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【スライド】『からかい上手の高木さん』に学ぶ!露骨なエロ描写なしで、「エロスがにじみ出る水着回」を描く方法

アニメ『からかい上手の高木さん』の水着回「プール」をご存知ですか?画面からにじみ出るエロスに驚くはずです。露骨なエロ描写なしに、なぜこのようなことが可能なのか?その理由を探り、クリエイターのみなさんの創作・制作に役立つと思われるアウトプットを作りました。


【補足1】『からかい上手の高木さん』について

▶ 概要

 原作は、山本崇一朗さんによる同名のマンガ。

 2018年1~3月にアニメが放映されました。また、2019年1月12日に、2期の制作が発表されました(放映時期は未発表)。

 なお、アニメはNetflixで全話配信されています。


▶ あらすじ

 主人公は、中学1年生の男子・西片(にしかた)彼が、クラスメイトの女子・高木さんからからかわれるだけの話……なのですが、これが大変に面白いのです。

 西片というのは、根が素直で単純。謀略を張り巡らすのが苦手なタイプで、嘘も下手。ポーカーフェイスはできず、思っていることがすぐに態度に出る……という、無論フィクションゆえに誇張されている部分はありますが、しかしまぁ、「中1男子なんてこんなもんだろ」というキャラ

 一方の高木さんは、才色兼備タイプの女子として描かれています。彼女の特技もしくは趣味は、西片の心を読んでいたずらを仕掛け、その反応を見て楽しむというもので、西片からすれば「またからかわれた」ということになるわけです。

 西片と高木さんの関係は、私たちがかつて経験した「相変わらずガキっぽい男子」と「急激に大人っぽくなった女子」の姿と重なるところが大きいといえるでしょう。

 20年ほど前に中1男子だった私からすると、すべての男子中学生は愚かの極み、これ以上ないほどの阿呆、思い出したくもない恥部そのものなのですが、西片もこの例に漏れない愚か者です。

 というのも……視聴者からすれば明らかなのですが、実は高木さんは西片に恋愛感情を抱いており、彼女の「からかい」は好きな人へのちょっかい以外の何物でもないのです。

 美人で聡明、笑顔も大変に愛らしい高木さんから好意を向けられているというのに、クソ馬鹿野郎の西片は中1男子らしく性的に未成熟で、高木さんの気持ちに気づいていない。というか、おそらく、誰かに対して恋愛感情を抱いた経験がない。かくして高木さんの愛情表現を「からかい」だの「いたずら」だのと認識し、何とか仕返ししてやろうと模索している(そして失敗してまたからかわれる)始末。

 すべての男は中学時代にコンプレックスを抱いており、その苦い記憶から目を背けることでどうにかこうにか毎日を乗り切っているというのが私の持論なのですが、そんな「西片=我々」が、「高木さん=かつて我々が憧れたちょっと大人で美しいクラスメイトの女子」からからかわれる様を視聴するというのは……最早これは拷問なのか、それとも何かしらのプレイなのか。

 ズバリ癖になるものです。


【補足2】「プール」について

▶ 概要

 アニメ『からかい上手の高木さん』の第2話4つ目のエピソードで、いわゆる「水着回」。

 時間は7分弱。


▶ あらすじ

※以下、わかりやすいように、3つのパートに分けてご紹介します。

<1:導入>

 生徒たちがプールで泳いでいる。しかし、西片と高木さんだけはプールサイドのベンチに座り、体操着姿で見学

 西片は、高木さんに見学している理由を尋ねようとするが、彼女が腹に手を当て、物憂い表情を浮かべていることに気づいて口を噤む。

 西片は、高木さんは生理なのではないかと推理するが……「やめておこう。触れてはいけない気がする」

 ところが、高木さんは「見学している理由を当ててみてよ」。


<2:西片のモノローグ>

 西片は、高木さんの様子を観察したり、友人の言葉を思い出したりして、高木さんが見学している理由を推理する。

 西片は、「生理」と口にできない自分を見て、高木さんがほくそ笑んでいるのではないかと疑う。

 また、生理以外に、「胸が小さいことを気にしている」という理由を思いつくが、やはり口に出すのは憚られる


<3:種明かし>

 西片は意を決して、「見学してる理由はズバリ生理だから」

 それに対して高木さんは「ハズレ」

 高木さんが不意に立ち上がり、ハーフパンツを脱ぐ。慌てる西片。さらに高木さんは、「胸が小さいのが原因でもない」と言いながらシャツを脱ぎ、スク水(スクール水着姿になる

