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牛肉、食べませんか?千葉の畜産業の現状をお聞きしました

コロナショックによる経済的打撃は業界を選びませんが、畜産業も深刻な打撃を負っています。しあわせ絆島田牛プロジェクトで牛を育てている私も他人事ではありません。

千葉県の農業関係者の方々は、去年の超大型台風によって大きな被害を受けました。少しでも助けになれればと島田牛プロジェクトを開始したわけですが、コロナショックによってまたしても大きな苦難に直面しています。

まずは、いま畜産業に携わる方々がどういった状況なのかを正しく知ってもらいたい。そこで、千葉県をはじめとした東日本の生産者有志で構成される団体、東日本産直ビーフ研究会会長の岩渕一晃さんにお聞きしました。

牛肉相場は半値になっている

岩渕さん:今は、外食産業が止まっていますよね。高級な肉はやはり外食で消費されるケースが多いんです。そして、海外との人の行き来がなくなることでインバウンドの消費も落ち込みました。ステーキやしゃぶしゃぶ用の牛肉価格はかなり下落し、現在は通常の半値程度で取引されています。

インバウンドといえば、東京オリンピックでの消費も見込んでいました。子牛を多く仕入れたり、生産計画を立てて準備をしていた畜産農家も多い。80万円で子牛を仕入れて、もうすでに半値になっているケースもあります

緊急事態宣言の前から相場は下がってきていましたが、そこからもじわじわ下がってきています。国からの補助金をいただいても、ここからの経営は難しい部分がありますね。

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牛に愛情を持っているからこそ、今の状況はつらい

これからの収入に不安を持っている方は多いでしょうから、やはり最初に削るところは食費なんですね。値段の高い牛肉は敬遠されて、逆に豚肉・鶏肉は消費が伸びている部分もあります。さらに消費が落ち込めば、究極の話、保存しきれない牛肉を廃棄することになるわけです。

牛は生き物ですから、消費が少なくなっても、すぐに生産量を減らすということはできないんです。全国の屠畜場では、冷凍在庫を増やさないために屠畜制限がかかっているところもあります。

とはいえ、生産者としては、屠畜を遅らせることで歳を重ねて足腰立たなくなった牛を出荷することは不本意です。牛たちに愛情はありますが、だからこそ、経済動物として一番価値のある状態で出荷してあげたい。そしてみなさんに喜んでもらうことが、牛のためでもあると考えています。

畜産業の現場から、みなさんにお願いしたいこと

生産者としてお願いしたいのは、シンプルにみなさんに牛肉を食べてもらうことです。あくまでも人間側の都合ではありますが、最もいい状態で美味しく食べてもらうことが牛にとっても一番良いと思うんです。

新型コロナ蔓延の状況を考えれば、牛肉の価格が下がっているのは仕方がないことです。だからこそ、手に取りやすい価格で親しんでもらうチャンスでもあると思っています。外出自粛のストレスを解消するためにも、金銭的に可能な範囲で美味しい牛肉を食べていただければ。

酪農に関してもそうです。学校給食は、日本全体の牛乳消費量中1割程度を消費しています。学校が休校になっている現在、在庫が余っているという報道も多く出ていますね。雌牛は乳を搾らないと病気になってしまいますので、牛肉同様すぐに生産量を減らすことは出来ません。チーズやバターなどに使用する加工乳としての出荷になると値段は多少下がりますが、もちろん廃棄するよりは良いです。

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コロナ後の畜産業について

畜産は家畜を揃えることと、設備投資両方に大きなコストがかかりますから、新規参入は難しいと言われてます。そして、リスクに対する利益はそれほど大きくありません。去年の台風による被害もありましたし、今回のコロナショックも重なり、畜産業者が離農するケースがどんどん増えていくことが予想されます。

「なんで、儲かんないのに農家なんてやってんの?」と言われることも多々あります。モチベーションは「自分たちが頑張ることで、みなさんが喜んでくれるから」に尽きます。だからこそ、ここで踏ん張りたい。

今後も大きな災害は永遠になくなるということはないわけですから、我々も変化していく必要があると思っています。オンライン会議なども導入し始めましたし、牛肉の市場(競りの場)など、そういった場所でもオンラインシステムを使うケースが出てきています。それ以外にも、やれることはなんでもやっていくつもりです。

新型コロナの影響で外回りが減り、小学生の息子と一緒に牛の世話をする時間が増えました。彼にとって、これも大事な経験だと感じる部分もあります。良い形で我々の仕事を次代へ受け継ぐためにも、今が変革のときなのかもしれません。

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