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日本の映画市場って、成長してるの?

2019年、日本の映画市場が最高記録を更新

2019年の日本の映画市場が過去最高の2600億円を越え、動員数は述べ1.9億人となったと映連が発表しました。

映画業界、夢の「動員2億人」には、あと一歩及びませんでしたが、売上は前年比17.4%増。これまで過去最高だった16年の2355億円を超える、記録の1年となりました。

大きな要因として挙げられるのは、2点。
19年6月以降に順次改定された「映画料金の値上げ」と、10年に1度並ぶかという「強力なフランチャイズの集中」でしょう。


6/7公開「アラジン」(最終121億)
7/12公開「トイ・ストーリー4」(最終100億)
7/19公開「天気の子」(最終140億)

とくに、上記3タイトルに代表される「夏休みタイトル」以降は、全ての映画作品が、嫌でも「値上げ」の恩恵を受ける形となりました。

また池袋グランドシネマサンシャインのオープン等、シネコン環境の整備。IMAXや4Dといったアトラクションシアター、応援上演といったイベント型興行の高稼働等。

様々に映画興行を後押しする歯車が噛み合い、日本の映画市場は記録更新に至ったものと考えられます。


その頃、遂に日本の4倍近くまで成長した、中国映画市場

他方で、中国の映画市場も2019年、歴代記録を更新してます。こちらは市場約1兆円(642億6600万元)、そのマーケットサイズは実に日本のおよそ3.85倍。前年から5.4%の増加で、成長は鈍化しつつあるが、なおも拡大を続けてます。

中国の年間上位タイトルを見ると、

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旧正月のSF大作「流転の地球」
興行収入約725億4000万円(46億8000万元)

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夏休み映画のアニメ「Ne Zha」
興行収入約766億6000万円(50億1000万元)

日本ではあまり認知されてないかもしれませんが、『天気の子』の実に5倍以上の興収と、とてつもない数字を「国内だけ」で稼ぎ出し、全世界の2019年映画マーケットの12位、13位にランクインしています。

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引用:2019 Worldwide Box Office

実に99%が国内シェア(中国の観客)という自給自足ぶりで、世界ランキングに食い込んでくるあたり…中国映画市場の規格外のサイズを物語っていますね。人口総数が、やはり圧倒的です。

なお2019年の日本の映画市場、洋画・邦画の売上比は、邦画が55%、洋画が45%くらいと、前年から比率に大きな変化はありません。これに対し、中国の場合は64%が「国産コンテンツ」という、売上構成比になります。

しばしば、ハリウッドの洋画大作が、日本での興行成績がいまいち伸び悩むと、熱心な洋画フリーク達の間で不平・不満が起きすケースがりますが、

非ヨーロッパ、アジア圏の映画マーケットの構成は、基本的はドメスティック>インターナショナルという具合になります。自国のコンテンツが、やはり好きなんですねえ。

そして、現在世界2位の中国映画市場と、ハリウッドを有する世界第1位の北米映画市場の差は、今限りなく埋まりつつあります。

19年度の北米年間興行収入は、1兆2500億円(113億2000万ドル:Box Office Mojo調べ)。

北米は18年より4.9%市場がシュリンクしており、飽和気味ながらも拡大を続ける中国市場(現在1兆円)が、世界第1位の映画市場となる日は、この数年のうち、そう遠くない未来で起きることでしょう。

現在、日本は世界第3位の映画市場を有しています。ニュースの通り、2019年、過去最高の売上に到達したものの、これは残念ながら様々な「変数」によるイレギュラー値と捉えるのが自然で、成長市場とは言えません。

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引用:【市場比較コラム】映画市場世界トップ3 日本・アメリカ・中国の市場動向

ただ、日本の映画市場にまったく希望を抱けないかというと、決してそんな面白くない話をしたいわけではありません。

国内映画市場こそカンスト気味ではあるが、アジアの隣国に、世界1の映画市場ができるというのは、日本の映画産業という視点で見れば、決して悪い話ではありません。

ここで盛り上がってくる(きてほしい)のは、日本の国産コンテンツの輸出をめぐる議論です。

世界市場で見たときに、供給できるコンテンツの品質、かけられる製作費の限界、製作委員会のしばりなど、様々な課題を抱える日本の映画・エンタメ・コンテンツ産業ですが、

この拡大する中国市場の獲得・アジアから再編されつつあるグローバル市場で「どうコンテンツ産業としての存在感を築いていくかは」2020年-2030年、映画だけではない「日本のエンタメ」のビッグテーマです。

あらゆるアイデアとチャレンジが試される必要があり、様々な発見や提言を、このnoteでも行っていきたいと思っています。本日はここまで。


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