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あたしを作るものたち 3

突然だけど、うちの母は本当に本が好きな人で、多分子供のことも本好きになるように育てたかったんだろうなぁ……と、思う。
事あるごとに「これ、面白いよ」と言ってあたしに本をすすめてきた。

この本を勧められたときにあたしは中学生だったのか、高校生だったのかは覚えていないけど、真っ先に思ったのが「こんな分厚い2冊、読めるはずがない」だった。
それくらいにこの「永遠の仔」は分厚かったし、読み始めればとても重くて苦しい本だった。

始まりはとある養護施設。
主人公たちは虐待を受け、そこに預けられていた。
そして、とある事件をきっかけに別々の道を歩み、癒えない傷を抱えたまま大人になっていく。
偶然が重なり再会するも、事件に巻き込まれ……。

三者三様に孤独や悩みや悲しみを抱えて、上手く周りに寄りかかることも出来ずに、ただただ不器用に幸せにはなれない、なってはいけないと思いながら生きていく主人公達。
それは、両親とも友達ともあまり上手くいっていなかったあたしの心にぴったりと嵌まり込んだ。
もちろん、自分がそこまでの不幸に見舞われていたとは思わないし、思春期に多くの人が通る道に迷い込んだだけだったのはわかっているけど、それでも、この本はその時のあたしの心に寄り添ってくれた。

家族とは何か、幸せとか何かを、とても考えさせられる1冊。
というか、この天童荒太という人の小説は往々にしてどれも重くて苦しくて救いようが無いものが多い。
人はみんな悲しいんだ、それでも生きていかなきゃいけないんだ……と、思い知らされるし、みんながみんな立ち上がれるわけではないんだと慰めてくれたりもする。
多分、明るくてハッピーな気持ちの時に読むよりも、少し沈んでいる時に読む方が元気になれるんじゃないだろうか。

あたしは未だに自分の色んな問題について抱えたままで、何も答えは出せていないけれど、それでもまぁ、天童荒太の小説に出てくる人達のように生きていくんだと思う。
だから、間違いなくこの人の小説も、あたしを作っている。

おわり。

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