見出し画像

劇団しようよ『パフ』2018 について

こんにちは。京都で活動している「劇団しようよ」です。この週末2018年11月9日から11日まで、沖縄のアトリエ銘苅ベースにて『パフ』という作品を上演します。劇団しようよの作品は、いつも宣伝するときに難しくどんな作品と簡単に言えないところがあります。なので、こうやってまとまった文章として、なるべくわかりやすく書いていきたいと思っています。


〈すぐにわかる要約〉

劇団しようよ『パフ』は2014年、ピーター・ポール&マリーの「Puff, the Magic Dragon」という楽曲をもとに誕生しました。魔法の竜:パフと少年:ジャッキーの交流と別れを歌った楽曲を下敷きに、災害に見舞われる島と、そこに住むぼうやの関係に読みかえたファンタジー作品です。

このたび上演する2018年版は、「4年」という時間の流れ、時代の変化を背景に、「老い」と「自由」を巡る、沈みゆく島の物語として大幅にリクリエイションしました。
多くの高齢者を抱えた島が沈んでいくなか、若さとお金と、自由を持つ者たちは順番に順番に離島していく…。4年前は人形劇として作った『パフ』ですが、今回は大きく形を変えて、骨太の会話劇に取り組んでいます。

この『パフ』という作品を通して、劇団しようよでは社会の一側面を切り取ってみたいと考えています。ある社会の見え方を物語として切り取りたい、ある島の物語を通して、故郷の問題や「年をとる」ということについて考えてみようと思います。
みなさんにも客席で一緒になって考えていただいたり、そうでなくても切実な部分と関係をむすんでいただいたり、なにかに思いを巡らせることのできる時間をお届けできると信じています。

劇場でみなさんの一人一人と出会えることを、本当に楽しみにしています。

*大原渉平による全文は以下をご覧ください*


①作品のはじまり

もともと、この作品は2014年に上演しました。その際は、震災からまだ3年しか経っていなかったこともあり、やはり自分のつくる演劇でも「突如襲いかかる脅威と私たち」ということを考えていました。作品をつくるきっかけになったのはアメリカのフォークソンググループ ピーター・ポール&マリーの「Puff, the Magic Dragon」という楽曲です。そう「パフ♪魔法の竜が~」という感じで音楽の教科書に出てきませんでしたか?それは魔法の竜:パフと少年:ジャッキーの交流と別れが歌われています。魔法の竜は年を取らないけれど、ジャッキーは大人になって、パフに遊びに来なくなる・・・そんな歌詞なのです。その部分に大変大きな感銘をうけ、そこをヒントにつくった演劇作品、それが劇団しようよ『パフ』です。竜と少年のすれ違う関係を、災害に見舞われるとある島とそこに住むぼうやに読みかえたファンタジー作品として2014年に生まれました。


②2018年版『パフ』にむけて

そこから4年経って、今回の2018年版の企画がはじまります。2014年版の台本を開いた時に「だめだ、ぜんぜん面白くない・・・」と自分で書いたものに自分で感じたのです。それもそうでした。災害をあつかった『パフ』は初演から4年、あえて言葉にだしますが震災から7年経っていたわけで、物語で描かれていることが、いまの時代に必要だと自分自身が思えなかったんです。だから今回一から書き直すことにしました。


③2018年版『パフ』はどんな作品?

そこで描き直し、緻密な会話劇としてつくりました。4年前は人形や抽象的な舞台で繰り広げられるファンタジーだったのに対して、今回はがっつり骨太の会話劇に取り組んでいます。たしかに劇団しようよの特徴の生演奏や、空間を歪ませるような舞台美術を揃えてはいるのですが、今回はとある物語をじっくりとお客さんに見てもらおう。そう思っています。


④だから、2018年版『パフ』はどんな作品??

長々となってしまっています。すみません。今作についてです。描いているテーマは「老い」と「自由」を巡る沈みゆく島の物語です。・・・・・・・・・まだ漠然としてわからないでしょうか。


⑤あらすじ

今回の物語のあらすじは、こんな感じです。・・・とある「わが島」にはたくさんの高齢者と一部の若者が住んでいました。その島はとある理由により数十年かけて沈むとされています。幾度となく対策をしたものの歯が立たず、行政はついに島の解体に踏み切ります。つまり、「島」に住む人々は順次島を離れ、「本土」に移り住まなければならないのです。若さとお金と、なにより自由を持っている人から順番に離島していく。これは、そんなゆるやかに滅び行くことが決まった島のお話です。一方、島にはお年寄りが増えていきます。お年寄りは言います「わしはこの島で生まれたから、この島で死にたい」と。・・・・彼らのことを見守る若者と、離島へと進んでゆく若者。彼らの間にある関係を描いた会話劇です。


⑥劇団しようよは作品の中で社会の問題を考えたいです。

僕は、作家・演出家なのでこういうことをどこまでことばにしてよいものか・・・とも思うのですが。端的にいうと、僕の目から社会がどう見えているのか、そんなものを区切って・切り取って、演劇にしてみたいと思うんです。今回、描いているものは上にも書いてあってわかるとおり、介護の問題。貧困の問題。そんな部分なのではと思っています。僕たちが、この国・星に生きているひとりの人間として、抱えている課題はたくさんあるかもしれません。豊かな人とどう向き合うべきなのか、老いてゆくこととどう向き合うべきなのか。弱い立場の人とどう向き合うべきなのか。わたしの自由とはいったいどんな形をしているのだろうか。そんなことを描いています。


⑦どうして老いがテーマなの?

