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この脇役は、圧倒的に「不憫」で「健気」で……そこがかわいい!!|『未確認で進行形』(14)

 本記事は、アニメ「未確認で進行形」を徹底分析する特集の……第14回(最終回)である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマ


 ここまで、主役・小紅第2回第3回第4回第5回)と、小紅の許嫁・白夜第6回第7回)の「人となり」、小紅と白夜の「恋愛感情の変遷」第8回)、そして小紅の姉・紅緒第9回第10回第11回)と、ロリ小姑こと真白(第12回第13回)の「人となり」を詳しくご紹介してきた。


 そして今回は……末続このは!

 特集「未確認で進行形」の最終回にあたる本記事では、名脇役たる彼女に注目する。


※後列中央:このは。


このはの「特徴」と「魅力」


 まずは、このはの「特徴」と「魅力」をざっくり整理した以下の図をご覧いただきたい。




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 そう!

 彼女は、なぜか何をやっても上手くいかない。


 本記事では、作中登場する「このはの『上手くいかないエピソード』」の内、特に大きなものを4つご紹介しよう。


【上手くいかない①】紅緒信者なのに、紅緒が愛してくれない


 小紅の姉・紅緒!

 彼女は、文武両道、才色兼備の完璧超人である(詳しくは第9回)。


 学校では、多くの生徒から慕われている。

 ……というか、それはほとんど「崇拝」の域に達している。

 そんな紅緒信者の中でも、特に熱烈なのが……そう!

 このはだ。


 中学時代、このははふとしたことから紅緒を知り、そのカリスマっぷりに目を奪われて一気に心酔!

 そして紅緒が在籍している高校を突き止め、猛勉強の末に入学した。

 さらに紅緒が生徒会の会長を務めていると知るや、彼女も生徒会に入る。


 ……じつに熱心な信者である。


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 さて。

 そんな熱狂的信者・このはを、紅緒はどう思っているのだろうか?


 このはに対する紅緒の態度は、決して「冷たい」わけではないが、かと言って「特別かわいがっている」ということもない。

 要するに、「他の生徒と同じ扱い」だ。


 紅緒は、このはについてこんな風に言っている。

 小紅が、とある出来事をきっかけに、このはについて質問したときのことだ(第7話)。

小紅「どんな人なんですか?」

紅緒はずばり一言「長女」

小紅は呆気にとられる「……えっ?」

紅緒「どうも妹っぽさがないなぁと思ったら長女らしくってねぇ。アハハ!」


 ……つまり、こういうことだ。

 紅緒は、変態レベルのシスコンである(詳しくは第10回)。

 「妹」たる小紅と真白を溺愛している。


 一方、このはは「妹っぽさがない」。

 だから、溺愛の対象にはならないと言うのだ。


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 ところで、紅緒の言う「妹っぽさがない」とはどのような意味だろうか?


 作中では明言されていないが……おそらくは、このはの「努力家」なところや、性格的な「負けん気の強さ」、そして「自立心・独立心」が妹っぽくないのだろう。


 つまりこのはは、敬愛する紅緒に近づこうと頑張ってきたのに……頑張れば頑張るほどに、紅緒の理想像(=妹!)から離れてしまうわけだ。

 なんと不憫なことか!


※教祖(生徒会長の紅緒)と、信者のみなさん(生徒たち)。


【上手くいかない②】紅緒信者ゆえに真白と対立するが……紅緒から「仲よくしろ」と言われて困惑


 第9回で詳述した通り……紅緒は、真白を溺愛している


 このはは、これが面白くない。

 高1の冬に急に転入してきたかと思えば、紅緒と同居しているだの、紅緒から溺愛されているだの……じつに不愉快である!

 嫉妬はすぐに怒りに変わり、このはは真白を敵視するようになる。


 一方の真白。

 彼女は、普段は大人っぽくふるまっているが、実際には9歳の女児だ(詳しくは第12回)。

 すぐにムキになる。


 こうして2人は一触即発の関係になるのだが……そこへ紅緒が登場。

 そして紅緒が、このはに言う「真白と仲よくしてあげてね」。


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 紅緒としては、単に「転入してきたばかりの真白が困らないようにサポートしてやってほしい」という意味で言ったのだろうが……これは、このはにとっては大きな意味を持つ言葉だ。


 彼女は真白を疎んでいるが、それ以前に紅緒の信者である。

 つまり、紅緒の言葉は絶対だ!


