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檸檬堂はどうしてここまで売れたのか

 

 最近、「とりあえずビール!」から、「とりあえずレモンサワー!」と耳にする回数も増えてきました。蓋を開けてすぐ飲めるアルコール飲料(RTD)の市場規模は年々拡大しており、その中でも特にレモンサワーの成長は著しく、その販売規模は、2018年1-8月期の約571億円に対し、2019年1-8月期は689億円と前年比120%を記録しています(出典:株式会社インテージ『SRI 全国小売店パネル調査』)。

 そんな、まさに”レモンチューハイ戦国時代”の真っ只中、売り上げを着実に伸ばし、先日生産が追いつかないため出荷休止まで決定したのが、日本コカ・コーラ社の缶チューハイ「檸檬堂」です。檸檬堂は2019年10月に全国で販売して以降、爆発的な人気を博していますが、いったいなぜ後発組にも関わらず、これほどまで市場に浸透したか、考察していきたいと思います。


”意味のある”差別化 〜独自の「前割り製法」〜

 商品の売り上げを伸ばすためには、市場で明確なポジションを築くことが重要です。檸檬堂のような後発組であれば特に、競合商品との差別化を考えていくことになりますが、とにかく他と違えば良いという訳ではありません。消費者にとって、「大して違いがわからない」ような差別化は、マーケティングの観点で言えば、無意味といえます。 

 その点、檸檬堂は、レモンを丸ごとすりおろし、お酒に漬け込む「前割り」という独自の製法によって、居酒屋で出てくるこだわりのクラフトレモンサワーの味を再現しており、この味の独自性が、美味しいレモンチューハイを自宅で飲みたい消費者にとって”意味のある”差別化になっていると考えられます。また、独自の製法で美味しさを追求したことによって、もう一度飲みたいと思うリピーターが増え、口コミやSNSでシェアされやすい商品であったといえます。

パッケージによるブランドイメージの浸透

 いくら味や製法にこだわりがあっても、それを消費者に伝えることができなければ意味がありません。檸檬堂の担当者である和佐高志さんは以前、綾鷹のリブランディングも担当していたそうですが、商品最大の差別化ポイントは、上林春松本店という老舗の茶舗とパートナーシップを組んだことにより再現された、「急須でいれたような味わい・見た目のお茶」というものでした。しかしその差別化が消費者にうまく伝わっていなかったため、「選ばれたのは、『綾鷹』でした」というコピーを作ることで、イメージの浸透を促したそうです。 

 檸檬堂では、特にパッケージによって、このイメージの浸透が達成されています。一般的なレモンチューハイのパッケージは、カラフルでメタリックといったデザインですが、檸檬堂は、職人のような大将がいる、酒屋の前掛けをイメージした紺色のパッケージデザインになっています。これによって、前割りといった製法だけでは伝わりづらい、「居酒屋で出てくるこだわりのクラフトレモンサワー」というブランドのコンセプトをわかりやすく体現できています。さらに競合と差別化されたパッケージによって、商品棚で目立ち、消費者が思わず手にとってしまうような仕様になっているといえます。消費者にあまり馴染みのない前割り製法を前面に出すのではなく、あくまで「居酒屋で出てくるこだわりのクラフトレモンサワー」というイメージを消費者に伝えようとしたのです。

ターゲットを広げる

 檸檬堂は、より飲みやすく、より美味しいレモンチューハイを求める若者や女性にターゲットを絞って販売しているようにも見えますが、実はそうではありません。日本コカ・コーラは、「缶チューハイは強いお酒を楽しみたい人からお酒の気分を楽しみたいという人まで、幅広いニーズが存在している」とし、彼らに合わせてアルコール度数の異なる4タイプをラインアップしています。こうして消費者の様々なニーズに対応することで、トライヤル飲用が増加し、より多くの人にこだわりの味を試してもらうことが可能となります。

 ここで興味深いのは、檸檬堂は、レモンという単一の味だけでSKUを広げているということです。これまでの缶チューハイ市場では、「グレープフルーツ」、「マスカット」など、複数の味を展開するやり方でSKUを拡大していました。もちろんこれも、ターゲットの面をとる重要な役割を果たしていますが、特定の味におけるブランドイメージを構築することは困難だったと考えられます。一方で檸檬堂は、3%のはちみつレモンから9%の鬼レモンまで、あくまでレモンに特化したSKU展開をすることで、「居酒屋で出てくるこだわりのクラフトレモンサワー」というブランドのコンセプトを変えることなくターゲットの裾野を広げ、同じく3%の「ほろよい」や9%の「ストロングゼロ」にまで対抗できるブランドを作ることに成功したのです。

 また、同じレモンチューハイでも、自分の好みに合わせて味を選べるので、「俺は塩レモン派」「私は甘めのはちみつレモン派」というように、お気に入りを探せるという点も、口コミやSNSでの話題性に繋がっているといえます。

最後に 〜ブランドの一貫性〜

 檸檬堂がこれだけ売れるようになった背景は、2018年5月に九州で限定販売までさかのぼります。時間をかけてブランドを育成し、翌年10月に全国に広がりました。檸檬堂はコカ・コーラ初のアルコール飲料であるため、マーケティング担当者だけでなく、小売や量販店の棚を取る営業担当者も、相当苦労されたのではないかと思います。

 目を見張るべきは、これらの取り組み全てが、一貫したブランドイメージにそって行われていることです。上記で述べたパッケージやSKUの拡大なども、全て「居酒屋で出てくるこだわりのレモンサワー」というブランドのコンセプトに基づいて行われています。数多あるレモンチューハイの中で、檸檬堂が一際輝きを放ったのは、自分たちのブランドの存在意義はなにか、どういう人たちのためにあるのか、何をコミットできるのか、それが実現できる十分な根拠はあるのか、などを突き詰めて考え、そうしたブランドの哲学を徹底して実現したからだと考えます。

 ブランドづくりでは、常に同じベクトルを持つこと、一貫して同じことを発信することが大切なのですね。

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マーケティング初学者として日々の学びを更新していきます、サポートしていただけると幸いです。

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大阪大学。大学では社会学を中心に学び、休学してカナダのトロントへ留学。現在はインターン先でマーケティングを学んでいます。noteはマーケティング初学者用の備忘録。
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