僕はこれまで介護の経験はありません。人から話を聞いたりする、そんな程度の距離感しかありませんでした。ですが、僕は実家に帰るたび、祖父母がへってゆき、飼い犬が亡くなっていき、両親が昔では想像できなかったような弱々しくなっていく様を見ていて、(適切なことばかわかりませんが)実家に帰るたびに「死のにおい」を感じていたんです。老いていき、朽ちてゆく、なにかの香りといいますか。その気配といいますか。いつか、この故郷にあるものは形を失ってしまう。そして、両親をはじめ、彼らをいつまで僕は見守れるんだろう。助けてあげられるんだろう。若い僕はなにができるんだろう。そんな思いでいたのです。


⑧竜は年をとらない。少年は年をとってゆく。

その時、歌詞のフレーズが聞こえてきました。「A dragon lives forever but not so little boys」とある教科書では「年をとらない竜とは違い、ジャッキーはいつしか大人になり・・・」という部分です。2014年版ではある意味災害をスペクタクルとして描いてしまったけれど、2018年のいま、この「年をとる」ということに着目して作品をつくりたい。そんな思いでいたんです。


⑨故郷を捨てるか、故郷と死ぬか

ともあれ「島」というものを題材にした作品になりました。つまり「故郷」ということばがキーワードになってきます。なので今回は日本各地から出演者を集めました。東京からは東京デスロックの夏目さん。福岡からは万能グローブ ガラパゴスダイナモスの横山さん。そしてそして熊本からは不思議少年の森岡さんに出演いただきます。くわえて京都からは劇団しようよでいつも創作をともにしている川上さんが参加です。そんなたくさんのバックボーンをもったひとたちと創作に取り組みました。「とある島」ってどんなものなのだろう・・・そんな問をいまだに続けています。出演者にもぜひ注目いただきたいです。


⑩誰に見て欲しいのか

これは本当に難しい話です。できるなら、すべての人に見て欲しい。だけれどもちろんそんなことは叶いません。なのであえていうと、“故郷がある人”にこの作品を受け取ってもらいたいと思います。どうでしょうか・・・これもまた漠然としているでしょうか。・・・こういうと、じゃあ東京のお客さんはどうなのよ、となるかもですが、むしろなんです。むしろ、東京という故郷を持っているひと、どこかの故郷から離れて東京で過ごしているひと、そんな人たちでごった煮になっている東京だからこそ、いっしょに劇場で故郷を考えたい・・・そんなふうにも思います。東京にあるもの・ないもの、なんだかそんなところまで来てくれる方々のイメージが広がればいいなと思っています。


⑪わたしは若いし、年もっている。わたしは豊かだし、とても貧しい。

僕、演劇をしているんです。将来も結婚したいしこどももほしい。でも、切実に演劇創作も続けたい。こんな僕を両親はいつも許してくれたし、こんな僕を成立させてくれている職場がある。毎日、お金がとても苦しいのに、でも実のところ食べたいものはその気になれば食べられる。ほしいものもたくさんあるけれど、演劇ばかりやっているまいにちはきっと、そう、自由なんです。豊かだと思います。僕はとっても豊かと貧しさのグラデーションにいると思っています。正直な話、お金持ちの気持ちもわからないだろうし、本当に貧しいひとの気持ちもわからないかもしれない。そしてこんなことを言ってしまうと怒られてしまうだろうけど、僕はだれかより豊かだし、だれかより乏しいんです。そんなアンバランスな感覚をしっかり作品に乗せてみたい。そう思っています。劇中には、誰が誰より豊かなのか、貧しいのか、自由なのか、不自由なのか、そんな問ばかり出てきます。


⑫もしも興味をもってもらえたら

あけすけにいうと、演劇は時間もお金もとてもかかってしまいます。どんな芸術もそうかもしれませんが、一晩で作品は成立しません。そんなことお客さんには関係ないと知りつつですが、見に来てもらえなかったら劇団は潰れます。そういうリスクを背負って東京までやってきました。・・・ですので、もし、この文章をここまで読んでくれていて、なにかにひっかかるところがあったとしたら、この際、同情でもかまいません。格好つけません。まずは劇場まで足を運んでほしいなと思います。きっと、劇場の中でみなさんにとっても切実なものと関係をむすべるんじゃないか、そう思っています。そうじゃなかったら申し訳ない、という思いですが、演劇というひとつの時間を共にする芸術のなかで、一時でもなにかに思いを巡らす時間にできればと思ってます。


⑫劇団しようよで『パフ』のためにいろいろやっています。

劇団サイトでいろんな人から応援コメントをもらっています。また、インスタグラム上ではパフにちなんでドラゴンのイラストをいろんな人に描いていただいています。また、ユーチューブでは2014年版ですが『パフ』のダイジェスト映像を流しています。その他、ウェブサイトでいろいろ楽しんでもらえるものがあると思うので劇団しようよサイトを見ていただきたいです。


なにか言い忘れたことないかなと考えています。簡単な文を書くつもりが、いつもいつもくどくなってしまいます。


ですが、劇場で誰かと出会えることを本当に楽しみにしています。また関東に演劇をもってきたい。その一歩に、まず今回の劇団しようよ『パフ』、観に来て頂けませんでしょうか。

お待ちしています。

==========

劇団しようよ 2018年リクリエーションツアー『パフ』

◎出演◎ 西村 花織  藤村 弘二  大原 渉平  吉見 拓哉  川上 唯 森岡 光 ( 不思議少年 )  横山 祐香里 ( 万能グローブ ガラパゴスダイナモス )  夏目 慎也 ( 東京デスロック )

https://www.gkd-444.com/next-puff/



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

1
京都の「劇団しようよ」で活動しています。脚本・演出・デザインなどをしています。1988年11月11日滋賀生まれです。http://www.gkd-444.com/
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。