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エッセイ

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#小説

五反田アイリッシュコーヒー

五反田アイリッシュコーヒー

村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を読み返すとふとあの人は生きているだろうか、と思う人がいる。大学で日本文学を教えてくださったO先生のことだ。

文学部の学生はいちばん初めに習うことがある。
それは、「純文学とは作者が意図的に作品を作っているものだ」という掟。
灯台から射すライトが決して消えないように、文学を扱う者の心得のように何度も繰り返し教えられた。

「純文学というものはすべての事柄を作者が

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カントリーマアム以上、ビターチョコ未満

カントリーマアム以上、ビターチョコ未満

高校生のわたしは3年間、世界史の先生に恋をしていた。

どうにかこうにか気を引こうと勉強をがんばったり、用もないのに職員室に足を運んで適当に質問を作って先生に話しかけたり、先生との話題作りのために歴史モノの映画を半分眠りながら深夜に観たり。
スパルタクス!ベンハー!クレオパトラ!

ヘアアレンジは得意じゃないから、できて三つ編み。なかなかにいい感じにできたので放課後の職員室で先生に話しかける。

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アルトの餡子はいかが?

アルト一筋、39年。
いや最近は合唱なんてものはてんで関わっていないけれど、小学校の頃から音楽のパートは必ずアルトに割り振られた。

むかしから野太い声をしていた。今だって高い声で歌うことなんぞできやしません。
今でもカラオケで女性ヴォーカルの曲を歌うときには3つ4つ下げて歌っている。そして音が取れずにふわふわと音を探りつつ迷った歌い方をしたりね。

ところで学生時代のわたしは何かにつけて不満が多

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【エッセイ】◯◯じゃなきゃダメみたい

【エッセイ】◯◯じゃなきゃダメみたい

「月刊少女野崎くん」というギャグ漫画があります。

主人公千代ちゃんの想い人の野崎くんは、
男子高校生にして月刊少女漫画雑誌に連載を持つプロの漫画家で、ゴリゴリの恋愛漫画を掲載しています。(しかも本人は初恋もまだとのこと)

「月刊少女野崎くん」ではそれぞれがそれぞれに恋をして、毎日どったんばったん大騒ぎするギャグ漫画です。
ふつうにコーヒー吹くレベルの高度ギャグ漫画なのですが、いままでに何度

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