決められた居場所なんてない。

ビクビクしながら立ったあの場所。でもそのビクビクは、私の苦手なあのビクビクとは、ちょっと違うビクビクでした。

授業を受けているだけでも、何も起こらないか心配でビクビクしている。言葉に表せない緊張のようなもので覆われながら生活している。前髪を伸ばし、マスクをし、眼鏡をかけ、表情が分からないようにする。こんなこと、いつからするようになったのだろう。分からないけれど、気づいたら、これが自分の姿だった...。廊下で誰かとすれ違った。「きっっっも〜!!!」大声で叫ぶ声がきこえる。何もしてないのに。存在してるだけなのに。「死ねばいいのに」「同じ空気吸ってるだけで嫌だ」わざと聞こえるように言ってくる。「陰口言ってないだけ感謝して欲しいよね笑、陰で言ってないし笑」そんなことを言う人達は、私のリュックに飲みかけのコーヒーを倒して入れたり、定期的にものを隠したりする。お陰様で、私のノート、プリント、教科書、私の心...コーヒー色に染まっていった。苦くて、黒い、コーヒーの色に。コーヒーを見つけた時、頭がくらくらした。いつもこうなる。世界が左右に揺れているように感じる。いつも思い出す。幼稚園の時のこと。あの時も、こんな気持ちだった。「手みせて!!」と言われ、手を見せると、「この線ある人は明日死ぬよ」この言葉を、毎日聞かされた。明日になるのが怖くて、寝る前に毎日泣いていた。大切にしてたハンカチ。大切にしてたキーホルダー。もう何年も前のことだから、今更返して欲しいとは思はない。けれど、その時はとても悲しくて、苦しかった。ずっと、忘れない。忘れないんじゃなくて、忘れられない。忘れられたら、どんなに良いだろうか。今でさえとても辛いのに、その時のことを思い出すと、更に、更に、辛くなる。でも、誰にも言えないわけじゃない。今まで、散々いじめられてるように言ったけど、私だけがいじめられてるわけじゃない。周期が回ってくるだけ。いじめられてることに、変わりはないけれど。最近は、もうすぐ来るな〜って分かるくらい。でも、私の前にいじめられた子に、助けを求める訳にもいかない。私も、その子も、どうすればいいか分からないから。反対の立場でも、どうすればいいか分からない。臆病かもしれない。でも、こわい。いじめられてる、仲間はいる。けれど、心は孤独。心の扉には、がっちり鍵をかけた。つもりだった。

いつのことだっただろう。私は、「さくらしめじ」に出逢った。ふと目をやったテレビに、彼は映っていた。彼らは中学生のフォークデュオだった。私と同じくらいの歳で、小さな体に大きなギター。今では、ギターも大きく見えないけれど。彼らの歌声は、優しくて、力強くて、私は彼らの歌が、彼らの音楽が、大好きになった。さくらしめじの音楽は、私の心に刺さった。彼らの歌を聴くだけで、どれだけ救われたのだろう。どれだけ、救われているだろう。

さくらしめじを好きな私でいる時だけは、いつもの私でいたくない。きのこりあんといる時だけは、さくらしめじのライブに行く時だけは、私じゃない、私でいたい。前髪を巻き、マスクをはずし、眼鏡をとり、お化粧をして、かわいい服を着て、なるべくいつもの自分を出さないように、一生懸命笑おうと決めた。でも何故か、一生懸命笑っていなかった。気づいたら、笑っていた。心の底から、笑えていた。幸せだった。さくらしめじを好きな私は、とても幸せな、普通の女の子でいられたきがした。出逢ったきのこりあんは、みんな本当に優しくて、みんな本当に可愛いのに、私のことを可愛いといって抱きしめてくれたり、私とたくさんお話をしてくれたり、写真を撮ってくれたり。本当に嬉しかった。ライブの時に、さくらしめじが言ってくれた言葉は、いつも私をあたたかく包み込んでくれた。ずっとここにいたい。心で唱えた数は、数えきれない。さくらしめじが本当に大好きで、きのこりあんが、みんなみんな、本当に大好きで。

