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短歌100個

■中学〜高校時代
クラスから浮いてる奴を懇(ねんご)ろにしてる自分は少しヒーロー
あいわずぼーん正真正銘受け身型 生まれたかったわけじゃないのに
この川の水はどこから海になる海になる瞬間の塩飴
頭いいくせして「ョ」と「ュ」間違えて笑われている顔が眩しい
ほの香る色のついてる男の子ワックスのコツ掴んで六日
まだみんな同じ曲で恋してた二〇〇八年からの年月
死んだ歌手に似てると言われ もしや「死ね」って意味かと不安で死にそうになる
僕の泣き顔を主食として生きる人から順に死にますように
8:30君の席だけ空っぽで今日一日がさっそく枯れた
太陽と学級委員の顔を見て早退します さよなら社会
my age知らなきゃ今日を生きるだけ 人間だけが気にする未来
災害のニュースを見ると死にたさが緩む誰かの命のおかげ
おばさんの駆け込み乗車の成功を見届けてから上る階段
雪の日は自殺者が減るから晴れを「いい天気」とは名付けたくない
先輩が十五歳だったあの恋が 恋の中では一番好きだ
風呂上がり髪も乾かさずにLINE返すとそろそろ風邪引く季節
「それ以外できないだからそれしてる人」で世界が成り立つように
周りとは違う種類の優しさと誠実さなら持ってるはずよ

■大学一〜二年
買いたての一眼レフの夜モード使えずぶれるシーでの写真
デートならSNSに載せないがこれをきみは何ととらえる
雨の中 私たちのためだけに揺れてた ただの隅の街灯
床で寝始める君の誠実さに 逆に心が戸惑いはじめる
「次敬語使ったら罰ゲームね」と新たな暮らし始まる予感
0時過ぎ二人でアイス買う夜が夜の中では一番好きだ
ただお風呂が広いだけの下手くそな愛痛かった大学駅前
君が寝るまで眠らないことにより 世界の悪から守れる気がした
寝不足に任せて生み出した詩(うた)が僕の知らない僕として居る
私だけがいない世界が描かれた青い鳥鳴く四つの小窓
大丈夫、大丈夫じゃない、繰り返し 三途の川で足湯している
雨降りは何もせずとも許されるような気持ちになるから好きだ
秋になりかけの夜を歩くとき 世界にひとり取り残される
開封済コンソメパンチがたちこめて 眠りに落ちる1Kの人

■大学三〜四年
愛をしてわたしに流れた心水 最後の一滴まで飲み干した
終電を逃したい気持ち透けるシャツ氷がコロンと鳴ったら合図
「好きじゃない」と思いたい時すでに遅し 決まったレールを歩いてるだけ
耳の奥なでるみたいに呼ぶ声が声の中では一番好きだ
シャッターの間に合わなかった瞬間よ 嬉しいときってなぜか泣いてる
「好きだよ」と「好きじゃないならこんなことしないよ」の間で寝そべるあそび
産道を通った者に愛着がわく仕組みによる偽の愛情
メンヘラでメンヘラホイホイでメンヘラホイホイにホイホイされる奴
横で寝る天使と予定のない午後だ してみたいことはたくさんあるよ
エアコンの部屋で毛布にくるまって君の寝顔を上から見てる
名前のない関係こそが本物か?受けとめきれないまだ青い人
僕ら以外全ての人は僕達を恋人として見ているのにね
「好きです」の返事が「ありがとう」だった 目の前で分かれゆく風の音
深海にしか生きられない人間が住む水族館ツイッタランド
切なくなるために生まれてきた二人 宇宙の底で静かに寝込む
耳寂し このまま寝るわけにもいかず聴き古したYouTubeと添い寝
名前のない関係だけどあの子より君の本音の近くにいたい
掘り出した一眼レフのSDの付き合う前の笑ってる人
ハイウェイのバスが一両編成の電車に見えた終電のあと
君が置いていったスウェット着て一人
電動自転車の漕ぎ出しのような勢いだけで一緒にいたね
付き合った実績のない恋仲のこの人をどう飲み込めばいい
寝不足が七日続いた君に「好き」と言うからバグで「好き」と返して
心水 僕に流れてまたあげて飲ませ合ってた暮れの明け方
残飯と私から出た液全部 笑顔で含む人が好きだよ
もうだめだ、悪口とエロの話しかしたくはないし、督促来てる
ゴミ捨ての分別わからず四年間ゴミを溜めてた みたいな人生
アングラとピュアな気持ちが混ざってるロールパンナの人間ver.
明るさの全てが敵に見えるから あと二年くらい夜に生きたい
差し伸べた手の持ち主の大きさにおののく助けが必要な民
お別れもできずにここから消えた人 記憶と夢の中では優しい
かわいそう選手権の優勝者 優しくされるチケットもらう

■社会人一〜三年目
「まだ若い」慰められた新卒の夢のゲートが閉じるのはいつ
「心臓が白い私は特別」と思いたいだけの平成初期人
駅裏の油の乗ったぬるい風 あれで倒れるレベルの虚弱
グリーン席買っときゃもしも落ちたって自殺と処理されずに済むだろう
コンタクトの液の場所をカップルに教える夜勤のコンビニ店員
夜中ビジネスホテルからコンビニに行くまでの道 自由のすべて
十一時チェックアウトの宿が好き 十時の宿の予想の遥か
病んでいる君に「いいね」をするだけのさすらいの僕 卵のアイコン
秋風で彼氏が欲しい気になってスワイプの愛 探す週末
花が予想よりも早く枯れたのは自然に値段をつけた罰だよ
僕の住んでたアパートのベランダに知らない人のパジャマが並ぶ
懐かしいたばこのにおい追いかけて見つけた光スワイプの愛
エアコンの部屋より実は外の方が涼しかったと気づく秋口
大学の頃に住んでたあの街が街の中では一番好きだ
別の人 来るとき一応枕カバー洗って新しい顔で待つ
「ごめんね」と飛び降りた人は高級でフカフカな羽の上で眠れる
「きみ」と「きみといた時間を思い出すこと」のどちらが好きか分からずにいる
間違えて自殺と処理されないようにKIOSKの横 寄りかかって待つ
「君かも」と思った人がただ単に猫背の人で少し笑けた
虫刺されくらいで皮膚科に行くような君の薬に僕はなりたい
適当に作ったふりしたものは昨日から仕込んでた 素直になりたい
母が母になった年齢追い越したコンビニ帰りの天仰ぐ我
「タイプではないけど結婚するならこの人」の彼女 死ぬほど美人
二夜連続夢に出てきた昔君 別れた道の果てで待ってて
「友達かも」に出てくる君を「友達」にも「削除」もできず繋がっている
英国の有名な曲のjazz ver.流れる喫茶 くつろぐ営業
何歳で人生に差がついたとき 何かになるのを諦めたらいい
カウントダウンがないだけであれは3、2、1、の1だったさよなら
荷物もちがいなくなった一人旅はすごく重い これからずっと
かつて愛くれた男の人と寝る 結婚式まで日替わり七日
綺麗でも真面目でもなく正しくもない話から作ったお酒
恋バナの高校生に懐かしさ覚えて我の在りし日疼(うず)く
誰かしら誕生日だった気がしてる 深く愛したはずの誰かの
昔から避けてたものに「密」という名前がついた幻の夏
大浴場すれ違うときお辞儀する 意外とこの後刺されるかもね
黒色は光(しあわせ)集める力あり 喪服の私 未来に乾杯

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