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▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼    (33)チガイがわかる・おもしろ日本語入門    ▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△4

          souy

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      元NHKアナ、民放キャスター、はたまた講演講師や大学
      講師などを遍歴して、その後突然スペインのバルセロナに
      移住して、早や20年。
      著書(最新刊)『熟年夫婦の行き当たりばったりスペイン
      移住記』(地球の歩き方、ダイヤモンドビッグ社)
       他に『NHKはもういらない』(三一書房)
         『勉強っていやいやするもの?』(大日本図書)
         「脳みそのほんとうの使い方」(日科技連出版)など
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第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!

       その17、「私は・・・“が”好きです!」

友達や恋人、あるいは初対面の人と会話する時使われるフレーズの一つがこれ、

      「私は・・・“が”好きです!」、

            「あなたは・・・“が”好きですか?」

ではないでしょうか。なんといっても、その人を知りたい時やその人に自分を知ってもらいたい時、自分自身やその人の、好み、趣味、嗜好はとても大切な要素ですから。

            注目すべきは、この“が”です!

      ここでも、英語とスペイン語を対比して考えてみましょう。

たとえば「私は日本が好きです」は、英語では“I like Japan.”と言います。文法的
に見ると“I”が主語、“like”が動詞、“Japan”が目的語です。 オヤ!、ちょっと
変です。目的語には「を」をつけるはずでした。なぜそれが、“が”なのでしょうか?

このフシギを説明するとき、私はよくスペイン語を使います。というのも私の生徒達はほとんどスペイン人で、たとえ他の国の人でもみんなスペイン語を知ってるからです。

   ではスペイン語で「私は日本が好きです」は、どう言うのでしょう?

じつは英語とかなり異なり“Me gusta Japón.”と言います。この中の“Me gusta”は
再帰動詞と呼ばれるもので「何かが私を魅了する」といった意味合い。“Me”はその「私を」にあたります。つまり「日本が私を魅了する」というように表現するのです。

ですからここでは主語は私ではなく“Japón”(日本)。動詞は“gusta”(魅了する)、そして目的語が“me”(私)となり、なんと「私」は目的語になってしまうのです。

これにはスペイン語学校に通う日本人ばかりか英語圏の生徒達も、ほんとうに悩まされました。目的語であるはずの言葉を、主語にしなければならない。ということは動詞の変化を別のものに変えなくてはならない・・。すべての人称ごとに動詞がめまぐるしく変わるスペイン語でそれをこなすことは、まさに至難のワザだったのです。(汗)

じゃあ“Do you like me ?”はスペイン語でどう表現するのか、考えてみてください! ???

「ねえ、私ってあなたを魅了してる?」

                さてさて、

         もう一度振り返って、検証してみましょう!

もし英語“I like Japan.”を日本語に直訳すると「私は日本を好きです」となります。そう、それで、いやいや、それが正しいのです。またこの他にも「あなたは日本を好きですか?」も、「彼女はあなたを好きでしたよ」も、文法上はすべて正しいのです。

私のおぼろげな記憶によれば、たしか子供の頃は殆どの人が“を”を使っていたように思います。しかしそれが年が経つに従って、いつの間にか“が”に変化していったようなのです。けれども、それが何故なのかなど、考えたこともありませんでした。
          
        そうして数十年後スペイン語と出会った時、私は、

“Me gusta Japón.”「日本が私を魅了する」という不思議な表現の中に、“を”を
“が”に変えていった日本人のイマジネーションを、垣間見たような気がしました。

「私は日本を好きです」では、あきらかに、主語、つまり主人公は私です。けれども「私は日本“が”好きです」となると、話題の対象である“日本”の価値つまりランクが強調され高められて、まるで第二の主語、もしくは準主語に近づいているようです。

つまり「私は日本を好きです」とは、〈日本という国について質問されるなら、私は嫌いではなく好きです〉といった一般的な意味合いであるのに対し、一方の「私は日本が好きです」とは、〈ほかの国と比べて私が好きなのは日本です〉という、話し手や聞き手の一段と強められた意思表現のように感じられます。

そんなわけで“Me gusta Japón.”と「私は日本が好きです」の間には、たとえ文章の構造は違っていても何かしら共通性があるように思え、私はときどき生徒の質問に対し「もしかすると日本人はスペイン人に近づいてきて、表現がオーバーになってるのかもしれないなー!」などと、冗談を飛ばしたりもしています。

というのもスペイン人は日頃から「ちょっと待って!」の代わりに、“Un segundo !”(一秒待って!)などと言うのです。でもそう言っている間に、もうとっくに1秒は過ぎちゃってますよね。ハハ、実際の話、少なくとも5~10分は待たされるのです!

        冗談はともかく、少し真面目に考察してみましょう!

文法的には、“I like Japan ”は「私は日本を好きです」でも「私は日本が好きです」でも、ありません。 なぜなら“like”は動詞ですが、「好き」は形容詞、それもあの《コピー形容詞》なのですから。 

あえて言えば、英語の動詞“like”は、日本語では「好む」にあたります。ですから
“I like Japan ”を文法的に訳せば「私は日本を好みます」となるでしょう。しかし
この表現はちょっと古めかしくて日常あまり使われません。(強いて言えば、英語の“I prefer Japan”に当たるのでしょうか)

でもこの「私は日本を好みます」は、決して、「私は日本“が”好みます」とはなりません。というのも動詞(特に他動詞)の場合、「誰が何をしたのか」をはっきりさせる必要がありますが、形容詞というのはあくまで誰かや何かの状態を指し示す言葉なので、そこが明確ではありません。また「私は日本を好きです」や「私は日本が好きです」の「日本」は、「好き」の目的語でもないのです。

  そんな理由からも、“を”が“が”に変化しやすかったのかもしれませんね。

「なに、オラたちがキライだって?」

そう言えば「好き」以上に「嫌い」(これもコピー形容詞ですね)の場合は、意図的に「私はゴキブリ“が”嫌いです!」と変化させ、かの昆虫たちに罪はないというのに、人は強い憎しみを込めてこう表現するのかもしれません。やや、またまた冗談でした!

             では、次回をお楽しみに!!

                 
ーーー 次回は第34回 ◆ 第三章 日本語、コノ表現 & その極意!!
  

                  その18、究極のビックリ二重否定!?
                     

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