マガジンのカバー画像

短歌2

84
運営しているクリエイター

記事一覧

【短歌四首】円いそよ風

ゆっくりと桜の影に満たされてアスファルトからこぼれる音色

封をするように選んだスタンプに既読がついてから歩き出す

生活の足音がするあなたとの通話はいつも円いそよ風

曲線が優しいことを知っている耳たぶ香るオードパルファム

【ツイッター短歌まとめ11首連作】音階を踏む

【ツイッター短歌まとめ11首連作】音階を踏む

サイレント・モードに落ちる夜がありだから震える死にかけの翅



とぐろ巻くホースのざら、と蛇に似て水の影すらぬらりと暮れる



あんぶれら (快晴のよる) あんぶれら 迷迭香の乾いた響き



磨り減って削る、削って塗り潰す、心拍数の寄り道として



しなやかに乗り越えてゆく大げさな涙のマークにそっと寄り添う



冷えたまま歯ブラシに置く3色のどこへも行けぬ外国の色



生き

もっとみる
【短歌七首】圏外へ

【短歌七首】圏外へ

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

散り際よコーラ吹き出すぬばたまのびしょ濡れのまま蹴りあげる靴

く れよんの染みべらべらと乾かないく れよん、君の時間と共に

まぶたからひらがなになる 剥き出しの風にさらした虹の呼吸器

たらちねのままごとに飽く子どもたち星座のように大人を植えて

下垂体葉脈に濃く蝶の舞う一滴分の鱗粉を、ください

カラフルな道路工事の点滅とコンクリートに混ぜ込む季節

再生の名

もっとみる
【未来7月号より短歌6首】トロンプ・ルイユ

【未来7月号より短歌6首】トロンプ・ルイユ



(※画像は確かibisPaintで作成したはずですすみません忘れました。)

とろんぷるい/ゆ ぴしゃりぴしゃりと陽だまりにぶつけては散るバリとゾウゴン

(しゅるれあ・・・)(コーラの腑抜けた音がする)(しゅるれあ・・・)りすむ!澄む、雷鳴は

空からもハッシュタグ降る夏休み望遠鏡に映る潮騒

安い輪ゴムちぎって浴びるぺるぺるとなんの送り仮名でもない音だ

(ふう))刺 ふう))評 ふう))

もっとみる
【短歌五首】あおく炒る

【短歌五首】あおく炒る



ドラゴンの小さな影を濾してゆくように削ればハズレもひかる

あの朝の副音声にするために吹き込むことば透明な夜

信号に引っかからないつま先の土がちょっとだけ明日のにおい

語尾に咲く色を重ねていつまでも消えない虹をパレットに置く

あおく炒る湿気たパズルのピースから少し短い夕焼けを知る

                    

                  /とわさき芽ぐみ 2021

もっとみる
【短歌三首】滲む氷は

【短歌三首】滲む氷は



色むらの滲む氷はこの夏の細胞分裂だったでしょうか

等しさを肥やす (瞼の裏側で欠けた視線を繕っている)

疑似鼓動としてどくりと回す針 砂の入っていない砂時計

/とわさき芽ぐみ 2021.8.2

【短歌九首】未来 2021年6月号 掲載歌「泉」

どこへ行くでもなく濡れてしまうこと怖いことですか、傘を放棄して

砂は汚泥となる練り上げて似つかわしい人間を見よこれがあなただ

曖昧な犠牲を取り柄にして今日も夕焼けで勝手に火傷する

炎症はライフワークのようでまたあなたのことばで冷やされてゆく

暗闇の色ではなくて色彩の混濁だこれは。舌足らず、滴らす。

ぎこちない笑窪からひび割れてゆき粉々になる頃に会いたい

安住の地でもないのにくるまれて風

もっとみる
【短歌】短歌に季語はいらないけど季語で一首どうでしょう?④⑤

【短歌】短歌に季語はいらないけど季語で一首どうでしょう?④⑤

前回の記事はこちら。

すみません、4月できませんでした…ので、今回は、4月分と合わせて二首詠みました。

簡単に企画の内容を説明しますと、歳時記を適当に開いて目に入った季語で短歌を詠むというものです。

さて、まず4月にすっぽかした分のお題は~~~~~~、

ででん。

「草の芽」

でした。

おーーーー「芽ぐみ」としては嬉しいお題ですね。(?)

