青い猫喉に入る。

朝起きると喉奥から猫の顔が見えていた。どうやら寝ている間に青い猫が僕の口の中に入ってきたらしい。聞いたことのない話だったので初めは動揺した。
しかし、猫はそのまま出てこなくて10年がたった。もはや私の身体の一部となっていた。猫は時折私のお腹の辺りでニャーと言ったりしている。ごくまれに私の喉から手を伸ばして口を開かせ、机やご飯の入った食器を触るといった規則性のないことをしていた。
ある日、帰路についていた途中吐き気に襲われ、電柱に向かって吐き出した。すると口の中から青い猫がにゅるりにゅるりと出て来た。胃液と食物にまみれたその姿を私は初めて見た。一般的な猫にしては随分と小さい。猫は身体を震わせて胃液と食物を振り払った。
吐しゃ物がいくつか残念なことに私の服の裾についた。猫は身体を伸ばし頭上に広がるどんより雲の暗い夜空を見上げるとどこかへ行ってしまった。
一週間後、また猫が寝ている好きに口の中に入っていたようである。朝目が覚めると、
「にゃー」
という声が聞こえた。私はこの猫が分からない。だがしかし、長い付き合いになりそうだとその時にあくびとともに感じるのであった。


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