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一つの勇気

作ってもらったコーヒーとホットドッグをお腹の中に入れる


どうしてだろう


こんなにも美味しく感じるのは


こんな一気に彼に心を奪われるなんて


私、前まであの人には落とされたくないって思ってたのにな


馬鹿だな


携帯をいじりながらどんどん食べ進めていくと同時にホットドッグを持った彼が再び目の前に現れる


もうなに


今気持ちが忙しいんだから


休憩に入った彼が私の隣座っていいか許可を取ってきた


そんなこと聞かないでよ


座ればいいじゃない


そんなに近いと本当に心臓の音が聞こえちゃうよ


視界には彼しか見えない状況だった


お腹空いていたのかな


ホットドッグを思いっきり頬張る彼が可愛く見えた


リスみたいに頬にいっぱい詰め込んでもぐもぐしている


がぶりつく勢いが強くてソースが彼のサロンエプロンに零れ落ちた


私はティッシュを取り出して


なにしてんのと言いながら拭き取る


なにしてるのは自分の方だ


彼からしたら余計なお世話だろう



なのに気づいたら手が動いていた


バレちゃう


私の気持ち


そう思っていても止まらない


心の中の自分と


もう一人の自分が駆け引きしていく



『バイト終わったら時間ある?』


なんてこと聞いてるの


『渡したいものがあるんだけど…』


ついに言ってしまった


彼はふざけて


「なに?責任誓約書だったりする?怖いよ!笑」


困惑を隠しきれない私は冗談で


『そうかもしれない!!』


なんて言っちゃって


「バイト終わったら連絡するね」


来てくれるんだ


私はずっとドキドキしっぱなしで段々疲れていた


スタミナゼロに近いよ


長距離走ってないのに走った感じ


私は彼への気持ちがいっぱいでホットドッグも食べてるから余計お腹いっぱいで飲み込む速度が低下していた


いつの間にか私より早く食べ終わっちゃって


喫煙所に誘ってくる


口に手を添えて


『ちょっとまってね』


て言うと


「いいよ、ゆっくり食べて」


とまた優しく話しかける






今まで仕事の話ばっかりだった彼とはその日からプライベートの話が増えていった



先にアウターを着る彼の匂いが漂って



クラクラしそうになった


急いで口に詰め、私もアウターを着て彼がドアを開けて私を先に外に出してくれる


レディーファーストまでできちゃうの………



はぁもっとくらくらする


煙草を吸いながらまたプライベートの話に戻り兄弟の話や学校、私のこれからする仕事の事の話をたくさんした(当時就職中だった私)

彼は私と話すとき笑ったりちゃんと目を見てくれる

リアクションも大きくて


他のスタッフと笑って楽しく話すみたいに私との会話で沢山声を出して笑ってくれるようになった

クシャッと笑った顔


彼の一つ一つの行動に目がやられる


その時ももう十分だよってなるぐらい、私の事を褒めてくれた




あっという間に彼が仕事に戻る時間になった


サロンエプロンに着替えたあと振り返って


「じゃあ、終わったら連絡するね、お疲れ様」


と言ってホールに戻って行った



私はずっとドキドキしながら家に帰る


その日は夜ご飯が進まなかった


彼に書いた手紙とチョコレートを包んでリボンを結んだ


動いてないともどかしい気持ちばかりで私は早めに外に出て散歩をしながら彼の連絡を待っていた



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