短歌的実験(7)

短歌的実験(7)

駅員も椅子職人も永遠をつくりはしない、ましてや詩人も
妻は捏ねて捏ねて捏ねて子をつくりサラマンダー(火)に焚べてはきれい
心臓が迫害される冷え切った部屋で蜥蜴のままで寝返る
映写機の父はひかりに動きだすきりぎりすきりぎりす切り偽りス
他所の家の匂いの犬について行く転がる柚子に母性は宿り
重なったときのあなたのあこがれに譲ろうとする影のかたちよ
畳への愛撫を遠い未来雨をわだつみの無人島の約束
 笑い
へらへらと破れる出口をつくりつつ清潔でない息を送った
うすやみのマスクのように均されて黙っていろと難破する鳥
鏡には映りこまない心情を責められる神を盗み見たため
多すぎるひかりが雨に洗われる人間の屑であるかのように
秘密がレエスの向こうに羽ばたいて永遠不滅の乳房を見せあう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?