ある時、Twitterである女の子に出逢った。きのこりあんの女の子。彼女は、私より年下だったけれど、とても元気で、とても明るくて、とても優しくて、とても心が広くて、人の気持ちを、たくさん分かってくれる子だった。初めて会った時、初めましてを言う前に私を抱きしめてくれていた彼女は、一緒にいるだけで、本当に安心した。ずっと我慢し続けて、人前で流せなかった涙も、彼女の前では流すことができた。いじめが私の番では無いときにも、辛いことは起こる。誰にもわからないように、少しだけ、そっと、その気持ちをTwitterに呟いた。気楽そうに。気づいて欲しいけど、気づかれないように。彼女から、DMが来た。「どうしたんだい。おはなしなら聞けるよ…………話せないことなら無理になんて言えないけど……」びっくりした。あんなツイートに気づいて、声をかけてくれるなんて。それも、こんな私に。言えないと思った。だから、ごめんね、言えない、と断った。なのに、少し時間が経って、DMを開くと、私は彼女に、辛い気持ちを送っていた。更にびっくりした。心の扉には、がっちり、鍵をかけたつもりでいたのに。彼女は、本当に優しかった。たくさん話を聞いてくれて、沢山話しをしてくれた。私のいじめの周期が来た時は、夜から電話をして、次の日の朝まで、寝ずに電話をしてくれた。こんな私と。感謝は、しても、しても、しきれない。

11月16日。さくらしめじが出る、『#君のことばに救われた』十代限定スペシャルイベントに参加した。このイベントで、こんなことが起きるなんて、想像もしてなかった。想像もできなかった。私の大好きな、さくらしめじの歌をかいてくれる阿部広太郎さんが司会で、さくらしめじと、ラッパーの晋平太さんが、多くのことを教えてくれた。『思いを「ラップ」にしてみよう』というコーナーがあった。私たちは最初に、Bars and Melodyのラップをの動画をみて、聴いた。いじめのことを、ラップにしていた。彼らのラップは、私の今と重なった。頑張って涙をこらえようとしても、こらえられなかった。さっき言った、彼女もこのイベントに参加していて、私の隣に座ってくれていた。彼女は、涙がこらえられない私に気づいて、大丈夫、大丈夫、と声をかけながら、背中をさすって、タオルをかしてくれた。我慢しようとしても、我慢できないたくさんの涙は、ずっと止められなかった。彼女とはまた違う、私の隣に座ってくれていた大好きなきのこりあんも、ティッシュを探してくれた。涙が止まらない私に気づいた晋平太さんも、大丈夫?頑張ろう、と言ってくれた。そして、一人一人ラップをかく時間になった。素直な気持ちを、かいてみた。別に誰も見ないし、今だけ、いつもの私でもいいかな、って思った。最初に、さくらしめじの雅功くんが、ラップを披露してくれた。雅功くんの、理想の大人像。まっすぐに伝わってきて、本当に凄かった。本当にかっこよかった。その後も、色んな気持ちを抱えたみんなが、色んなラップを披露してくれた。私と同じように、いじめられた経験がある、という言葉も、そのラップで聴いた。とても辛いことなのに。本当にかっこよかった。とても辛いことなのに、帰ってきたとき、つらそうな顔をしていなかった。勇気が出てきた、気がした。もしかしたら、ここで、私も前に出てラップを披露したら、なにか、変わるかもしれない。変われるかもしれない。もしかしたら、私と同じようにいじめられている誰かに、勇気を与えられるかもしれない。言えるかな。手をあげてみたけれど、下げてしまった。けど、晋平太さんの声が聞こえた。「時間は限られている」言うなら、今しかない。手をあげた。心臓がバクバクしていた。ビクビクしながらだったけれど、前に出た。周りをしっかり見ることは出来なかった。けれど、みんな、優しい顔で私を見守ってくれているような気がした。晋平太さんの合図と共に、みんなが、3、2、1、Go!と言ってくれた。なのに、言えなかった。涙と不安な気持ちが襲ってきた。もし、嫌な気持ちになる人が居たらどうしよう。このことを知ったら、嫌われてしまうかもしれない。でも、そうじゃないと教えてくれた。みんなも優しく見守ってくれている。もう一度、みんなが掛け声をしてくれた。3、2、1、Go!

