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わたしの本棚98夜~「なんで家族を続けるの?」

 面白かったです。樹木希林と内田裕也の娘として、家族団らんを知らずに育った内田也哉子。両親の不和で、巨大なブラックホールを抱えて思春期を過ごした中野信子。両親が仲良く、子どもがふたりぐらいいる、というのを理想の家族とする日本の、家族の模範形態。異議あり。いろんな家族のあり方を問う、多様な家族形態のなかでの幸せの追求、自身の家族をセキララに語るふたりの対談集です。

☆「なんで家族をつづけるの?」内田也哉子・中野信子著 文春新書 文藝春秋 850円+税

 1、家族のかたち・内田也哉子さんの場合

 今でいうシングルマザーの状態で、内田也哉子さんは育ちました。1973年、出会った翌日に裕也さんが希林さんにプロポーズして、50日後には入籍したものの、同居したのは1カ月あまり。妊娠していた希林さんが喧嘩して、裕也さんを追をい出したそうです。それでいて、お宮参り、結婚式、還暦などの行事には、家族として、写真館で写真を撮っていたそうです。

 19歳で本木雅弘氏と結婚した也哉子さんは、3人の子どもさんに恵まれますが、中学校を出ると子どもたちは海外へ留学。本木氏は、内田姓を継ぐために養子になり、希林さんとも同居します。本木氏はひとりの時間を大切にするために、毎年ロンドンで一定期間過ごすそうです。(コロナ禍で今年はキャンセル)

2、家族のかたち・中野信子さんの場合

 両親は喧嘩すらせず、沈黙の多い家庭だったそうです。高校2年生のとき、両親が離婚します。優秀だった中野さんは、「こんなに勉強ができるとお嫁にいけないね」と言われたりしながら、ブラックホールを抱えたまま、進学します。付き合っていたエリートから「君は壊れた家庭の子どもだから」と言われたことがあり、その人とは結婚しなかったそうです。

 三十代で結婚したご主人は、大阪芸術大学の準教授をされているそうです。ご主人は大阪に住み、横浜にアトリエ(仕事場)があり、週末、東京で中野さんと過ごす生活をされているそうす。子どもはいないそうです。

3、家族のかたち、しあわせのかたち

 生い立ちや伴侶のことをセキララに語ったふたりの対談は、家族への思いやりも垣間見れ、夫とは意見が一致しなくても当たり前、と独立したところもあり、読後感よかったです。そして、ところどころに中野信子さんが脳科学の見地から解説されているのが、わたしは好きで、楽しく読みました。

例えば、こどもは、知性は母親から、情動は父親から受け継ぐそうです。こどもの知性をつかさどる大脳皮質の部分は、母親から譲られるそうです。脳は30歳までは未完成であり、メタ認知も共感もDLPEC(背外側前頭前野)という領域でおこり、その部分は30歳までは成長するそうです。だから、若いときは往々にして、感情を抑えられないということが起こるんですね。

 ふたりとも夫とは価値観の違いがある、といいます。けれど、しあわせ指数は微分であらわされ、他人と比較するものではなく、以前の自分と比較するという中野さんの考えに内田也哉子さんがおおいに共感し、もりあがります。わたしもこの考え方、とても素敵だと思いました。

  リモートを含めて5回の対談と、はじめに(内田也哉子さん)、おわりに(中野信子さん)、内田也哉子さんから中野信子さんへの人生相談、ともりだくさんの内容で、ベースにはいろんな家族のかたちを肯定する考え方があり、家族に苦しむ人に知ってもらいたいという中野さんの思いもあって、読後、他人と比較せず、模範な家族にとらわれず、しあわせな家族をと思ってしまう本でした。

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