 かくしてこのはは、真白に嫉妬しつつも、紅緒の言いつけを守るべく、そのわだかまりを必死に抑え込んで何とか上手くやっていこうと苦慮するのだった。

 ……じつに不憫、そして健気ではないか!


※幼女・真白。


【上手くいかない③】白夜が同族と知って結婚を考えるが……白夜には許嫁がいる


 別記事でご説明した通り(例えば第1回)……白夜や真白は人間ではない

 いまは人間に扮しているが、その正体は「もののけ」である。


 そして!

 じつは、このはも同族なのだ。


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 と言っても、彼らは元々面識があったわけではない。

 別の村出身であり、最初は同族であることに気づいていなかった(勘の鋭い白夜だけは早々に気づいていたようだが)。

 しかしやがて、このはも、白夜が同族であることを知る。


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 白夜が同族であると知ったこのはの行動は早かった。

 彼女はニコリと笑って……(第8話)。

このは「なんかボーっとしててあまりタイプじゃないけど……私、ママに言われているの。『同族の子とはなかなか出会えないんだから、会ったら唾つけときなさい』って。きみ、私と結婚して!うふふ!」


 突然のプロポーズである。


 言うまでもなく、白夜には小紅という許嫁がいるのだが……「冷やかされると恥ずかしいから秘密にしておきたい」という小紅のリクエストで、2人が婚約していることはごく一部の人しか知らない。

 つまりプロポーズした時点では、このはは2人の関係を知らなかったのだ。


 しかしこの直後、このはは2人が許嫁同士であることを知る。

 そして、このはどこかうつろな感じで……(第10話)。

このは「……始まってないけど……終わっちゃった?」


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 さて。

 ここで1つ考えてみたいことがある。

 「プロポーズしたとき、そして2人が許嫁同士であることを知ったとき、このはは白夜に恋心を抱いていたのか?」ということだ。


 ……おそらく、答えはノーだろう。

 前掲の「あまりタイプじゃない」という言葉からして、恋愛感情は持っていなかったと思われる。

 そもそも、このはが白夜に恋しているような描写は一切登場しない。


 ただそうなると……別の疑問が浮かび上がってくる。

 白夜と小紅が許嫁同士だと知ったとき、このははなぜうつろな表情を浮かべたのだろうか

 恋愛感情がないのなら、許嫁がいたとしてもショックを受けることはないと思うのだが……。


 作中では、「このはがショックを受けた理由」は明言されていない。

 そこでアレコレ想像してみた。


 私見では、以下が理由ではないかと思う。


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【1】恋愛感情はないが、「運命」を感じた可能性


 まず、このはは高1女子である。

 思春期真っただ中だ。


 そんな彼女が、この広い空の下で偶然にも同族の男の子と出会ったのである。

 ……何かしらの「運命」を感じたとしても不思議ではないだろう。


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【2】「恋愛感情」が重要ではない可能性


 少し堅苦しい話になるが……私たちが普段当然のことと感じている恋愛観・結婚観、例えば「一対の異性間における恋愛感情」や「『ロマンチックな恋愛 → 結婚』という順路」は、普遍的なものではない

 こうした考え方(「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」と呼ばれる)は、18世紀後半のヨーロッパで誕生し、その後世界中に広まった。


 これが日本で普及したのは、戦後のことだ。

 それ以前、多くの日本人は「ロマンチックな恋愛」とは無縁の生活を送り、お見合いを経て結婚していた。


 さて話を「未確認で進行形」に戻すと……彼ら「もののけ」は山奥で暮らしており、外の世界とはあまり交流がないという


 ……いかがだろう?

 そんな彼らが、いまも「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」以前の価値観を持っていたとしても不思議はないと思わないだろうか?


