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日本酒は「食材」だ! 熱燗マスター・マサさんの熱燗ライブ空間「燗酒Bar Gats」がすごい!

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…なにしてんのそれ?

思わず撮ってしまいました。濁り酒に、なにらやミルク的なものをいれて、別のお酒も入れて、温めて、濾す…。
これ、「熱燗」をつけているのです。

いただいたのがこちら。

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白濁した、ココナッツのような甘い香りのする液体(日本酒)。
これをバニラアイスと一緒にいただくと…口の中で「チーズケーキ」になります。

嘘のようだけど、本当。チーズケーキじゃない、お酒。でもチーズケーキ的な風味とおいしさ、でも、ちゃんと日本酒。

「燗酒bar Gats」
https://ja-jp.facebook.com/gats.theshocking/

僕が今、一番共有したい、わけのわからないお店を紹介します。

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井の頭線神泉駅徒歩1分。最近、日本酒好きの間で「熱燗がすごい!」と話題になっているのがこの「Gats」。カウンターのみ、予約必須の人気店です。

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写真の中央上が店長のマサさん。バンド活動もされています。

このマサさん、御燗番のなかでも異端中の異端な存在。
御燗はすべて我流。その技術が認められ福島の人気酒蔵「仁井田本家」の公式御燗番に認定されているそうです。
(仁井田本家の人と知り合った時、「俺のほうが上手くつけられる!」とやってみせたところ、蔵元も驚くおいしさだったとか!)

噂を聞いて「熱燗がすごい店」と思って訪れた結果、すべて予想よりはるか上(斜め)に振り切った、わけのわからないお店でした。あまりに意味がわからないため感想が浮わついていますが、とにかくレポートします。

日本酒は「食材だ!」 

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自慢のラインナップ。
「熱燗にできる酒は、おいしくないとできない。だから僕はもう、熱燗しか飲んでいない。冷酒なんてずっと前の話」とマサさん、しょっぱなからパンチの強いメッセージをどんどん繰り出してきます。こういうお店、たまらない。

「日本酒とは、『食材』なんですよ。加熱を急ぎすぎたら焦げてしまうし、足りないと生焼けになる。お酒に合わせて調理してあげないといけない」

…??
おっしゃっていることはなんとなくわかる。
…何を言ってるんだろう?

論より証拠。まずは名刺がわりの「にいだしぜんしゅ」(仁井田本家)の純米吟醸。

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御燗につけるちろちは…なんと「ビーカー」!

「うちは銅と錫、そしてビーカーの3つを使っています。このお酒は繊細だから、金属の影響を受けないビーカーがいい」

御燗をつけるときは「燗どうこ」につきっきりで、温度計をにらめっこ。お酒を常に攪拌しています。「純米吟醸クラスは本当に手がかかる…大変」といいながら、カシャカシャカシャカシャずーーっと混ぜます。

しばらく温めるといったんちろりを取り出し、いったん放置。温度を下げて、また温めます。「煮物だとおもってください。温度を下げるときに味がしみこむから」

ひとくちのんでみると…あぁ、、、、おいしい。すごいおいしい。初めて飲むのに、口にぴったり馴染む。お酒と口の間に「壁」がまったくなく、するする染み込んでいきます。

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「料理をひと口食べ、噛みながら飲んでください」

といわれたので、おつまみとひとくち。…なんだこれ! お酒が料理の味を増幅させる!ただ「合う」のではなく、料理を「噛みながら」飲むほうがおいしい! なんで…?

「つまり、お酒は炊きたてのごはんなんですよ」とマサさん。

たしかに、ごはんだ。どの(えび、たまごやき、きのこ)料理と合わせてもぴったり合うのがすごい。

…一応ライティングに携わってきた身として「具体的に」「わかりやすく」とさんざん学んできたのですが、Gatsは無理です。意味がわからないけど、ただただ美味しい。頭より先に口が「うまい」と勝手に喜んでしまいます。

熱燗+生姜醤油=生姜ごはん!!

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続いての熱燗は「竹雀」。おつまみは「鳥刺し」。

「まずは醤油に生姜をといて、それをひとくち含んで飲んでみて」とのこと。やってみると…うん、ダメなやつです。生姜のピリッとしたしげきと醤油のまろやかな味が、ごはん(酒)でぶわっともちあがる。さらにここに「鳥刺し」があわせると、噛むごと繊維の間にどんどん熱燗が染み込み、どんどんどんどん味が広がる。

「おいしい鳥刺しと、生姜の炊き込みご飯を食べていると思ってください」とマサさん。頭は全然追いついていないけどただただおいしくて楽しい。

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ちなみに、「Gats」のお酒に「ぬる燗」はなく、どれもとっくりを持つのが熱いほどの「熱燗」で提供されます。
「ぬる燗? そんなんおいしいと思ったことある?」とマサさん。「生煮えのごはんと同じ! はじめからぬるいものを作ってどうするんだ!」とのこと。
「とっくりのほかほかごはんが時間とともに冷えていく。おいしい冷やご飯ってそういうこと」。飲んでいるともう完全に心もっていかれているので、「とにかくおいしい!うまい!熱燗最高!」となります。

いまさらですが、「日本酒はこうだ」なんて、別にお手本があるわけじゃないんですよね。

…なにかの粉、まぜた?

次のお酒は…と、目の前でおかんをつけていたマスター、なにやら粉いれたり、汁ブレンドしたり…。

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「のんでのお楽しみ」
今度は本格的に「調理」しています。

「にいだしぜんしゅ 原酒」を…なんとだし割しました!おつまみは煮物。
「これは2つで完成する一品です」とのこと。

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しみる! 口の奥だけじゃなく、横にも上にも下にも、ぐいぐいきます!
料理の煮物の方がやさしく、お酒の方が味が強い。二段階の濃さの違いでぐっとメリハリが付きます。

これ、永遠に飲めます

(ここらへんから文が怪しくなってきます。熱燗トランスです)

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揚げ物とそれにあわせる熱燗。
特に酸味があるお酒だったそうで、銅で温めて、錫に移動して、そこにちょっと冷ましたお酒を追加とか、とにかくいろいろやっています。そしてラストにエルダーフラワーを追加!

飲んでみると…まじでホットレモン!!アクエリレモン!すっぱいけどトゲがない。

「よく、酒蔵に見学いくけれど、みんな「見る」だけで満足しているでしょう? それじゃだめなんだ。農家さんに会いにいくシェフの目線で、ここで作られている食材(酒)を『どう調理するか』を見極めにいっているんですよ」(マサさん)

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レアのカモ肉には2種の熱燗をあわせます。スッと美しい酒質を、優しく膨らみのあるタイプを。これがもう、どっちも幸せです。マリアージュってなにか「ひとつ」が正解じゃないんだと気付かされます。

そして一番驚いたのが、冒頭で紹介したこちら。

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にごり酒にココナッツミルク、お酒、それをあたため、漉す。
…熱燗ってなんだろう、と思わずにはいられません。

お酒は自由に楽しむもの、、とはいいますが、ここまで謎の調理をされるとは予想すらしていなかった。そしてわけがわからないほどおいしい。

その日は結局6合くらいいただいたにもかかわらず、悪酔いはなし。
「帰ってビール飲まなければ大丈夫」というマサさんのアドバイスを守ったところ、不思議と二日酔いになりませんでした。

一体なんだったろう、この体験は…。
踏み入れたら日本酒のイメージが変わってしまう、非日常すぎて、すてきすぎる、魔境のような空間です。


マサさん、最高でした!

もちろん、お酒を飲みます。