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美を追い求める男たち

たまたま視ていたテレビで男性のメイクについて放送していた。
コロナウイルスの流行のせいでマスクをするため、女性のメイク品の売り上げが減少する中、zoomを使ってミーティングするようになり、PC画面に顔がアップで映り、肌のコンディションが気になるとかで、スキンケアのみならず、コンシーラーやファンデーションなど、男性用のメイク品の売り上げが延びているのだとか。
美のカリスマ、EXITのりんたろー。もスキンケアやネイルなど自分を美しくすることに余念がない。
見よ!リップをつけるこの真剣な眼差しを!
美しい横顔を!
はぁ、うっとりしちゃう、、、

あ!失礼。つい見とれてしまいました。

男だってそりゃ、ワイルドな俺様になるために前髪をつまみながら眉間にシワを寄せたりなんかしながら鏡に向かいカッコ良さを追求している。
イギリスのグラムロックは海を超えジュリーにも多大な影響を与え、日本の歌謡界を華やかなものにした。
ヴィジュアル系バンドマンは自分達の音楽の世界観を演出するために独自のメイクを施しファン達を魅了してきた。
しかしそれとは違って男性でも(でも、という言い方がもう古いのかもしれないが)女性にモテたいというだけではなく、自分のために美しくなりたいという気持ちがあるものなんだなぁ、と、スキンケアにもメイクにも無頓着になってしまった私は全く他人事としてテレビで紹介されていたメイク用品を選ぶ男性たちを見ていた。

他人事、、、他人事?
いや、かつて最も身近に美を追求した男がいた。

それは、我が父だ。

ずいぶん昔のことで、どういうタイミングで見たのかすっかり忘れてしまったけれど、実家に父が写った白黒の、ちゃんと写真館で撮った表紙のついた古い写真があった。
それは当時の父よりかなり若い頃のものだった。
母は「こんな写真なんで撮ったの?」って驚きと笑いとからかいが混ざった言い方で聞いた。
そりゃそうだ。
そこに写っていたのは化粧をして日本髪結った(もちろんかつら)和服姿の父だったのだから。
父はふざけて撮ったと言っていたけれど、ふざけて撮るレベルのそれではなく、結婚式とまではいかないけれど、成人式で振り袖を着た女性レベルのもの。
女性がするより男性の顔を女性に近づけるためのものだからメイクは成人式以上かもしれない。
おっさんの女装ではあるけれど、娘の私より、岡村孝子さんに似ていてそこそこ美しかった。

しかし、考えてみれば多くの生物はメスよりオスの方が美しい毛皮や羽根、鱗を纏い、その美しさを武器にメスを惹き付けてきたわけで、男性のメイクはむしろ生物として原点に回帰しているのかもしれない。

いや、でもやっぱり、女装は意味が違うけど。

今、娘の成人式を控え、ヘアスタイルをどうするか、着付けや写真撮影をどこに頼むか、前撮りはいつにするか思案中なのだが、女装の和装を写真館で撮影ってかなりの意気込みがないとできないと思う。
どんな気持ちで撮影に至ったのか知りたいのだが、あいにく父は他界してしまったので真相を確かめる術はなくなってしまった。
しかも、残念ながらそのとき以来その写真は何処へ行ったのか見当たらず、遺品の中からも見つけることはできなかった。
父が自ら処分してしまったのかもしれない。
昭和一桁生まれの父、多様性が認められつつある今に生きていたらもっと自由にメイクしただろうか?

私はあなたのおかげでメイクや女装をする男性を抵抗なく美しいと思えます。
ありがとう。

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