは、自分たちなら物々交換に何を渡す?という話になる。

この話題の運びがわたしにはとても面白く感じられた。

小説家がミュージシャンに向かって、「あなたは歌を歌ってあげられる。羨ましい!」と言うのだ。そして今度は俳優に向かって問いかける。「あなたなら何をあげる?演技してあげるのかな」

わたしは考える。
「わたしなら何をあげられるかな?」

これって、今あなたが持ってるものなに?って質問なのだが、これと似たような質問で、例えば
「得意なことは?」
「人に自慢できることは?」
などというものがあるが、こう聞かれるとちょっと一瞬迷ってしまう。得意と人に言えるようなものは無いし、好きなことはあるけど自慢できるほど上手くはないし、、などと考えてしまうだろう。

ところが、
「物々交換で何をあげる?」

だとどうだろう。もう少し気軽に自分の引き出しを開けられるような気がしないだろうか。

「じっくり話を聞いてあげる」
「ベランダにあるトマトをあげる」
「絵を描いてあげる」
「一緒に昼寝してあげる」

もしもこんな答えが返ってきたら、ちょっと人間性が垣間見えて面白いじゃないか。その人がどんな人なのか少し見えてくる、いい質問だなぁと思ったのだ。

貰ったお礼にしてあげられることって、些細なことで構わない。相手に何かしてあげたいと思うその気持ちが大切なのだ。そのように生きていけたら自然と誰かの役に立てているのではないだろうか。そのような考え方がいずれ枝を太く強くし、実をつけて美味しいミカンになっていくのではないだろうか。
そのように感じた放送だった。

コロナが落ち着き、友達に会えるようになったらわたしも聞いてみたいと思う。それでどんなものをあげようかと一緒に考えたりしたいと思う。
その時は、わたしなら、その人に似合う服を作ってあげる、と答えるつもりだ。

あなたは物々交換で何をあげますか?

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