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小紅は「女性的なヒロイン」なのに、なぜ「男性的な言葉づかい」なのか?|『未確認で進行形』(5)

 本記事は、アニメ「未確認で進行形」を徹底分析する特集の……第5回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ!


 ここまで、主役・小紅の「人となり」と「何事にも消極的な理由」第2回)、「キャラデザの特徴(胸も尻も大きいのに、なぜエッチな感じがしないのか?)」第3回)、「価値観(「男性的」なものに価値を見出す傾向)」第4回)について詳述してきた。


 今回も……小紅!

 テーマは、彼女の奇妙な言葉づかい」である。


※左:小紅。


小紅の言葉づかいの特徴をチェック


 本記事では、小紅の「言葉づかい」について考えてみたい。


 彼女の言葉づかいは、かなり特徴的だ。

 ここでは、特に顕著な「対称詞」と「語尾」について、具体例を見てみよう。


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 まずは、「対称詞」。


 「対称詞」とは、「対話相手の呼び方」のことである。

 例えば、「あなた」、「○○さん」、「○○課長」、「○○先輩」、「お父さん」などが該当する。


 さて……小紅は他のキャラを何と呼んでいるのだろうか?



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 続いて、「語尾」を見てみよう。


 以下、第1話の小紅のセリフを無作為にピックアップした。

 セリフの「内容」ではなく、「語尾」に注目してご覧いただきたい


①母に対して

小紅「何ですか、それぇ!」

小紅「けど、なんで私なんですか?」


②紅緒に対して

小紅「姉様は知ってたんですか!?」

小紅「それは嫌です!」


③白夜に対して

小紅「白夜は、何か好き嫌いはあるのか?」

小紅「味付けに好みとかあったら遠慮なく言ってくれ。一応考慮するからな」


④真白に対して

小紅「嫌いだったか?」

小紅「ちょっとこっち来い!」


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 「母、紅緒に対する言葉づかい」と、「白夜、真白に対する言葉づかい」が随分と異なっていることに、お気づきになったと思う。


 そして、ほとんど出番がないので断言はできないのだが……どうやらその他のキャラ(クラスメイトら)に対しては、後者の言葉づかいをしているようなのだ


 つまり以上を整理すると……こちら!



小紅はなぜ「荒っぽくて、男性的な言葉づかい」をするのか?


 ここまで小紅の特徴的な言葉づかい、すなわち「母と紅緒に対しては『丁寧』」、「その他(白夜、真白ら)に対しては『妙に荒っぽくて、男性的』」をご紹介してきた。


 さて!

 ここからが本題である。

 小紅は、一体なぜこのような言葉づかいになったのだろうか?


 前者については、作中に説明がある。

 すなわち……小紅が丁寧な言葉づかいをするようになったのは、紅緒がそれを望んだからだ


 詳しくは「紅緒の人となり」について分析する別記事で触れるが……紅緒はシスコンである。

 妹に甘えられたいと願っている。

 「姉様、大好きです」なんて言われたいと思っている。


 一方の小紅は姉を尊敬している。

 その期待に応えたいと思っている。


 かくして!

 小紅は、家の中で妙に丁寧な言葉づかいをするようになったのだ。


※変態レベルのシスコン・紅緒。


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 問題は……そう!

 母や紅緒以外の人に対する「妙に荒っぽくて、男性的な言葉づかい」の方だ。


 第2回、あるいは第4回で詳述した通り、小紅はじつに女性的なキャラである。

 そんな彼女が男性的な言葉づかいをする……このギャップ!


 小紅が男性的な言葉づかいをするようになった理由は、作中では明言されていないので、彼女の性格をもとに推測してみよう。

 おそらくこういうことだ。


 まず、小紅は人と親しく付き合うのが苦手だ(詳しくは第2回)。

 自分に自信のない彼女は、「素顔の自分 = ダメな自分」を見られるのが怖い。

 だから相手との間に壁を作り、他人行儀に接する。


 また、小紅は「外の世界でバリバリアクティブに活躍すること = 男性的なもの」に価値を見出す傾向がある(詳しくは第4回)。


 この2つを合わせて考えると……そう!

 彼女は男性的な言葉づかいをすることで、「素顔の自分 = ダメな自分」を隠そうとしているのだ。


 もっとストレートに言ってしまおう。

 これは、「弱い犬ほどよく吠える」というヤツだ。

 小紅は心が弱い。

 ありのままの自分を見せるのが怖い。

 だから、「彼女にとっての価値あるもの = 男性的なもの」で武装するのだ。


【考察】いつか小紅は「女性的な言葉づかい」をするようになるのか?


 彼女の「男性的な言葉づかい」が「自己評価の低さ」に由来するものだとすれば……そして、「未確認で進行形」が「ガール・ミーツ・ボーイもの」っぽく展開し、小紅が白夜と交流する中でありのままの自分を受け入れられるようになるのだとすれば(詳細は第4回)……はて。

 いつか、小紅が「男性的な言葉づかい」を止める日が来るのだろうか?


 なるほど。来るかもしれない。

 「小紅がありのままの自分を受け入れ、もう虚勢を張る必要がなくなった時、ごく普通の『女性的』な口調になる」というのはわかりやすい筋立てだ。


 ただし!

 こうも考えられる。

 すなわち……「小紅がありのままの自分を受け入れる」ということは、その独特の言葉づかいもまた受容の対象となるのだ。

 だから、彼女の言葉づかいは変わらない。

 この場合、一見すると何も変わらないのだが、では本当に変わっていないのかと言うとそうではなくて……「見た目も中身も『女性的』なのに、自分に自信がないから『男性的』な言葉づかいで武装している」というネガティブなものから、「見た目も中身も『女性的』なのに、言葉づかいは『男性的』……このギャップが魅力的!」というポジティブなものへと、言葉づかいの「意味」が変わるのだ


※小紅。この笑顔で「男性的」な口調……ギャップ萌え必至である。


 いつか「『女性的』な言葉づかい」になるのか、それとも「『男性的』な言葉づかい」はそのままで、意味だけが変わるのか。

 どちらもあり得る未来だが……より「未確認で進行形」っぽいのは後者ではないだろうか。


 前者は、あまりにも安易すぎる気がするのだ。

 「お涙頂戴」感が強すぎるというか……。


 私は、「未確認で進行形」はそんな単純な話ではないと思う。

 だから、後者の方がそれっぽいと感じる次第である。



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(担当:三葉)

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