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白井健康
2020年1月31日 11:06
短歌的実験(5) 風景の骨として上下する、いつも、からだを揺らす水平線が切り取った人差し指の腐敗する時間は青く魚群のように落下する少年少女、海遊は「盲目駅」へとふたたび戻る水の中で花はつぎつぎ燃えはじめ罪状だけが燃えずにのこる海岸で拾った骨の潔さ詰めたらきれい、恋人がいた夜間飛行する蝶の話を始めよう罪人として生まれて消息は途絶えてしまった裏庭を掘り進めればガラスの破片孵化をした満
2020年1月29日 12:37
短歌的実験(4) 素性の知らぬ背骨をすっとなでるとき感情論は火事の話に円筒形の器にふたつ穴を開け心臓が土になるのが最後で首筋の影を擽る舌先の瓢塚ひとつ肌が冷たいおんなと一緒に患部のなかに蕩けては秋の写真が黄ばんで写る筐体の壁をすべすべに磨き上げ蜜蜂はとまることができない閂はスポンジ状に、表までよろけるように、蕩けるパドックベランダからの海、靡き寝の切れ端が盗んだことばのように吹かれ
2020年1月23日 12:03
耳のなかの海 まだ海を知らない山羊が午後二時のプールに肩甲骨を浮かべたやわらかい海を包んだ赤玉を終わったからだの膝に並べるづがいこつまだやわらかいころだったそらへ吹かれるあかいセロファン海のない船着場からふるさとの夜を通って花弁に触れるひるま食べた果実の匂いをさせながら地肌の翅が海へと曲がる転がって転がりつづける思い出が凹面鏡のなか(ゆるされない、される一ツノ沈黙シタ火事ヲ愛シテハ
2020年1月19日 13:26
実験的短歌(2) こにこに そこにこ にほいあい ほのかに ほのさきつきの やみのほたるのもひやけのしりしりさしり島のこと鳥しふるあめのさとふるゆきの ひとではないひとのしぐさがひとらしい紅いたまごを飲み込む母は半島のうらがわの胸のあたりまで鳥の遅刻のかかわりあえばひとの家の匂いは渦巻貝のなか岬のさきへふたり曳舟まだ眠る喫水線の上下する体液はすこし濁っているが擬態する母の翅へと滴
2020年1月17日 10:53
実験的短歌(1)焦点をすこしずらせば影像とその人物が吊り下がっている川面へと砕けるひかりが脱皮するいつまでぼくをつづけるのだろう貴婦人のようなつぼみに添えている鳥が初めて空を飛んだ日飛行機の墜ちた日のこと海岸に耳の打ち上げられた日のこと眠れない小鳥とともに春の夜は花粉を肺の奥まで吸い込むペリカンの空に守礼の浮かびきて骨盤のなか綿布をたたむ生まれなかった姉の名前をなぞりつつ血の染みる