ひとつの遊び

ひとつの遊び

いのちの順番を数える口唇が行列の先の先の先の先の
順番を並べ違える大母の悲しみの腑分け海への遡源
誤読するような月夜の皿の上の魂はときに名前をもたない
道の罪を頭蓋を押さえトリガーへ指を差し入れ塔が崩れる
譲歩され整えられる距離にだけ道はあなたの添付を許す
水だけで大丈夫ですの触れ込みを連れ帰っては名前をつける
咳をする投薬をする瞬きのその度いつも小石を投げる
長靴のひとは言葉をもてなくて豚は花びらの耳を震わす
いちばん最後に洗われるからだおのおのが殺されるための耳介を覚える
細胞のひとつひとつに映り込む逆さの文字がわたしを殺す
いまのからだになる前のこと細いひもをつまみ出すよう夜を失敗(しくじ)る
無花果を捻じ込まれては満ち欠けのやや不規則な月のものが来る
冊知挨冊冊戮観冊診冊冊傷冊害暗冊表冊
詩集を露骨に/重ねて重ねて重ねて歌人の子宮と比較している
トレーシングペーパーの向こう化粧する脾臓がしゅるしゅる笑って答える
水浸しの駐車場から浜名湖へ目をこらしては丘のような肌
天井へ大きく口を開けたまま(翼竜を)つぎ濯いでください。

と、白井健康は言った。
#短歌

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