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2000.8.8〜

20 年前、あたしは姉になった。
弟が生まれたのだ。
我が家にとって待望の男の子だった。

5歳手前のあたしは
その白くて小さな手を
恐る恐る握った。
その白くて小さな顔を
何回も何回もまじまじとみつめた。

いろいろな大人が
いろいろなことを言っているようだった。
難しいことはよく分からなかったけど
それが、あたしの弟だった。



小学6年生になったあたしは
小学校に入学したばかりの弟を
30分歩かせて毎日通った。
通ったのだけど、
なかなか一筋縄ではいかなかった。

泣きじゃくったり、
立ち止まったり、
とにかく「みんな」がするように
できなかった。

恥ずかしかった。
悔しかった。

「みんな」がするように
する必要はないと分かってはいた。
どうすればいいか、一番良い方法を、
自分なりに分かってはいた。

でも、「みんな」は強かった。
「みんな」は「みんな」がするように
強いてきた。
『みんなちがって、みんないい』
とか唱えてるくせに。

「みんな」には弟が見えていないのだろうか。
よく分からない。
よく分からないけど
「みんな」はなぜか正しくも見えて、だから、
「みんな」がこわかった。
どこに連れて行くにも。

悔しかった。

あたしなりに闘った。
闘ったけど、たくさん逃げもした。

闘ったり、逃げたりしてここまできた。
もしかしたら、逃げたことの方が多いかもしれない。
何もできないあたしは底抜けにちっぽけだった。




いや、今もちっぽけなままかな。

気づけば、いつのまにか
弟はできることが増えて
いろんなことが落ち着いて

20 歳のバースデーケーキを
自分で選び、自分でろうそくを立てて
吹き消す姿が目の前にあって

悔しかった日々が
とてつもなく昔のことのように思える。


どんなに「みんな」とちがっていようが
誰の、どんな道にもフタをしたくない。
何かの利益や大人の都合のために
誰かを押さえつけるようなことはしたくない。
だからといって、それが絶対的に正しいのかは分からない。

分からない、
分からないから、
分からないまま、
でも、考えて、考え続けて進む。
姉生活20 年。

これからも頼りなくて情けないけど
姉はずっと姉だからなぁ。


今日はなんだか
余計なことばかり
話し過ぎて
しまうわ
どうでもいいこと
探してみるけど
どれもこれも
ぜんぶが
だいじなものばかりで
困ってしまうわ
♪さっきの話 / クリープハイプ


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