「草の芽」をお題に詠んだ短歌がこちらです。

もっとみる

【短歌九首】未来 2021年5月号 掲載歌「オルゴール」

長過ぎる靴紐ゆらと波打って蓄えてきた影踏みながら

信号の内側でひとり歩くひと徒歩圏内でひとに会いたい

沈黙が肥えてあなたは舌になる 凪いでいるのはカーテンだけだ

ただ白紙 尖らせていた芯を折り塗り潰す 雷(らい)、荒い目のなか

導火線いくつもいくつも見つけては束ねてゆすぐ 瞼は蕾

沈み込む足音を具に 溢れ出る涙を飲めばあおい夕焼け

螺旋状言語ただようこのからだ無線であればほどくことなく

もっとみる

【短歌十首】未来 2021年4月号 掲載歌「●Rec」

また同じトレーナー着て過ごしてる挨拶の仕方まで忘れそう

コンビニにふるさとと同じくらいひと、溢れてるなあ ジュース買おうか

インスタにあげる写真は撮れなくて爆音で咲く花火は鼓動

ゴミ出しのときだけ外す この顔でご近所さんと会っておきたい

少しだけ離れて見ればアパートはビンゴカードのようだね 続く

カシミヤの黄色いセーター着ないまま季節が変わる 似合うのになあ

親指の身長くらい開いている

もっとみる
【短歌】短歌に季語はいらないけど季語で一首どうでしょう?③

【短歌】短歌に季語はいらないけど季語で一首どうでしょう?③

前回の記事はこちら。

3回目となりました今回、ちょっと遅くなってしまいまして、それは

お題が

「桜鯛」

だったから、ということもあります・・・。

(最近、短歌のオンラインイベントにかなり積極的に参加させていただいているということもあるにはあるのですがごにょごにょ・・・。)

あのね・・・魚介類、苦手で・・・あんまりにも興味がなくて・・・イメージが全然わきませんでした。笑

ざっと企画内容

もっとみる

【短歌十首】未来 2021年3月号 掲載歌

まだ暗い朝を確認するために選ぶボウタイブラウスの袖

しらじらと宇宙のほどけてゆく様を映すコーヒー両手で包む

シリアルがふやけるけれどやさしくは感じないなら偽善かもだね

馬鹿みたいに電線を吐くこの街へ届く非接触型Fワード

ポッキーのチョコレート側から開けてべたべたにする 爪が伸びたな

2リットルみねらるうぉーたーみねらる、は実らなかったときの動詞、たぶん

歯と爪が同じざらざらだってこと絵

もっとみる

【短歌七首】二月尽、間引かれて

そこに人がいることとおく後悔の数だけ燃やす線香花火

選んだと言えない浅い覚悟でも握り締めたらくきやかに赤

がむしゃらのしゃらの部分で揺れている(きっと檜だ)寒くない風

空なんて名乗る空白くうはくを受け入れてなお、痛いんだ、痛い、

キャッシュレスで渡りたくない街 皮膚にICカードの角食い込ます

そのときも生きていること遠過ぎて定期の印字かじりつきたい

ください 機微なんて狭い 爽やかはま

もっとみる
【短歌六首】これはうるう席

【短歌六首】これはうるう席

今、金子みすゞさんが生きてたら、どんな詩を書くのかなあ。

◆□◆□◆□◆□

死を乱用しすぎた街に降ってくる胞子よ種よ教えてくれよ

赤ちゃんのように詩集を抱いていま騒ぐことばをあやしているの

口笛にすらならなくてゆるく裂く詩をよけながらかすれた声で

2円分足りない切手に気が付いてピースサインを書き足している

減らされたベンチの代わりシーソーの釣り合わないね空気とぼくは

ほんとうはもうひ

もっとみる