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MBAホルダーが薦める絵本2000選(207冊目)

【題名】きつねのおきゃくさま

【作者】著者:あまん きみこ/ぶん 二俣 英五郎/え

【評価】★★★★★(85点)

1,利他の心に感動をした!

 人間誰しも利己的です。自らの欲望というものがあります。お金持ちになりたい、偉くなりたい、モテたい、うまいもの食べたい。その欲望をかなえるためには、他者を貶め、奪い、踏み台にする。それも人間の一つの本質かと思っています。

 リチャード・ドーキンス先生が名著「利己的な遺伝子」で、人間の遺伝子的本質を喝破されました。

 なので、逆説的でありますが、「利他の精神」が発露した瞬間に遭遇すると感激するのだ。

 仲間のために身体を張った、とか犠牲になったというお話は、方々で聞く。例えばコルベ神父のお話などは、ナチスの残忍さと相まって、聞く人に感動を呼び起こす。

 今回のお話は、そんな、利他の精神があふれる物語である。しかし、最初からコルベ神父のような高尚な精神の持ち主ではなかった。極めて利己的な行動をとるのだが、相手から感謝をされることにより、その心の中が変わってくるというすばらしい物語だ。

 人間は、他者からの感謝で変わることができる。私もそう信じている。信じたい。これは寓話だが、すばらしい物語である。

2,利己的なキツネ

 キツネは最初、ひよこ、あひる、うさぎを食べようと思う。そりゃそうだ、肉食ですし、おなか減っていれば利己的にならざるをえない。獲物を食べなければ死んでしまうかもしれない。

 しかも「太らせてから食べよう」という、計画的犯行を実行する。しかし、食事を与え、世話をした相手からの感謝の言葉に当てられて、その心境が変化していくのだ。著者は「ぼうっとなった」という表現をしている。

 これは心の奥底で何かが暖まるイメージだろうか。人を信じ、感謝することにより、相手が変わる。理想主義的すぎるかもしれない。でも、あると思う。

 相手のアイデンティティーにまでなれば、人は交われる。このお話は、他者を信じた、ひよこ、あひる、うさぎが、人を変えた物語なのだ。


3,自己犠牲

 最終的に、オオカミと闘って命を落とすキツネ。まるまる太らせてから食べようと思っていた、ひよこ、あひる、うさぎのために闘い死んでいくのだ。これ以上の愛はあるだろうか。

 キツネは満足していたと思う。

 子供たちにも伝えようと思う。人を信頼し、感謝し、それを伝えること。それはみんなのためになる。もちろん、自分もそうありたい。


・・・・おじさん、ウルウルきてますわ。この1984年に発行された古い、創作絵本の方が、深く心を打つ。世間で叫ばれている安易な感動物語よりもね。


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