バレエダンサーを描いた3作

私の母は少女漫画マニアだ。特に70~80年代がストライクゾーンのようで、山岸涼子さんの『アラベスク』、有吉京子さんの『SWAN』、萩尾望都さんの『フラワー・フェスティバル』も当然のように家にあり、母がこれらの漫画からバレエに憧れたことは想像に難くない。

私もその遺伝子をまんまと引き継いでいたのか英才教育(?)が功を奏したのか、最近はバレエに関する本を立て続けに読んでいる。

ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンス―ル』(ビッグコミックス)小学館
ISBN 9784091874498

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『ダンス・ダンス・ダンスール』は、ここ何年か最新刊を追い続けている。格闘技をやっていた男子中学生の主人公がバレエと出会い、魅了され、のめり込んでいく漫画。この作品は、バレエに興味がない状態で読んでもきっと気に入ったと思う。

だって主人公は「男がバレエなんて」って思っている普通の男の子。主人公がバレエ初心者だから、読者にも予備知識は必要なし。ただ、主人公の成長スピードが普通じゃない。どんどん才能が開花していく様子が読んでいて爽快!

読み進めていくと、白タイツの王子について認識を改めたりコンテンポラリーへの理解が深まったりと、バレエをより楽しめるようになったのも嬉しい。今までのバレエ漫画は当たり前のように女の子が主人公だったから、男の子目線でのバレエ漫画は新鮮でもある。

バレエって肉体を使う運動だから、スポ根が好きな人にも刺さりそう。ランナーズ・ハイならぬダンサーズ・ハイになっているシーンは、とってもわくわくする。好きなことに情熱を捧げるって、キラキラしていて本当に格好良い。


先月現役を引退された吉田都さんも、繊細で上品な踊りがキラキラしていて素敵なバレリーナだった。

吉田都『バレリーナ 踊り続ける理由』(河出文庫)
ISBN 9784309416946

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こちらは今年文庫化された吉田都さんのエッセイ。年を重ねることでの体の変化と向き合いながら、さらなる高みを目指す吉田都さんの心境を垣間見ることができた。前向きで、「芯」のある女性は美しいなと感じるエッセイ。

これからは大原永子さんに代わって、新国立劇場の芸術監督に就任されるとのこと。楽しみです。


バレエといえば、私の中で真っ先に思い浮かぶのはKバレエ カンパニーの芸術監督・熊川哲也さん。

熊川哲也『完璧という領域』講談社
ISBN 9784065125458

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今年5月には熊川哲也さんの自伝が出版された。1998年出版の『メイド・イン・ロンドン』ではバレエを始めてから英国に渡りトップダンサーになるまでが書かれていたけれど、この自伝ではその後の出来事が書かれている。日本でKバレエ カンパニーを結成し、大きな怪我を経験して、カンパニーを成長させながら現在に至るまで。ダンサーとして、芸術監督として、経営者として、そしてバレエをこよなく愛する者としての自身の軌跡が綴られている。

熊川哲也さんの自伝やインタビューを通して伝わるのは、ただひたすらにバレエを愛していてバレエが楽しいという気持ち。踊りももちろん素晴らしいのだけど、この一貫した姿勢が本当に魅力的。

熊川哲也さんは、「バレエは総合芸術だ」と繰り返し言っている。踊りはもちろん、オーケストラの演奏や豪華な舞台美術、ダンサーのために作られた舞台衣装、さまざまな芸術が一度に楽しめるのがバレエ。言葉がない分、言語の壁を感じずに海外のバレエを観に行けるのも魅力だ。

ただ、言葉がないからこそもっと知りたい!とも思う。ダンサーが発信する言葉やフィクションから自分なりに知識と視点を増やして、バレエ鑑賞をもっと楽しくしていきたい。

来月は初めてコメディ・バレエを観に行く。男性が踊る4羽の白鳥のあれ。まだまだ観たい演目・バレエ団がたくさんあり、それを観に行く日を思ってわくわくしている。

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