 実際、白夜や真白の住む村では「親が決めた許嫁との結婚」は珍しいことではないそうだ

 そして、白夜・真白と、このはは異なる村の出身だが、同じ「もののけ」であることを考えれば、似たような価値観・風習を持っていたとしても違和感はないだろう。


 つまり!

 このはは、「『恋愛感情抜きの結婚』って……別に普通のことだよね!」という価値観を持っているのではないかと思うのだ。


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【3】まとめ


 以上2点、①「白夜に『運命』を感じた可能性」、②「恋愛感情が重要ではない可能性」を踏まえて考えると……結論!


 「このはは、白夜に対して『恋愛感情』は抱いていない。しかし、『運命の人 =  結婚相手』とは認識していた」……のではないだろうか。

 このはにとって「恋愛感情」と「結婚」は必ずしも結びつくものではない。だから、「恋愛感情を抱いていない相手を結婚相手と見なすこと」は不思議なことではないのだ。


 ところが、上述の通り……白夜には小紅という「許嫁 = 結婚相手」がいた。

 このははショックを受けただろう。

 「えっ!?白夜は、私の『運命の人 =  結婚相手』じゃなかったの……?」というわけだ。


※右:白夜。


【上手くいかない④】高校デビューするが……訛っているところを小紅に目撃される


 このはは、高校に入学するまでド田舎に住んでいた。


 しかし、いまのこのは垢ぬけて見える。

 「ド田舎出身っぽさ」は感じられない。


このはのモノローグ「ずーっと山の中で育って、モブ以下に地味だった私。でも、街に引っ越してきて変わった!ええ!ほぼ高校デビューですが、何か?」(第8話)


 つまり、彼女は「高校デビュー」に成功したのだ。


 ところが、である。

 怒ったり、焦ったりすると……地が出てしまうことがある!

 例えばこんな具合だ(第7話)。

このは「なっ!バッ、バケモノ!?わたしが!?バカこくでねぇ!人のことバケモノ呼ばわりって何だぁ!オラみたいなめんこい子捕まえてバケモノはねぇっぺ!」


 そして、彼女が方言丸出しのセリフを発するシーンでは、「なぜか毎回すぐそばに小紅がいて、一部始終を目撃される。冷静さを取り戻したこのはは小紅に気づき……2人の間に気まずい空気が流れる」というのがお約束となっている。


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 ところで、このはにとって、小紅ほど扱いに困る相手はいない


 なぜならば……小紅は「紅緒の実妹」だ。

 また、「一時は結婚相手と考えていた白夜の許嫁」でもある。

 つまり、憧憬の対象だ。


 もちろん、嫉妬もあるだろう。

 「小紅ばかり愛されてズルい!」という怒りを覚えることだってあるに違いない。


 しかし、紅緒の身内を悪く言うことはできない

 それに、常識人・このはは、温厚な小紅を一方的に嫌うことができない(「ズルい、ズルい!うらやましー!……けど、別にあの子が悪いわけではないのよね。あの子にも、あの子なりの苦労はあるだろうし……」なんて具合である)。


 ……だから、このはは小紅が苦手だ。

 どう接すればいいのかわからないのだ。

 適切な距離感がつかめないと言ってもいい。


 ところが……よりにもよって、そんな小紅に隠しておきたい素顔を目撃されてしまう。

 なんと不憫なことか!


※不憫系美少女・このは。



 以上、作中登場する「このはの『上手くいかないエピソード』」の内、主たるものをご紹介した。

 彼女の「不憫さ」、そして「健気さ」をご理解いただけたと思う。


※再掲



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 最後に余談。

 ところで……よくよく考えてみると、このはと小紅はじつに興味深い関係にある

 すなわち、2人は鏡合わせの関係なのだ。


 小紅は、このはが持っていないものを持っている。

 一方、このはは、小紅にはないものを持っている。


 もしも「未確認で進行形」の続編が制作されるとすれば、こうした2人の関係性がよりクローズアップされるのではないか……と、このはファンの私は夢想している。


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 アニメ「未確認で進行形」の研究(全14回)はこれで終了です。ありがとうございました!

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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