 西片はここに至ってようやく気づく……「まさか俺をからかうためだけに見学を?」。高木さんが「ヒヒ」と笑う。

 高木さんが教師に声をかける「やっぱり泳いでいいですかぁ?」。教師は「オッケー」と返事。

 高木さんが髪を結い、プールに入る。

 高木さんが気持ちよさそうにプールの水面を漂う


【補足1】「お約束」使用時には、作品の設定や雰囲気とのバランスに気を配る

 自身の作品に「水着回のお約束」を盛り込む時には、作品の設定や雰囲気とのバランスにご注意ください。

 例えば、今回取り上げた4つ以外にも、水着回には以下のような「お約束」=テンプレ的展開があります。

・水着が脱げる。

・溺れかけ、誰かに救われる。さらに、人工呼吸してもらう場合もある。

 いずれもアニメやマンガでよく見かける展開で、色っぽい雰囲気を醸し出すことに貢献しています……が、『からかい上手の高木さん』には不向きでしょう。

 成人向け同人誌には相応しいネタかもしれませんが、『高木さん』でそれをやっては、せっかくの雰囲気がぶち壊しです。


【補足2】すべての「お約束」は「マンネリ」にもなり得る

 「お約束」がアニメやマンガの世界で継承されてきた技法である以上、それは様々な作品で見かける演出・展開であり、すなわち「すべての『お約束』は、『マンネリ』と否定的に受け取られる危険を孕んでいる」といえます。

 それが「お約束」として上手く機能するか、それともありきたりのマンネリ演出・展開として視聴者にそっぽを向かれてしまうか、十分に見極める必要があります。

 『高木さん』の場合は、元々が清潔感漂う作品なので、たくさんのアニメやマンガで使用されてきた演出・展開でも、「ほぉ、あの清楚な『高木さん』にこの演出を用いるとは!」「『高木さん』もなかなか攻めるな!」と感じられ、マンネリ感はありませんでした。



【補足】スク水のタイプは、「醸し出したいエロスのタイプ」に基づいて決定すべし

 上述の通り、「高木さんが『競スク』を着用していること」が、エロスがにじみ出る一因になっていると分析しました。

 しかしこれは、「アニメやマンガのキャラには、常に『競スク』を着用させるべし」ということではありません

 すべては状況次第です。

 そもそも、「幼児体型気味のスク水キャラ」は、「スタイル抜群のビキニキャラ」とセットになって登場することが多いものです。例えば、パッと思いついたところで、『Another』の見崎鳴と赤沢泉美、『ひなこのーと』の夏川くいなと桜木ひな子という具合です。

 「スク水キャラ」が「スク水的エロス」を、「ビキニキャラ」が「ビキニ的エロス」を担当し、この2種類のエロスが併存することで、様々な嗜癖の持ち主が満足できる水着回となるのです。

 そして、「スク水キャラ」と「ビキニキャラ」の分担を考えれば、「スク水キャラ」に過度な露出は不要です。肌をさらすのは「ビキニキャラ」の担当でしょう。寧ろ「スク水キャラ」に期待されるのは、見せすぎないこと、チラ見せです。

 したがって、原則としては「スク水キャラ」が着用すべきは、比較的露出の少ない「旧スク」です。

 こうした視点からみると、「競スク」は「やや露出しすぎている」「『ビキニキャラ』の領分を侵している」と感じるかもしれません。

 ……が、『高木さん』においては事情が異なります

 端的に言って、『高木さん』には「ビキニキャラ」がいないのです。したがって、本来「スク水キャラ」であるはずの高木さんが、「スク水的エロス」のみならず「ビキニ的エロス」まで担わねばなりません

 それゆえに、高木さんが「競スク」を着用したのは大正解だったといえます。

 一方、もし高木さんの隣に「スタイル抜群のビキニキャラ」がいたとすれば、視聴者から「高木さんは『旧スク』を着用するべきだった」「『競スク』は露出過多ではないか?」という声があがっていたかもしれません。

 みなさんの作品に「スク水キャラ」を登場させる場合には、そのキャラが「スク水的エロス」だけを担えばよいのか、それとも「ビキニ的エロス」まで担当する必要があるのかを検討し、その上で着用するスク水のタイプを決定するのがよいと思います。すなわち、前者であれば「旧スク」、後者であれば「競スク」が最適解となります。



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 以下は、本記事の補論です。ぜひ合わせてご覧ください。

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 以上です。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

 では、次回の記事でまたお会いしましょう。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

(分析:清水、三葉 / 文、イラスト:三葉)

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