記事一覧
しり【会社哀愁歌_スピンオフVer.】
朝の通勤ラッシュの混雑は幾分抑えられているようだが、それでも混んでいる。
心を無にして窮屈に耐え、オフィス街の駅を過ぎたあたりで車内の密度もゆるくなる。
やっとこさ座れて息をつくと、私の隣に座る小さなおばあちゃんがゴソゴソとポケットの中を探り出した。
一生懸命ポッケを探るその膝が私を容赦なくどつく。
「へいしり」
おばあちゃんが突然ポッケから探り当てたスマホに向かって呼びかけた。
「へいし
Timing【会社哀愁歌_亜子Ver.】|短編小説
いい加減にしろ!このクソオヤジがぁぁぁぁ!!
亜子はデスクの上によじ登り、走り幅跳びの要領で高林部長のデスクに飛んだ。
部長の胸ぐらを掴み5往復ビンタをかます。それでも気が済まないのでグワァングワァンと部長の首が吹っ飛ぶほど揺さぶった。
と、いう妄想をしてなんとか怒りを抑える。
金沢亜子(26)の仕事内容は特殊で、1日に数回程度のメール配信業務がある。それ以外でメールを送るということはほぼし
坂の上のポニョ【会社哀愁歌_スピンオフVer.】
長くゆるい坂をのぼったところに私達の会社はある。
出勤時間帯にその坂でジョギングをしている中年男性がいる。
お世辞にも良い体をしているとは言えない体型に、ピッターーーンッと皮膚と一体化しているようなトレーニングウェアをまとい毎朝走っている。
走っていると言っていいのだろうか?
おじさんのそれは歩く速度よりも遅い。とにかく遅い。スロージョギングというランニング方法があるらしいが、多分違う。きっ
何も起こらない日【会社哀愁歌_高林部長with芳一Ver.】|短編小説
高林部長は、始業時間の3時間前に会社に着いた。
流石にまだ誰も来ていないと思ったが、芳一君がすでに出社している。
午前中は何事もなく過ぎた。
午後も何事もなく過ぎた。
終業時間になった。ちらほら皆帰り始める。
今日一日、何事もなく過ぎた。
いや、まだわからない。
まだ残業している者もいる。
‥‥‥
‥‥‥
みんな帰ってしまった。
半分消灯された室内を見渡すと、芳一君が大きなカ
マドンナ【会社哀愁歌_清野Ver.】|短編小説
清野晴妃(30)は、男ウケする容姿をしている。
控えめにヘアカラーしたサラサラのセミロングヘアに小動物のような愛らしい顔。
152㎝と小柄ゆえに男性と並ぶと自然と上目遣いになる。
晴妃の人生は常に男に囲まれ守られてきた。
頼りなく守ってあげたくなる存在=清野晴妃だ。
女は苦手だ。
これまで何人もの女が、私の取り巻き達に「あの子には裏表がある」と説き伏せようと必死になった。
女達が必死になれ
ねえさん【会社哀愁歌_舞香Ver.】|短編小説
私には、アブラが乗っている。
高木舞香(36)は毎日分刻みのスケジュールを朝飯前にこなしていた。
仕事が楽しい。若い頃は辛いと思うことの方が多かったが、この歳になってようやく仕事が楽しいと思えるようになった。
自分のアイディアが形になる喜びを知り、一生懸命歯を食いしばって頑張ってきた事が無駄じゃなかったと実感している。
頼られることも多くなり、周りからは「ねえさん」と呼ばれるようになっていた。
意地悪な人【会社哀愁歌_七海Ver.】|短編小説
繁田さんは、いつもムスッと不機嫌な顔をしている。
岡崎七海(24)は繁田さんが苦手だ。意地悪な人だと思っている。
七海が「お疲れ様です」と挨拶をしても返してくれない。
挨拶を返さないどころか、七海の粗探しをするかのように上から下までジロリと見て不機嫌そうに顔を逸らす。
システムトラブルが起こった。
七海は、何とか自分で解決できないかと争闘したがダメだった。信頼できる同僚にもみてもらったがやっぱ
女子社員の質疑【会社哀愁歌_高林部長①Ver.】|短編小説
高林部長、お時間を割いていただき申し訳ございません。
最近の社内で、ある問題が起こっていることにお気付きでしょうか?
私は、この会社にとって非常に重大な問題だと捉えております。
早速ですが、こちらの表をご覧ください。
まず①の表は、男性の女性に対するランク付けです。
Aランク:ドストライク。めっちゃ好き。
Bランク:好みというわけではないが、守備範囲。
Cランク:友達として好き。でも何かの
メインキャスト 【会社哀愁歌_芳一Ver.】|短編小説
本日、3セクション合同web会議が行われる。
宮本芳一(31)は、カタカナ・ビジネス用語を書いたメモを片手にパソコンの前にスタンバイした。
もちろん入念に髪はセットしてある。
あえて長めの前髪が目にかかるようにして、気怠げな無造作ヘアに仕上げた。
家感を出して、普段と違う俺のギャップを見せるのが狙いだ。
「よし、雰囲気ある雰囲気ある」
芳一は、手鏡をパソコンの横に置いた。
これで会議中いつで
ヘデラで花束を #創作大賞2022
7日(水)
時刻9:05
チュイチュイ
チュイチュイ
雀の声が聞こえる。
「おはようございます〜」
「今日の特売がね、、」
遠くの方で管理人さんの声が聞こえる。
ガッシャーン!!!
上の部屋で何かが落ちて派手に割れる音が、下の部屋まで響いた。
「なっ、なに??」
ぼんやりしていた意識が目覚める。
枕元の時計は、9時8分を指していた。
「うそっ!!!こんな時間!」
身支度もそこそこに