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『岡本昌也は映画が撮りたい!』#2

文と映像を通して、岡本昌也がものづくりについて考えるエッセイです。第二回はものすごい初歩的な映像を撮ったこととこれからについて。映画撮影のための映像『フラグメンツ』シリーズも掲載します。

フラグメンツ#2『帰』

抱きしめるとしたら、9の方に腕回す

 何かを作りたいという衝動はいつでも美しい。生きるうえでもっとも大切にしたい衝動だ。おれには金もコネも技術もないがカメラはある。「何かを作りたい」は誰にも奪えないし、駄作か佳作かは今はまだ、関係ない。とにかく撮るのだ。
 はじめに画面の比率を決めよう。かつての映画は4:3がスタンダードだった。グラスの酒の水かさまで統一した小津安二郎の緻密な構図、『時計じかけのオレンジ』冒頭のドリーアウト(カメラが手前に引いてくやつ)……かずかずの美しい画を生み出した4:3、心惹かれる比率だ。ちなみにスマホなんかで慣れ親しんでいる16:9は、テレビが出始めた頃、どんな規格の映像も収まるようにっちゅーことで作られた比率らしくて、だから、美しさみたいなものはあんまり考慮されていないらしい。なーんかぼっちゃりしていて気持ち悪いよね。都合良く生み出されたかわいそうな16:9。抱きしめてあげたい。
 さておき俺は、抑えきれない創作意欲のままに、安住の地の団員、森脇に連絡した。
「今日、夜なにしてる?」
「ん?」
「映像撮りたいねんけど映ってくれへん?」
「おけ」
その間、ものの10秒、森脇がタイプしたのはたったの3文字「ん?」と「おけ」。これは本当にすごいことだ。すぐに出演を快諾してくれる、魅力も演技力も最高の俳優がちかくにいる。この点は映像作家として、誰にも負けないおれの強みだろう。連絡したとき森脇は、家でなんとなくyoutubeを見ては限られた人生をさらさらドブに流し込んでいたらしい。win-winではないか。俺はさっそく意気込んで「駐輪場からチャリをだす森脇」というかなりどうでもよい映像をやみくもに撮影しはじめた。……しかし、うまくいかん。なにかが違う。撮れたものを見返して、違和感の原因を探った。
 歩く森脇、デカくてダサい貼り紙、森脇、道に滞留している大学生、バスに乗り遅れたリーマン、森脇、どこからか湧き出たやけにスピードの速いおばちゃんの群、森脇、おばちゃん、おばちゃん、森脇、おばちゃん、ああ、こいつらだ。……あのな、おまえら映ってんねん!マジで。
 カメラは無慈悲にすべてを映しだす。森脇を映したいだけなのに、おばちゃんが映っちゃう。これを冷静になって考えると、ふたつの気づきがある。ひとつは、「みんな生きてるだけでなんも悪くない」ということ。これはマジでそう、猛省します。おれが勝手に撮って勝手にイライラしているだけだ。おばちゃんたちは活き活きしているのみ、まったく悪くない。ごめんとしかいいようがない。そしてもうひとつは、映像が「情報の省略」だということ。当たり前だけど、カメラはただレンズに映る世界を実直にトリミングする。そこに何を「置かない」か。言ってしまえばそれがすべてだ。いつでも、撮りたくないものをおれん中で明確にするべきだ。ファインダーを覗き込むだけではなくて、フレームの中と外を見よう、わかった。気づかせてくれてありがとう──決して走ってはないのに、なんか速いおばちゃんの群。

チルい映画を撮ってみたい

 もちろん、何を撮らないか、なんてのは何を撮りたいかがあってこそのことで、いわば手続き、技術、つーか所詮は小手先の話だ。おれは何を撮りたいんだろう。本当にただ映画が撮りたいという欲求だけでやみくもに突っ走っても『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』でバンクシーに揶揄されたミスターブレインウォッシュのクソムービーみたいなものを生み出してしまうだけだろーし、いやあ、避けたいね。
 いまの時代がなんだか極彩色でガッチャガチャしているせいだろうか、おれはチルい映画を撮ってみたい。静かで、心地よい時間とハッとする画が映っていて、煙が登ってくような確かな現象と、輪郭は薄いけどどろっとした濃いコミュニケーションが交錯するみたいな、そんな映画を撮りたいよ。あまりにもとりとめがなさすぎて途方に暮れるが、書きつつカメラを回しつつ、はっきりしてく未来を願う。今日はこれから森達也のドキュメンタリー『i〜新聞記者ドキュメント〜』を鑑賞する。森達也は何を映して、何を映さなかったんだろう。確かめてみよう、楽しみだ。

宣伝コーナー

本業の演劇もいろいろやっているのでここで宣伝しようとおもいます。よかったらチェックしてね

【全編映像公開】劇団どくんごというテント芝居で全国を旅してる激ヤバな人たちの劇の幕間で発表したゆるふわミュージカルの映像を公開した。ふゆは寒いのでこれで心、温まってほしい。

【音楽イベント出演】11月24日(明日じゃん)に音楽イベント『PANIC VACANCES 2019』に出演する。バカがミタカッタ世界。とコラボレーションして、詩と音楽と演劇のあいだのパフォーマンスをやります

岡本昌也は映画が撮りたい!#2
【月4回更新予定】

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1995年、冬生まれ。演劇作家・映像作家。京都在住。劇団/アーティストグループ『安住の地』に所属してます。       安住の地HP↪︎http://anju-nochi.com/

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