どうしたらいじめられないか

しねっていってくるくせに

しぬっていうととめてくる

ふつうのひとになりたくて

がんばってわらっているけれど

いみがあるのかわからない

いみがないかもわからない

誰か、教えて

生きてる意味わからないけど

支えてくれる人もいる

支えてくれる人もいるけれど

生きてる意味もわからない

楽しいこともあるけれど

辛いことの方が多くて

もう、何もわからない

だけど

ふたりにすくわれた

ふたりのうたにすくわれた

ゆうきをくれてありがとう

いつもほんとにありがとう

わたしがラップを言い終ると、みんなが拍手をしてくれた。大好きな雅功くんは、こんなことを言ってくれた。「僕もたまに夜寝ぼけながら、なんで生きているんだろうって考えたりもするんですけど」びっくりした。いつもあんなにキラキラ輝いている雅功くんも、こんなことを考えるなんて。全く違うことは分かっている。けれど、「種類は違うかもしれないけど、意外と考えてることって同じだったりして」そう言ってくれた。「もっと支えになれれば」「これからも頑張って一緒に生きていきましょう」こんな暖かい言葉を、受け止めることが出来て私はとても幸せだと思った。だから、しっかり、ちゃんと、受け止めようと思った。彪我くんは、「嫌な気持ちになるどころか、心があたたかくなった」と言ってくれた。びっくりしたし、安心して、私の心も、あたたかくなった。言い終えても、残ってしまっていた不安が、すっと消えた気がした。晋平太さんは、「僕にももちろんいじめみたいなことしてくる人もいるし、けど、全然知らなかったとこに受け入れてくれる人がいたり、するじゃん」「だからそこだけが全てでは絶対ないからさ」「そんな自分を嫌いなやつのために、自分を傷つけたりするのはもったいないよ。自分を好きでいてくれる人もいっぱいいるからね。」その時の私は、私だった。私のままの私なのに、心から幸せな気持ちで溢れていた。決して、堂々としていた訳では無いかもしれない。震えていたし、ビクビクしてた。でも、からだじゅうが、なにか、しあわせな、あたたかいものでいっぱいになっていた。あったかかった。あたたかい両腕が私を抱きしめてくれた。そして、彪我くんも、ラップを披露してくれた。彪我くんの思う、本当の自分。人に評価された自分が、本当の自分とは限らない。かっこよかった。つきささった。ぐっときた。みんな、本当にかっこよかった。このコーナーが終わったあと、たくさんのきのこりあんが。私の名前を呼んで、抱きしめてくれた。大丈夫だよ、よく頑張ったね、いつでも言ってね。また、涙が止まらなくなった。私のままの私を、受け入れてくれる人が、ここにいる。ひとりじゃない。

明日も、辛いことがあるかもしれない。今日も辛いことがあった。でも、今までの私とは違う。だって、ひとりじゃない。そばにはいなくても、そこにいる。あの時に、私の耳に入ったあの言葉を、何度も思い出した。大丈夫な気がした。今日、とても嬉しいことがあった。苦手なあの子とすれ違った時に、悪口を言われた。なのに、世界が揺れなかった。私はまっすぐ、廊下を歩いていた。びっくりして、泣きそうになった。あの場所にいると、涙は出ないけれど、今、この文を書きながら、泣いている。本当に、感謝している。いつか、前髪を切りたい。いつか、眼鏡も外したい。いつか、マスクも外したい。まだ、先かもしれないけれど、いつか、私のままの私で。

実はあのイベントが終わったあと、TwitterのDMに、たくさんの方が言葉をかけてくれた。私と同じようにいじめられていたり、いじめられたことがあったり、感動した、と言ってくれたり、頑張ったね、いつでも言ってね、と声をかけてくれたり、勇気をもらった、と言ってくれたり。私が貰った勇気が、また、誰かの勇気に繋がっている。とても嬉しかった。

私と同じように、いじめられ、生きる意味が分からなくなってしまった人に伝えたい。あなたはひとりじゃない。そんな事言うけれど、自分は1人だ。そう思うかもしれない。私も、そう思っていた。けれど、違った。さくらしめじに出逢って、さくらしめじを好きになって、きのこりあんに出逢って、阿部さんに出逢って、晋平太さんに出逢って、沢山の人に出逢って、居場所を見つけた。私がさくらしめじに出逢えたのは偶然だった。あなたにも、なにかの偶然で、こんなことが起きるかもしれない。だから、下だけを見ないで、もう少し、色んなものを見てみてほしい。何かをすきになったら、そこから、いろんなものがひろがって、色んなことが起きるかもしれない。そして、あなたを好きになってくれる人ができる。あなたをわかってくれる人ができる。あなたが、心を開ける人ができる。きっと、そう。私のラップをここに書くかも、最後まで悩んだけれど、この文章を見つけてくれた誰かの、勇気に繋がればいいな、と思い、書くことにした。

私は、強くなれた。少しかもしれないけれど、私は変われた。このイベントに参加できて、本当に良かった。さくらしめじの2人に、どうしても言いたいことがあります。私を認めてくれて、支えてくれて、ありがとう。私を認めてくれる、支えてくれるひとたちに出会わせてくれて、本当にありがとう。

さくらしめじは、私の人生を、素敵な方向に、一方歩ませてくれた。まだ10代なのに、人生なんて大げさだし、これからもっと色んなことがあるかもしれないけれど、これからもずっと、感謝し続ける。

ありのままの私に、幸せをくれてありがとう。とっても幸せだけれど、ひとつだけ、わがままを言わせて欲しい。

これからもずっと、私の居場所でいてください。


最後に、こんなに長い文章を、ここまで読んでくれた皆さん、この文章を、見つけてくれた皆さん。本当にありがとうございます。私も誰かの支えになりたい。そう思って書いた、この文章。少しの人でもいいから、届いていたら、嬉しいです。


本当にありがとう。みんなが大好きです。


君のことばに救われた 。





 


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