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新書の在り方・読まれ方

この記事は、著作の内容についてまとめたのではない。新書の在り方・読まれ方についてまとめてみた。

20世紀までの新書

 1979年、浪人を終えた。進んだ学部は社会学部だった。社会の先生になれると思いこの学部に入学した方が多かった。しかし、実際は違う。社会という曖昧な概念を定義して、その各論として"〜社会学"を学ぶところであった。ただ、社会の先生になる方は多かった。ボクは、社会福祉系を勉強したくて進んだ。
 他の社会科学よりも後発で19世紀あたりから芽生え、20世紀には日本の社会学も確立しつつあった。ありがたいことに、偉大な先駆者の著作は、新書化されたり新書としてボクらは手にすることが出来た。学ぶテキストは安価でありがたかった。逆に、教授の本は高かった(買わなかった😆)
 例えば、内田義彦「資本論の世界」(岩波新書)や南博「社会心理学」(岩波新書)は、300円くらいだった。その種本となった古典は、岩波文庫の中古本で30円前後だった。今の新書は、1000円だよね。カバーのない青本→カバーのない黄色本→カバーあり各種と変わった。
 リアルに読んだ新書は、「うるしの話」「お経の話」「日本の誕生」だ。新書は読みやすい大きさで、持ち歩きやすいのでありがたかった。

 この頃までの新書は、学者・専門家・教授などが描いた。その特徴は、自分の研究成果などを広く伝える存在だった。入門書から、学問的な問いかけもあった。時には、学問的な下地ないと読み解くことはできない難解の物もあった。極めて、アカデミックな書籍であった。

21世紀以降の新書

 21世紀が明けて、新書が大ブームとなった。ブームを起こしたのは新潮社だ。新潮社は、著名な人物に世相を描いてもらった。養老孟司「バカの壁」や藤原正彦「国家の品格」だ。他にも、発行するごとにヒットが続いた。岩波新書や中央公論などと大きく水をあけた。
 内容は読みやすい。字も文庫より読みやすい。トピックスのクローズアップが優れていた。今では、学問的な地平を外せば新潮新書が不動の存在となっている。

 「バカの壁」では、y=axという公式もとに、わかろうしない人に、いくら話してもムダ。
 「国家の品格」では、文明社会を恐れるな。日本には、誇れる文化がたくさんある。

出典の要約
バカの壁(2003)、国家の品格(2005)

 実際は上記を伝聞している新書な訳だ。これならば、日常生活が話題で学問的概念を必要としない。エッセイのように、あるいは長い論説のように多くの読者に受けられた。

 これはだけは伝えたい。20世紀前後で、新書の役割は変わったと思う。しかし、新書を伝聞ツールとして確立した新潮社は、新書の在り方を大きく変えたと感謝する。

かわせみ💎

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