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明日の朝になったなら #4

4時。

白々と外が明るくなってきた。私は彼の半身に寄り、震えたままでいた。
「ごめん…」
彼が小さく謝った。震える私にかけた布団と一緒に、彼も私を抱きしめていた。
「本当にごめんね…」
何度も「ごめんね」と聞く度に、私は瞼の裏にせり上がってくる涙の滴を抑え切れなくなる。そして指先を細かく震わせながら、彼の気持ちに寄り添っていた。
「…俺は弱いやつだ」
しばらくの沈黙の後に、彼はそう自分に吐き捨てて言った。
「え?」
「俺は弱いや。昔のことをいつまでも引きずってさ。もう何年も前のことを」
それを聞いた時、私は我慢できなくなり、溜め込んでいた涙を流した。視界が曇り、ぽつぽつと床に水滴が滴っている。
「ナッちゃん…?」
彼が私の様子に気が付き、声をかけた。私は震える声から搾り出すように言った。
「弱いなんて言わないで。私は弱いなんて思わないよ…」
「何で?俺は弱いよ」
「うるさい!もう言わないで!」
私はもう、耐えられなかった。大好きな彼が、自分のことよりも優先している彼が、彼自身を責めて傷付けている様が、悲しくて、とても我慢できなかった。
「ごめん…ひどいこと言っちゃった…」
私は自分の言ったことに気が付き、すぐ謝った。彼は俯いて、首を横に振った。
「でも、本当にハルくんは弱くない」
「何でそこまで言えるのさ?」
「ちゃんと向き合ってるから。自分のしてきたことを、ずっと反省してるから。だから、弱いなんて…」
泣いた瞼が腫れ、じんじんと響いている。彼は何も言わないままでいた。
「でも怖いんだ。もしナッちゃんを同じように傷付けてしまったらって思ったら」
「傷付けてたっていいよ」
「え?何で?」
「傷つかないまま生きようなんて思ってないもん。一緒にいるんだもん。そんな日も来ると思ってる。そんなこと言ったら、私だってハルくんを傷付けちゃうかもしれないよ?それでも私は、ハルくんと一緒にいたいと思ってる」
その言葉が、彼の心にストンと落ちたのかもしれない。彼の曇っていた表情は、少し明るさを取り戻し始めていた。

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