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5.別れ

「また元気な時に話そう」

前の私だったらきっと、
「めんどくさい?」って聞いたりとか、さらに「ごめんね」を繰り返したりとか、とりあえずめんどくせぇ病み病みメンヘラ女を発動していたであろうこの言葉。
でも今回は、この優しさが嬉しくて涙が出た。

付き合って1年と8ヶ月。2日間別れた時期が1ヶ月ほど前にあったが、付き合う前の数ヶ月も考えるともっと、喧嘩やら口論やら色々してきた。
DMやdiscordで話し始めて、LINEになってから何度「別れ」という単語が出てきたか。

2023年5月9日現在、「別れ」だと173件、「別れよう」だと8件のメッセージが確認できた。正直ビビった。

出会った当時、彼はフリーターで配信者で、恋人に振られた直後。私には恋人がいた。
体内時計が全く機能していなかった私にとって、早朝など「行きにくい時間」はむしろ好都合で、彼の配信に顔を出すことは容易く、いつの間にか常連になっていた。
そんなとき、「彼氏と別れようかな…」とかぐずぐずと歯切れの悪い言葉を繰り返す私に、「こんなとこでぐずぐずしてないでさっさといってこい」と言って、踏み出せなかった別れ話を後押しされた。


ここまで、文章だけで見ると仲が良さそうだが、お互いがお互いのことをしっかり嫌いあっていた。
私は依存先を探してフラフラしていたし、彼は都合のいい女だと思って、個人的な話をし始めた。今考えると頭がおかしいんじゃないかと思う。

なぜ嫌いなやつに個人的な相談を持ちかけたり、変化に気づいて様子を見てみたり、なんなら手助けしてみたり、嫌いにしてはお互い献身的だったんじゃないだろうか。

今でも、お互いに分かり合えない時は、「まあ、嫌いあってたもんな」とネタにして一息つくくらい、強烈に残っている感覚である。

付き合ってからも、お互いに合わない凸凹は続いた。
「Twitterは浮上してるのにLINE返してない」だの、
「既読つくの遅い」だの、
まあとにかく色々あった。どうはめても収まりが悪いガタガタのパズルだった。

でも、彼が仲良くしている占い師達(プロ、アマチュア含む)は全員、口を揃えてこういった。


「別れるな」と。


喧嘩して、ちょっと運に頼りたくなった時、誰に聞いても「別れるな」と強く言われたし、超毒舌的確アドバイスをしてくれる人もいた。

そのおかげで今まで続いていると言っても過言ではないだろう。
「占いなんていいことだけ信じればいいだろう派」だった私たちが踏みとどまったのだから相当である。

そうして色々あったうちに、彼は就職し正社員として働き、私はネイリスト資格を取得するために頑張ってはいたが壁にぶち当たって何も出来ない状態になった(一応現在、アルバイトは検討しているが)。

そうなれば、色々と変わってくるものがある。
「価値観」「考え方」「活動時間」…
他にも色々あるだろうが、主に彼氏くんが社会人になったことで変わったことが大きかった。
社会を知った彼にとって私は、「世間知らずの箱入り鬱娘」となったのだ。我ながらなかなかインパクト強めである。

仕事ができない自分に腹を立てたり、人間関係に悩んだりしている彼にアドバイスして、「助かった」と言われることもあったが、それよりも私の世間知らずさが目立ったらしい。
それからはずっと、週一で別れ話をしていたんじゃないかと言うくらい別れる別れるばかり言っていた。

そして、例の2日間である。

2日間、お互いに違う相手と連絡をとったり、通話したりしていたのだが、私も彼も同じことを考えていたらしい。「なんか違う。」と。
とにかく居心地が悪かった。私は未練タラタラだったし、彼も相手に対して嫌悪感を抱いたらしい。
一言では表しがたいが、とりあえず「違和感」が拭えなかった。まあ、別の人間と話しているんだから当たり前と言えば当たり前なのだが。
そうして彼から「やっぱ戻ろう」と連絡が来たのである。

二つ返事で応じて、すぐに通話を繋いだ。
2日間で出会ったネットに蔓延るヤバいやつの話に始まり、やっぱり2人がいいねといちゃったり。
気まずくなるかと思いきや、自然と「いつもの会話」ができたことに驚き、安心した。
やっぱりこの人じゃなきゃいけない。そう思った。

その後もゴタゴタが続いて、お互いに不満も不信感も言い合ってやっと今に至るのだが…
こうして文字に起こすとやっぱり、「長ぇな」とか、「なんで続いてるん?」とか、本人でも思う。
まあそんなことはどうでもよくて。

最近LINEや通話で話しながら、「成長したな」と実感することが多くなった。
いつもなにかの拍子にマイナスな話になってメンタルがブレるのに自分から話を切り上げられた、とか。
長時間連絡が無い時は「寝てるんだろうな」「手が離せないんだろうな」と、ある程度の妥協ができるようになった、とか。

そして冒頭の、「また元気な時に話そう」である。

以前なら「嫌われたかな」と思ってごめんやらなんやら言葉を並べていたのが、すっと「ありがとう」という言葉が出てきたり、そもそも「また元気な時に話そう」という言葉が出てくる余裕もうかがえる。
成長してるしてないでも口論が絶えなかったが、そんな私たちがお互いに歩み寄って、ガタガタのパズルを何とか埋めようとお互いに頑張りあえているのかなと思うと、ちょっと感慨深い(そんな感情に浸っていい身でないことは気にしない)。


今後も少しずつ成長して、お互いに「大人になったね」と言える日が来るのが、ちょっと楽しみになった。
この鬱期が終わったら、私も彼のために、そして自分のためになることを考えなくては。

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